フランス語は難しい
5月も半ば、そろそろ苺が消える季節になりました。
「苺狩り、初めてなんですー!」
楽しそうで何よりです。おっさんは今から腰が痛いよ。
時期が終わると畑を潰す。
その前に苺狩りとかどうよ?という取引先の農園からのお誘いだ。
無料だし、苺好きだし、ということで希望者のみ朝早くに集合、苺狩りとなった。
ぷちぷちと苺を摘んでは、ダンボールに入れていく。
三十分もしないうちにいっぱいになった。
調子に乗って二箱。
一人暮らしだというのにどうする気なんだ。
まずはそのまま食べて、残りは冷凍とジャムかな。
近所付き合いもないから、お裾分けという手も使えない。
「主任、一緒にお菓子作りましょう!!」
「えー……」
何それ面倒臭い。
「だってせっかくこんなに苺があるんですよ?」
「そのまま食べればいいと思う」
もしくは練乳で。
「そんなの面白くないじゃないですか」
知らんがな。
「あ」
そういえば結構前に買ったパイシートがあるんだった。
何となく買ってしまい、結局使っていない代物だ。
「よし、このパイシートをあげるからね、おうちで大人しく焼けばいいと思うよ」
「えー! 主任も一緒に作りましょうよ!」
「ええー……」
結局押し切られた。
パイシートはどうやらそのまま焼けば良いようだ。
お好みでツヤ出し卵を、と書かれてある。
「俺はグラニュー糖派なんで」
ぱらぱらとまんべんなく、グラニュー糖をかける。
ピケしてます、そのまま焼いてもいいよ! 伸してもいいよ! と説明書きがあったのでそのまま焼いてみることにした。
メニューは、パイシートを焼き、カスタードと苺を挟めばきっとミルフィーユだ! ということで、ミルフィーユである。
「じゃあ次はカスタードですね! 前に作った時、焦げちゃったんですよねー」
「あー、鍋は面倒だよね、レンジでいいよね」
「レンジ?」
「チン」
要するに卵黄、牛乳、砂糖、薄力粉を混ぜてチンすればいいのだ。
混ぜて漉して、40秒ほどチンして取り出して混ぜて、今度はラップして一分。
また取り出して混ぜてラップして一分。
全卵でも出来るらしいが、何となく卵黄のみにしてしまう。
出来上がったらバターを混ぜ込み、冷やす。
冷えたら解し、固めに起てた生クリームを三割ほど入れて完成。
「簡単ですねー!」
「焦げないしね」
というか、普通の鍋でカスタード炊いたことないわ。
電子レンジでいいじゃないか。
「あ」
「どうしましたー?」
「パイシートって結構分厚いんだね」
ミルフィーユってもっと薄いイメージが。
取り出したパイは1cm以上の厚み。
「……お、美味しければいいんですよ!」
厚いままのパイを重ね、三層のミルフィーユの出来上がり。
「バランス悪ッ!」
「っていうかパイ、スライスすれば良かったですねー」
「!?」
本当だよ! 気付かなかったし!
「……過ぎたことはしょうがない。食べようか」
珈琲を淹れて、実食。
菅原さん、彼氏用はパイシート伸してから焼いてください……。
「俺ミルフィーユ好きなんだよねー」
「……そういえば、ミルフィーユって本当の発音、ミルフイユらしいですね。ミルフィーユって発音にすると千人の幼女になるらしいですよ」
「ブバフ!」
フイタ。
パイシート焼成中にミルフィーユの意味についてのツイートがあり、タイミング良すぎてふいた。