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クリスマスのサンタ

作者: 春春秋秋

僕はサンタだよどんなプレゼントでもあげるよ。



僕の両親は体がわるく、僕になんの財産も残さず死んでしまった。

身寄りもない僕が預けられたのは、市が運営する小さな古ぼけた施設だった。

いくつも小さな部屋があり、その施設の4畳ほどの部屋に僕を含めて2人で一緒に生活することになった。


同居人で同い年の明は体格も大きくて力も強く、僕は彼の子分のような存在だった。

明の両親は彼を虐待していたらしい。明と一緒に風呂に入ると、体にほかの部分と微妙に違っている部分がいくつかあった。

明は「縫った後だよ」っていっていた。当時、僕にはその縫ったという意味はわかっても、それがどういう意味なのかわからなかったが、明の何とも言えない表情だけは今も覚えている。


明はよく他の子と喧嘩をしていた。明はこの施設では珍しく両親が生きていた。そのことをほかの子にからかわれていた。

両親がいるのになぜからかわれていたかって?それは多分異質だったのではないだったからではないだろうか。

みんな両親がいないのに、明だけ両親がいる。それを、彼は誇らしげに語っていたし、ほかの皆はそんな明に反感をもっていた。

今にして思えばみな明のことが羨ましかったのかもしれない。

だけど、僕にはどうしても明が羨ましいとは思えなかった。明の両親は両親であって決して両親でないことを幼いながらに理解していたのかもしれない。


同じ施設にかなえという女の子がいた。

かなえは施設では珍しく明と仲が良かった。かなえは、なんでだかわからないけど、女のこの間でいじめられていた。それを明はいつもかばっていた。かなえはいじめられるのはつらそうだけど、かばわれるときはいつも嬉しそうにしていた。

僕は気づいていた。二人が幼いながらもお互いにお互いを思いあっていることを。

それが、僕には無性にくやしかった。そう、僕もかなえのことが好きだった。

あまりに悔しくて、子供心に僕は先にかなえと結婚してしまえばいいんだとおもった。

施設の園長先生に結婚ってどうすればいいのかと聞くと、婚姻届なるものを出して結婚式を挙げるらしい事を聞いた。

僕は勢い余ったのか、子供ゆえの行動力なのか市役所に婚姻届をもらいにいった。

その時の、おじさんの笑いながら婚姻届を渡す顔を今でもわすれない。

もちろん、かなえには渡せなかった。


僕たちは三人で遊ぶことが多かった。

ある日、かなえがいった。「明のお父さんとお母さんに会いに行こう」

明は目を丸くして、「そんなの無理だよ。園長先生がゆるしてくれないよ」といっていた。

でも、かなえは「大丈夫。会いたくないの。会いたいでしょ。いい方法があるよ」と押し切った。

「いい方法って?」僕はかなえに聞いてみた。

「この日、この日に園でパーティがあるの。その日なら一人二人抜け出てもわからないわ」


その日の夜、ジングルベルが流れる園内を僕たち三人は抜け出した。

明の家は近くにあって、電車で三つ目の駅にあったことを明は覚えていた。

明の家の前に立つと僕たちは一生懸命手をチャイムに伸ばした。

出てきたのは、男の人が一人と女の一人だった。僕はそれが明の両親だと思った。


「父さん、その女の人誰?」


電車に乗って施設にかえる途中、かなえは必死に明を慰めていた。

でも、明が言ってはいけない一言を言ってしまったんだ。

「親もいないくせに」

その時のかなえの表情はまるで幽鬼のように青白かった。

しかし、それ以上に見てられなかったのはそのかなえの顔を見た明の顔だった。

言ってはいけない一言だとその時気づいたんだと思う。

いつも喧嘩をしても、踏み込んではならない領域には踏み込まなかった。


僕は二人の様子が見ていられなかった。

だから、僕は咄嗟に行ったんだ。

「僕は実はサンタだよ。どんなプレゼントでもあげるよ。」

ただ、二人に元気を出してほしかった。それだけについた、くだらない子供の嘘。

かなえがぽつりといった。

「家族がほしい……」

それを聞いた時僕はあるものをとりだした。あの日もらった婚姻届だ。

「二人がお互いにお互いを思い合っていればきっと幸せな家族ができるよ」

僕は胸にかすかな痛みを覚えた。




「三太、久しぶりだな」

「結婚おめでとう。明」

あれからちょうど15年目のクリスマス。今日は明とかなえの結婚式だ。

思いつくままにかいてみました。

時期的にいいんじゃないかなとおもいます。

もうそろそろクリスマスですねぇ。

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