第弐話 転校生の昔話
私はこの世界は苦手だ。他人も好きではない。
七歳の頃から周りは、会ったときに同じ表情をしていた
怒り 恐れ 憎み 妬み 尊敬 同情 そして皆、私の前で頭を下げた。
「これはこれは、天子様、ご機嫌いかがですか」
いつもの愛想笑いが見える、きっと私は無表情で言葉を返しているのだろう
「変わりありません」
相手は顔色を変えて去っていった。私がいることは、こいつらにとって恐怖そのものなのだ
そんなのはいつものことで慣れていた
いつも、まじめに接してくれるのは 母 父 そして椿だけだ。
椿は烏水家、烏天狗の家の次期当主候補で忙しい両親の代わりに遊び相手になってくれている。
四つ上の兄的な存在だ。
そんなの続いたのは10歳まで
月が綺麗な夜、幸せがすべて人間達によって壊された。
血の海となった家を視た後、私が何をしてどうしたのかは思い出せない。
とにかく3年間死にものぐるいで生き抜いた
13歳になってから私は家にたどり着いた。そこには白兎一人が、屋敷を綺麗に保っているために、存在していた。というか他の家の使用人は全てあの夜に殺されている。
それから私が普通の人間に戻るまで、もとい、普通の天童家当主になるために使った時間は、8ヶ月だ。そのうち3ヶ月はなにもしなかった。・・・いや、できなかった。倒れたまま3ヶ月間、目を覚まさなかったそうだ。
今、6月中旬、野桐中学に入学することにした。稼ぎは二人分だと少ないので流石に家庭教師を雇うのは少々きつかったのだ。
で、天童家と天理家が建てたこの中学なら融通が利くという腐った理由でここに来た。
しかも、ここなら問題が起きても一般人に知れることなく問題が解決できるしな。
『他人と一緒にいるのは気が引けるがまぁ、仕方がない。それ位なら我慢ができる。』
そして、ホームルームとやらに、紹介するらしく、教室の前に待たされた。
『2年3組か』
全部で5クラスあるらしいが、ここのクラスは能力者が多いと話は聞いている。
いきなり、3組がざわめきだした。
『もういいのだろうか』
私は躊躇することなくドアを開けた
別にワクワクもしない。見渡していると、天兎族らしい奴らが驚いている。
無理もないか、私は10歳の時に殺されていることになっている。
「天兎族の、天童 美希と申します、以後お見知りおきを」
私は白兎に習ったとおりに告げた。口元と眉だけで笑みをつくって普通に。
驚いたのは窓側の一番後ろの席に、訳のわからない“気”が満ちている奴がいた。
髪は黒く、瞳は赤く、どちらかというと顔立ちは整っている方だろう、私を見て周りとは全く違う反応をしている様に見えた。
『あいつ、たぶん知り合いだったのかもしれない』
私、天童美希の記憶は10歳になる前から昔はほとんど覚えていない。