第拾漆話 日常と変化
空には大きな入道雲が浮かび、蝉の声がジリジリと暑さを補助し、太陽が青々とした木々の下にオアシスを作りだしていた。
昨日のことが嘘の様に、巫女達がいつも通りに俺を見送る。
「・・・梅雨もあけたなぁ」
季節は夏にさしかかる今日この頃、一週間後に控えた実技テストについてどうしようかと考えながら歩いていると、大きな古めかしい門の小さな扉から、これまた身長の低い女子が出てきた。
「おはよう、今日の天気は快晴ですね」
そしていきなり話しかけてきた・・・。
「そうかもしれないな」
「ところで、話は聞いていますか」
なんか、自然と一緒に登校してるのが不自然すぎる。昨日までほとんど口も聞かずに無視してきたくせに、何考えてやがる。
総真は警戒心を持ちながら美希との話を続けた。
「話って何だ?聞いてないぞ?」
「ッチ、あの平和ボケが今度あったらどうしてくれようか!」
一瞬彼女が鬼のような形相になった気がするが気のせいということにしておこう。
「とにかく、これから一週間お前に特訓を仕込んでやる」
「はいぃぃぃ!?」
「テストが近いからなぁ、頼まれたんだよ」
「誰にっ・・・・・・親父か?」
意味深な笑みを浮かべる所からして、アタリだろう。
「理解できた?じゃあ、第1段階として、お前は私の組織に入ってもらう」
「ついてけねーよ、んで組織って何だ?」
「能力自警団“天組”」
胸を張って言う美希についていけず、呆れた顔になっている総真はため息をつきながら言った。
「・・・暴力団の間違いでは?」
今一番、裏社会で名をはせている集団、それが天組だ。巫女達の話にも良く出てくる。
「失礼ね、一応国が認める第二級警察組織って事になってるんだから」
「警察?んなわけ---」
「---あるんだなーコレが、ちゃんと国から給料が出る」
「世の中の税金をもっと他の所に使えよ」
「一理あるわね」
頭を抱えて悩む総真をよそに納得している美希は学校より生き生きとしていた。
「と、言うわけで放課後天童家に集合だから」
「はいはい、分かりましたよ」
よし、とご満悦になり急いで先を歩いていく彼女から鈴の音が聞こえる。ああそう言えばあの髪飾り前まで無かったような気がする---
総真はどこか遠くへ彼女が行ってしまうような錯覚にとらわれた
学校に着くといつものメンバー篠原 悠斗と勝呂 啓太が待ちわびていたように俺に寄ってくる
篠「おはよう、総真くん」
勝「よう!・・・って言うかお前浮かない顔してるぞ」
総「はい?」
「そうだね、元気ないみたい」「さては・・・・」
ニヤリとする勝呂を見て総真はろくな事ではないと予見し、話を切り上げる。
こんな日常、昨日の放課後には考えていなかった。
警戒態勢な巫女達。家に美希が入ってから周りが慌ただしくなっていたからか、疲れているのだろう、浮かない顔はたぶんそのせいだ。
美希の席を見ると彼女の姿がない・・・
総「おかしいな、先を歩いていったはずなのに」
篠「へー、美希さんと道同じなんだ」
総「あぁ、近所っちゃ近所だ」
勝「お前の近所は基本200m離れた近所だからな」
総「それは、俺の台詞では?」
勝「わりぃ、でも巫女さんと暮らせるんだろ。うらやましーぜ」
脇腹に肘を当ててくる勝呂、
(このノリだと家に来るとか言い出しそうだな)
総「奴らは性格きついぞ・・・特に、愛想がない」
ちょうどそのころ、京華はいきなりくしゃみをしていた。「あれっ?風邪?」