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第十七話:科学的に地獄に落とすかも

 連載当初、この作品に「科学者(物理)」ってタグを付けようかと思っていましたが、それだとロゼが物理学者みたいなのでやめたんですよね。


 かといって女子力(物理)とかだと、まるで脳筋みたいですし。


 そう言う訳で、ロゼは普通に天才科学者ってことでいいですよね。


 今回は異世界ファンタジーと言ったら、的なお話。


 

 いつものように優雅な朝を迎えた天才科学美少女ロゼの日常は常と変りなく平穏そのもの。


 その平穏の基準が彼女自身による評価であることに目をつむれば平穏そのもの。平穏以外の何物でもないと言えるだろう。


 ようするに平穏に感じない者もいる訳だ。



「セム、避けないと死ぬわよ」


「ならせめて避けさせてぇぇぇ~……、あべし!」



 この間、敵対科学者の巨大ロボットとのバトルをロマン溢れる技で熱演したセムだが、その日の朝の警備業務に遅刻した罰をまだ受けていなかったのを思い出したロゼ。


 セムにしてみれば忘れてくれていればよかったのだろうが、思い出したからには科学的にロゼは苛めてくる!

 それをやるだけの凄味のある少女こそがロゼなのだから。



「ほら、次は数を倍に増やすわよ」



 さて、先ほどからセムが受けている罰が一体何なのかと言うと、「野球」である。


 ここで「へ~、ロゼちゃんってスポ根作品とか好きなのかな? か~わいぃ~♪」などの温い感想を持つ者はいないだろうが、それでも付け加えておこう。

 そんな生易しいものではない、と。



「そーれそれそれそーれ♪」



 ロゼがセムに向かって投げているもの――それは、氷の塊である。


 それもただの氷じゃない。科学的に鉄よりも固く、光よりも早く、針より細い人参スナックよりも細いものを投擲するのだ!



「さぁ、セム。貴方の次のセリフは『どーせロゼ様は「さよならセム! 貴方の死因は野球中の転倒死よ」って言うんでしょ!?』と言う」


「どーせロゼ様は『さよならセム! 貴方の死因は野球中の転倒死よ』って言うんでしょ!? ……ハッ!」



 迂闊にも天才ロゼの読み通りのセリフを口にしてしまったセムは硬直する!


 極寒の地であることを差し引いても、今この瞬間に足を止めることは死に直結しかねないというのに迂闊極まりない!


 さらに大口を開けたまま固まってしまったのもマズイ!

 相手の隙を見逃すほど科学者として未熟なロゼではなく、彼女の投擲した、針より細い人参スナックに似た氷の塊は、セムの喉にふかぶかと突き刺さったのだ! ぬわー!



「……まぁ、殺す気なんてさらさら無いのだけど」



 一瞬のうちに、これまでの走馬灯が脳裏をよぎったセムだが、ロゼに殺意はない。


 所詮、氷は氷。ロゼの氷で出来た人参スナックは一瞬にして溶けて刺さっていなかったのだ。


 その優しさに感涙にむせび泣くセム。



「ロ、ロゼ様ぁぁぁ~!」


「これは罰だもの。

 殺したりしないし、むしろ貴方のその忠誠心を褒めてあげるわ。

 ばっちばちに痺れるような貴方の丈夫さは、最高の実験材料だもの」



 こんな朝を迎えたロゼだが、彼女の行動に一貫性はない。


 昨日の夕食がカレーだとしても、翌日の朝食に必ずしもカレーを食べるとは限らないほどに自由な行動なのだから。



 ◆ ◆ ◆



 そして最初のセムとの野球が何だったのかと言わんばかりに無理矢理な場面転換が起こる。


 セムへの罰と言う名の野球を済ませたロゼ。

 現在の時刻は太陽も真上に昇ったお昼時。


 会社や学校ではワイワイと同僚やクラスメート達が楽しく食事をしたり、忙しく働いている時間。


 そんな時間に自由業の極みとも言える科学美少女ロゼは何をしているかと言うと……、戦っていた。



「科学パンチ!」



 科学的に拳に炎や電気や冷気を纏わせることのできるロゼのパンチは、自然と相手に最も有効な属性を纏って殴れる。


 そしてロゼの発明品――「パンチに属性付与する君2号」が選んだ属性は冷気。

 奇しくも今朝セムとの氷製人参スナックめいた針での野球の経験が早速活きる!



「グワー!」



 小柄のロゼどころか、巨体を誇るセムですら小人に思える巨大なドラゴンが膝を折る。


 ロゼの狙い澄ました科学パンチは敵の膝の皿を叩き割り、

 今回の敵は、太古の戦神、ソーン・ビーンの残した言葉「膝に矢を受けちゃった」という言葉のまんまな状態に。


 これは敵の素早さを低下させ、全てにおいて科学的に最強のロゼ相手に逃げのびる可能性が皆無になったと言える。



「……もう動けないようね。

 俳句を詠みなさい。解釈してあげる」


「グルル! グルルルル! グールルゥ~!(『敗北を受け入れ 強敵に殺される 楽しかったぞ』字余り)」


「なるほどなるほど……、貴女、私の家来になりたいのね?

 私はドラゴン語は分からないけど、そう解釈したわ」


「グルル?(え? いや違うけど?)」



 解釈すると言ったロゼだが、種族の違う生物との意思疎通科学アイテムを携帯していなかったために雰囲気で解釈した模様。

 そもそも、ロゼが前に居た地球ではドラゴンなんて生息していなかったのだから当然かもしれないが。


 これによって、半ば強引ながら、ロゼの配下にドラゴンというこの世界で最強クラスの猛者が加入することとなったのだった。



 ちなみに今ロゼが現在居る場所はレプリード王国の南の外れにある<キョーテキ・イルアルの遺跡>という古代文明の残したロゼの好奇心を刺激しまくりの建物である。



「……ふぅ~ん、ドラゴンに警備をさせるくらいだから、どれだけ凄いお宝が眠っているのかと思ったのに大したことないわね。

 ただの<不老不死の湿布>に<時を止められるハト時計>、<星を切断出来る果物ナイフ>に<アイスの蓋(少しだけアイス付き)無限製造器>か~。

 古代人の発明って発想は面白いけど、私が真似できない技術は持っていなかったようね」



 それでも遺跡にあった古代の発明品をあるだけ持って帰るロゼ。


 そしてそれらを改良するべく、また自室に籠って研究を重ねることだろう。



「グルル……(俺様、勝手に家来にされたのかな?)」



 オマケでドラゴン付き。

 それが今日のロゼの稼ぎだった。



 

 やっぱり異世界って言えば、ドラゴンですよねぇ~♪


 でも、この作品はバトル作品ではありませんし、その時々のノリで書かれているので、今後このドラゴンが出てくるかは気分次第だったりするのは相変わらず♪

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