第拾壱話 SランクとCランク
美希が転校してきて丁度1ヶ月がすぎようとしていた頃だった。
ジメジメした梅雨が終わりそうなとき、つまり6月末だ。
この学校には普通のテストだけではなく能力のテストがある。それは“筆記・実技・検査”に別れていて、この間のは検査にあたる。
で、次が実技なわけなんだが・・・・。
面倒なんだなコレが。まあ、トーナメント式に対戦していくんだがこれが体育大会のお遊戯みたいな感覚ではなく、戦争さながらのマジな喧嘩とほぼ同等だから怪我人が出るのが当たり前・・・・。
親は文句言わないかというと、能力者の家系は各家庭で誇りを持っていらっしゃるので、承諾している。もちろん、実技と検査は能力者だけのイベントであって、一般生徒は筆記だけとなる。これが最低でも4試合は受けないと順位が決定しないから困る。しかし、俺の場合は天理家の恥さらしをしないようにしなければ平凡な生活が約束されないため、これだけは死にものぐるいで戦うのだ。
*第1体育館 儀式室*
その、くじ引きを今行っている所だ。ランク別、学年混合で行われるので実力勝負だ。
『C-17』我ながらどーでも良さそうな数字をひいたものだ。
「君は、C-17みたいだね。僕はB-32だったよ」
と小さな紙切れを見せるこいつは篠原 悠斗ランクはBで背は少し低め、いつも笑顔を絶やさず、クラスでは目立たないが良い奴として知られている。
まあ、俺の友達でもある。
「おっ、俺はB-25だ。天理、残念だったな」
「なにがだ?勝呂」
この大柄な奴は 勝呂 啓太だ。篠原と同じようにこいつも友達である。ランクはBだが名のある武闘家の跡取りで強いのに平和主義で頼れる奴だ。クラスでも力仕事を担当している。・・・・しかし、まれに自信過剰?が出てくるのが傷だな。
「お前、クール&ビューティー転校生『天童 美希』。狙ってたろ初めから」
「何でそうなるんだよ」「顔に書いてあるぜ。だが、あきらめろ、俺の華麗な能力対戦ぶりに彼女は俺に惚れるわけ」
「あっそ、あいつは勝呂のこと気にもとめてねーと思うぞ」
篠「余裕だね天理くん」「お前まで、っんなこといって・・・・。」
勝「そんな件の姫君はSランクだもんな、Aランクに混ざるらしいが実力はいかほどかな」篠「まあSだから相当能力値は高いだろうね、それと拳銃はプロ並みだったし」
勝「あぁ、早く姫君の翼の生えた姿を見てみたい」
理「美希は本気は出さないと思うぞ」
「なんでなの?、天理くん」「ん?そんな気がするんだ、たぶんあいつには必要がない」
勝「ふーん・・・・それはともかく、さっきから天童さんのことをあいつだの美希だの、親しげに呼ぶではありませんか。天理 総真くん?」
勝呂は笑顔のまま指を鳴らし始めた。悪寒がはしったそのとき辺りが一気にざわめいた。三人ともみんなの視線をたどっていくと・・・。
『天童 美希 A-7』
ステージ後ろにあったモニターに表示されたその名前は美希だった。
もう、注目の的となっていたあいつはA-7になったらしい。対戦は見学できるのでみんな把握しておきたかったんだろ。
ステージから降りていく美希は無表情だった。彼女の足音は周りの雑音にかき消され、みんな注目しているのに周りに同化しているそんな気がした。
*放課後*
げた箱に向かうと美希にばったり会った。
「もう帰るのか?お前、部活は?」
しかし、美希は人形の様に眉ひとつ動かさず、げた箱から靴を取り出して完璧に無視して帰ろうとした。まるで、聞こえていないかのように。
さすがに、腹が立った。無視とはどーゆー事ですかねぇ?(怒)
「おい、お前」
美希の肩に手をかけ無理矢理引っ張ってみた。すると、全く微動だにしない・・・・。
動きは完璧に止まっているのだが、こっちがいくら力を腕にこめても逆に美希は全身で俺の方に向かないように頑張っていた。
約1分ほど力比べをしていたら、美希が俺の右手をいきなり掴んだ。
「なに?」冷たい声が響いた
一瞬にして右手をとられたまま、後方に回られた。右腕がひねられてギシギシ言いそうなくらい力を入れられている。っ痛いんですけど(涙)
「お前は、人が声をかけているのに無視をする薄情な奴なのか?」
「おまえって誰?まさか私の事言っているの?」 「ああそうだ」
「私は、天童 美希よ。“天理”なのに私のことが分からないの?」
美希が手の力をより強めながら、とても小さい声でいった。
「貴様はクロノスのくせにウラノスのことも分からないのか?」