第七話:勢いで道理引っ込む
最近新巻が出たってことで、漫画『シャーマンキング』の続編漫画『シャーマンキングFLOWERS』を読みました。
いやはや、予想以上に面白いですね♪
前作の最終回はどうなったのか覚えていませんが、続編は続編で面白い♪
久し振りに前作を引っ張り出して読み返してみようかな、と思えるくらいに懐かしい楽しさに浸れました。この人の絵も結構好きですし。
あと、この続編のヒロインの名前が元素記号なので『勝手に改蔵』を思い出したのも懐かしさに拍車を掛けてくれました。
そして不壊のピックみたいなお話。
「どうも、レプリード王国の王様たち。
私は貴方達が『北の大地』と呼んでいる場所に余所の世界から引っ越してきたロゼと言います。
これからよろしくお願いします。
そしてこの城を研究対象として色々とさせてもらいます♪」
「はい」
アクスの案内により、レプリード王国のお城の中へとやってきた科学者ロゼ。
それと、ロゼの城内散策を許可するレプリード王国の王様。
彼女はいつも通りの好奇心で城や王様たちを観察する。その好奇心を止められる者など居やしないのだから当然の流れである。
そして王様はロゼの肩書が“科学者”ということ自体に恐れをなしているので従順なのも当然の流れ
「あ、ロゼさ~ん。こっちに王家以外入室禁止の禁書や呪いのアイテムがしまってある部屋がありますよー」
「よし、アクス。その部屋に案内しなさい」
まるで自分の家のように気軽に城の案内をするアクス。
それもさもありなん。レプリード王国は、テレビゲームなどでよくある「一般人の城内散策」が自由な国だからだ。壺やタンスを調べたりも可能。
これはロゼだから許されるのではなく、誰でも入れる。
この辺が国民達から「王国」と思われないゆえんなのだが、王様たちは気づいていないのでそっとしてあげよう。
王城の面白そうなものを戴いていくロゼの行為は、この国の王城の在り方というルールの網をくぐり抜けられたからこその天才的作戦なのだから。
禁書や呪われたアイテムというのも、鍵開けスキルがあるなら幾らでも取り放題である。
長い人生では解錠スキルくらい極めているものだ。
さて、これでロゼに従うかと思われていたレプリード王国の面々だが、全員が黙って従うわけではなさそうだ。
「待てい! 客人と言えど、場内を荒らす者には容赦せんぞ!」
例外は何時でもある。王様が認めようと王家の威厳だの何だのを未だに守ろうとしている頭の固い人はいるもので、
騎士アクスより弱いが王様直属の近衛兵、“暁”のアージュワンが勝負を仕掛けてきた。
「ロゼさん。この近衛兵は“暁”のアージュワンと言って、俺よりも弱いけど、なんか近衛騎士をしている良く分からない男だZE」
「そう、何処にでもいるのね。実力に見合わない地位に居座る輩って」
アクスの評価:「王家の何やかやを守りたいなら反乱起こせばいいのにバカな奴」と考えている。
ロゼの評価:「“暁”だなんて言われて、何か由来でもあるのかしら?」と、好奇心をそれなりに刺激された。
二人の総評:どうでもいい雑魚。つまりはそういうことだ。
アージュワンは決して自分が一番偉くなりたいわけではない。だが王国の№2はいずれ自分のものだと考えている欲深な男だ。
自分が一番になろうとはしないのは、昔の日本の将軍と天皇の関係のようなものである。№1より№2
それこそがこの“暁”のアージュワンの理想的なあり方なのである。
まぁ、ロゼさえ現れなければアージュワン程度の小物でもこの国の№2になれたのだろうが、それをロゼ本人に直接言ったのは失敗だった。
「むむむ、この“暁”のアージュワンを馬鹿にしているな貴様ら!?
私の剣の錆として付着することを許してやろうぞ!」
「何だか微妙な言い回しを使うのね」
「こいつは俺と違う方向のバカだからな~。
俺は自分がバカだマヌケだと分かった上で、それでも美少女のためなら限界突破をためらわないバカだけど、
アージュワンの奴は自分が天才だと思っているバカなんスYO」
「へ~、自分が天才だと思っているのね」
その時、ロゼの目が懐中電灯めいてキラリと光った!
南無八幡大菩薩! それこそがこのアージュワンという男の命運尽きる瞬間なのであった。
「そりゃー♪」
「ぐわー」
ロゼの取り出したナイフがアージュワンの皮膚を削ぐ。
薄皮一枚とはいえ、かなり広範囲を削いだため出血も多いが、そこは天才科学者であるロゼ。
彼女にとってこの程度の怪我を治すのは、お茶の子さいさいである。
皮膚を削ぐと同時に薬を塗布。この治療方法はまさに、神話における皮剥がされウサギを塩水で洗うくらい神がかった治療である。(要するに痛そう)
「ふ~む……、普通に人間のようね。
“暁”なんて名乗っているから、てっきり火鼠の毛皮みたいに耐火性能があるのかと思っていたのに普通に燃えるだなんてつまらないわ」
試しに火を付けると簡単に焼けるアージュワンの皮膚。
研究者として研究対象を目の前に大人しくするなんてありえないので当然の行為である。
流石はロゼ! 好奇心は猫を殺すと言うが、好奇心を味方につけた猫は実際強い。
どれくらい強いかと言えば、虎を味方につけた狐の百万倍強いと言っても過言ではないだろう。
「あの~……、あまり城内で手荒なことはしないでほしいと思うんだけど~。
アージュワンも近衛騎士としての職務に忠実なだけなんだからさ」
と、ここで空気だった王様の恐る恐ると言った発言。
一応、立場上は客人なので「実験は帰ってから」ということで落ち着き、科学的転移装置でアージュワンの皮膚を研究所へ送るロゼ。
好奇心を完全に制御している彼女は、その好奇心をオンオフすることも可能なのである。
正確には好奇心が別に移った時の行動でもある。
「……ねぇ、アクス。
この王様随分と気弱だけど本当に王様なの?」
「そこは俺も不思議に思うけど、この人が王様で間違いないさ。
代々のこの国の王様って両手のひらに「王」の字の痣が出るからNE」
別にその痣が何処かの封印を解くカギだったりするわけじゃないけど、と付け足すアクス。
しかし、この手の不思議現象を聞いて、科学者としての血を抑えるつもりはないロゼ。
「う~ん、この国はどうにも研究対象が多すぎて好奇心を抑えるのが難しいわね。
アクス、別に王様たちを研究材料にしても構わないでしょ?」
「どうぞどうぞ♪
俺は騎士と言っても、貴族のラガラルさんに仕えている騎士なんで、ぶっちゃけ王様がどうなろうと関係ないんだZE♪」
「決まりね。そう言う訳だから王様。
これより、この国は私の研究対象とさせてもらうわ♪
痛みはないから安心するといいわ」
脅威の大科学タ~イム♪ 好奇心スイッチをオンの状態にしたロゼは、一夜にしてレプリード王国王城を自分の研究材料にしてしまうのでした。
「まずは城を変形ロボにすることから始めないとね。
大丈夫、私の科学力なら全長109メートル重さ2トンの、悪を打ち砕けるロボットにも改造出来るわ♪」
おもちゃを手にした子どもが取る行動は幾つもあるが、ロゼの場合は興味がなくなるまでいじり尽くすことである。
興味を失くす時が来るのが国の崩壊する時でなければ良いのだが、そこはご安心ください。
ロゼは弱者をいたぶる趣味はないので大丈夫でしょう。たぶん。
ご安心ください。
ロゼは自分以外は本当にどうでもいいと思っています。
自分の好奇心を満たすことが一番大事で、
二番目が好奇心を満たす準備をすること。
三番目に次の好奇心の捜索。新しい発見を常に求めるのです。
でも、四番目くらいに身内の幸福を願える可愛らしい女の子です。
なので自分が気に入った仲間は出来る限り大切にしますし、彼女を好いている者たちにしても、見返りが欲しくて好きでいる訳ではないので特に問題は起きていません。
そんな彼女を書く上で、作者の私が一番に考えているのは「まぁ、いっか♪」という空気を作ることです。
この先も彼女は、この話以上に自分本位で暴れていきますが「まぁ、いっか♪」の空気を出せていければと思います。




