プロローグ
2012/12/8 に加筆・修正しました。
真っ暗な空から冷たい雨が地に降り注ぐ。そして、一人の女にも降り注いでいた。
電灯の光に照らされ痛みに苦しむ一人の女が、歩道で仰向けに倒れていた。息遣いが荒い彼女は、腹や頭から出血していて血まみれだった。しかし、まだ意識がある。
猛スピードで彼女から逃げていった一台の自動車は暗闇の中に消えた。彼女は体を微動だに動かさずに、虚ろな目で自動車を追っている。
ひき逃げするなんて、なんて冷酷な運転手なの。
目を正面に戻す。瞬きを繰り返しながら、雨のしずくを目に入らないように繰り返す。道路に付いた赤い色が徐々に広がる。
「なんで……私は…ひかれ……たんだっけ……?」
顔をしかめ、痛みに耐えながらつぶやいた。
ひき逃げ犯の不注意? 私の不注意?
いや、どっちも違う。少なくともそうじゃない。
誰かが彼女のもとに歩み寄った。
彼女は目を細めた。
ぼやけていて、誰なのか分からない。あなたは……誰?
誰かが彼女のそばにしゃがみ、必死に声をかける。しかし、その人の叫び声は彼女には届かなかった。
ねぇ、なんて言ってるの?
彼女はその人の顔を手で触る。ぬれている顔に赤い色がつく。すると、その人の声が止んだ。
彼女のまぶたがゆっくりと閉じ始める。彼女の意識が遠のいていく。
「助けて……。私を……」
彼女はか細くそう言い、ついに目を閉じた。




