アヒルの王子の婚約事情
──私が婚約者として充てがわれたのは一羽のアヒルだった。
つぶらな黒い瞳。純白の羽根にツヤっとした黄色の嘴。なんとなくもっちりして見えるボディには、ぴょこんとほんの少しだけ上向きにカールした可愛い尾羽、というか尻尾がついている。
どこからどう見ても立派なアヒルが、私の隣の席で項垂れていた。
『という訳でぇ! 私は王子様の呪いを解く方法を探しに旅に出ます! お姉様は婚約者としてアヒ……王子様のお世話お願いねっ』
語尾にハートマークが乱舞してそうなきゅるんと甘ったるい声でそう言い残し、護衛の男と本当に家を出て行ったのは腹違いの妹である。
本来ならこの国の王子殿下の婚約者には私ではなく妹がなるはずだった。
婚約者候補に選ばれたと聞いた時には本人も随分と乗り気だったはずだが、相手がアヒルになった途端にこのザマである。
──あいつ、逃げたな。
しかも妹が言うところの護衛とかいうあの男、何度か妹の部屋から出て来るのを見たことがある。
十中八九、妹の恋人だ。
あの妹のことだから本当に呪いを解く方法を探しに行くなんてことはありえない。男連れならなおのこと。多分もう二度と戻らないと思う。その証拠に、妹の肩にかけられた鞄から貴金属が覗いていた。
悲しいかな、妹はその辺の倫理観が本当に薄かった。
綺麗系の母とは異なり、可愛い系を極めたような容姿に加えて頭の回転も早く、名だたる家庭教師たちから令嬢としての教育を受けた妹の評判は社交界でも高かった。
要領も愛想も良い妹は老若男女を虜にしており、姉の私の目から見ても社交界勝ち組カーストの頂点に君臨していた。
だからこそ、王子殿下の婚約者候補に名前が上がったりもしたのだ。
倫理観だけが何をしても育たなかったのは盲点だったが。
継母と一緒に夜な夜な妹に『よくわかる貴族男女の付き合い方』とか『楽しい道徳』などを読み聞かせても、妹の安眠をサポートする以外の役には立たなかったらしい。
私は隣の席で項垂れるアヒルを眺めながら溜め息を吐いた。
確かに、呪いでアヒルになった王子の婚約者だなんて、もう何をしたら良いのかすらわからないし、社交界で何を言われるのか考えるだに恐ろしい。逃げたくなる気持ちもわかる。
(あいつ、今回はまたなんて厄介なことを……)
だが、その原因が妹にあるとすれば話は別で、私は妹の監督不行届の責任を感じて痛むこめかみを指先で揉み解すことしかできなかった。
昔から妹はなんというか愛情を試すきらいがあった。
どれだけ自分が愛されているのか、相手を試す事で実感したがる厄介我儘娘である。
そして今回その結果がこのアヒルな訳だけど。
まぁ、少しは同情する。王子も言わば妹の被害者だ。可愛い笑顔に騙されて散々な目に遭った被害者は彼が初めてではない。そして私がその尻拭いをするのも、これが初めてではないのだ。
三角関係どころか六角関係が拗れて刃傷沙汰になった時とどちらの処理の方が面倒くさいかな、なんて考えてまた溜め息を吐く。
何か声を掛けておくべきかと視線を動かした先で、項垂れたアヒルの嘴から「くわ……」とひどく物悲しい鳴き声が漏れて、私は瞬時に全神経を総動員させキュッと唇を噛んで笑いを堪えた。
本当に深刻な状態ではあるのだけれど、あまりにも絵面が愉快過ぎた。
なんでも、妹はこの王子殿下に『魔女の秘薬』が欲しいなどと言ったらしい。
魔女の秘薬というのは何種類かあるのだが、妹が欲しがったのは西の森の魔女が得意とする通称・美容万能薬と呼ばれる薬だ。
老いたる者が飲めば肌のシワもシミも一口で消え失せ、肌年齢は乙女の頃まで巻き戻るという。
若い頃から服用すれば老いを知らない永遠の美が手に入るのだとか。
そして妹に丸め込まれた王子は西の森にある魔女の屋敷に忍び込み、その秘薬を盗み出そうとしたところを捕まって魔女からお仕置きとして呪いを受けた。
呪いでアヒルになった王子は魔女によって王城に送られて、その首に結えられた手紙に事の次第が書かれていたのでこのアヒルは王子だとわかったし、王子がアヒルになったのは魔女の呪いが原因だとも知れた。
けれど呪いを解く方法についてはわからず仕舞いだった。
次期王太子と目されていた人物が突然アヒルになってしまったので、当然ながら上へ下への大混乱になった。
王陛下が魔女に謝罪して元に戻してくれるよう頼んだけれど、魔女はそれを受け入れなかったらしい。
その混乱に目をつけた妹(元凶)が、混乱に乗じて呪いを解く方法を探すだのなんだの言って逃げたのである。
そして、残されたのはアヒルと、その尻拭いのためにアヒルの婚約者にされた私という訳。
しかもこの婚約は王家の承認も貴族院の承認もおり、既に正式に結ばれてしまっている。
婚約が決定してから両親は私と目を合わせてくれない。
あまりにわかりやすい待遇に色んな意味で涙が出そうだが、家が取り潰されなかっただけマシだと思おう。継母も度重なる心労でやつれているし、これ以上ダメージを与えたくない。
ちなみにこの場は私と王子殿下の婚約発表の場なのだが、空気は処刑場並みに殺伐としていた。無理もない。
お祝いの言葉を口にして良いのか探り合う貴族たちの視線、同席した令嬢たちの哀れみと嘲笑の混じる視線、そして視線から逃れるように椅子の上で項垂れるアヒル。なるほど、ここが地獄か。
いっそこのアヒル、屠殺してやった方が王族としての名誉を守れるのでは?
一瞬だけそんなことを思ったりしたが、アヒルと言えども王子は王子なので口にするのは何とか耐えた。
とは言え、私もこの場に長居したい訳ではない。
なので私はさっとアヒルを抱き上げて、その場の貴族たちに笑顔を向けた。
「本日はわたくしたちのためにお集まりくださり、心より御礼申し上げます。ですが、王子殿下がお疲れのようなので、申し訳ありませんがこの辺で失礼致します」
そして私はくるりと踵を返し、アヒルを抱えて猛ダッシュでその場から逃げた。
アヒルって思っていたより大きいし重いのね。
とりあえず控え室として用意されていた部屋に飛び込み、抱えていたアヒルを放す。ぐわ、と困惑する声が聞こえたが気にしない。
「まったく、酷い目に遭ったわ」
近くにあった長椅子に倒れ込みながらぶつくさ文句を言うと、アヒルは項垂れたまま、お尻をフリフリしながらぺたぺたと窓の方まで歩き、カーテンの陰にその身を隠した。
もちっとしたアヒル尻がカーテンの裾から見えていたが、本人もとい本アヒル?はしっかり隠れているつもりらしいので私もあえて口には出さなかった。
どうやら彼はアヒルの姿を恥じているらしい。
その様子を目にして、私もそっと睫毛を伏せる。
(そうよね。呪いでアヒルにされて、そのアヒルの姿のまま皆の視線に晒されたのだもの……)
……うん、ものすごく自業自得!
巻き込まれた私のためにも、もう少しちゃんと反省してほしい。
うんうんと頷き、私は備え付けのテーブルに移動し、西の森の魔女に宛てて手紙を認めた。
この国の魔女は不届き者を許さないが、礼を尽くせば応えてくれる。
王子も忍び込んで盗みをはたらくのではなく、頭を下げてお願いすればこんなことにはならなかったのに、理性を溶かす妹の我儘とは怖いものだ。
「えーと、とりあえずお詫びと、呪いを解く方法を……」
書き終えた手紙を三回読み返して失礼がないことを確認し、しっかり「魔女様へ」と封筒に宛名を書いて、自分の髪の毛を一本と金貨を一枚添えて月明かりの落ちる窓際に置く。
しばらくして封筒は添えた髪の毛と金貨ごと月明かりに溶けるように消え、それを見て私はよしと頷いた。
あとは返事を待つだけである。
「とりあえず今夜は屋敷に戻って……、えぇと、王子殿下はどうしよう」
婚約者を城に残して良いものか。私は少しだけ思案した。
側仕えや他の王族や貴族たちはこの王子をどのように扱うのだろう。
いじめたりはしないと思うけれど、とことん馬鹿にはされるだろう。そして王子はその扱いに耐え続けなければならない。
自業自得と言えばそうだ。けれど魔女の屋敷に忍び込んだ王子が悪いとは言え、それを焚き付けたのは私の妹。
私は大きな溜め息を吐くとカーテンに隠れたアヒル尻に声を掛けた。
「王子殿下、帰りますよ」
微かに「くわ」と聞こえた気がした。まるで「どうぞお好きに」とでも言っているようだったが、微動だにしないので私の言葉が通じなかったこともわかった。
「ほら、帰るって言ったでしょう。あなたも行くんですよ」
「ぐわわっ!?」
「暴れない暴れない」
よっこいせ、とアヒルを抱えたところで、ドアの向こうから馬車の用意が出来たと声が聞こえた。
そして私はアヒルと共に馬車に乗り、屋敷に戻ったのである。
両親はやっぱり目を合わせてくれなかったし、出迎えに出た使用人は全員困惑した表情を浮かべていた。
アヒルに客室を用意するべきか迷ったけれど、どうせ世話をするのは私なのだからと私はアヒルを自室へ連れて行き、そっとソファの上に座らせた。
それまでずっとされるがままで大人しかったアヒルは、ぐるりと辺りを見回し、私の部屋だと気が付くとソファから飛び降りて一目散に部屋のドアに向かって駆けていった。
ぐわぐわ騒ぎながらドアをつつくアヒルに言う。
「あー、あの、婚前の男女が同室にいることを気にされているのなら、私たちは婚約者同士ですし」
「ぐわ、ぐわわ! くわーっ!」
「え? そういう問題じゃない? いやでも実際問題、人間とアヒルが同室にいて何が起こるっていうんです?」
「……くわぁ」
「はい、不満そうな顔しない」
面倒だから同じベッドで寝ようとしたが、アヒルが頑として譲らなかったので私は床にクッションを積んで王子エリアを作ってあげた。
王子を床に積んだクッションの上に寝かせる方が不敬な気がするが、彼がベッドを拒むのだから仕方がない。
アヒルになってもこういうところは紳士なのだなぁと私は妙なところで感心しながら着替えを済ませてベッドに入ったのだった。
翌朝。何かがぐわぐわ耳元で鳴く声で目が覚めた。
ゆっくりと目を開くとアヒルが至近距離でこちらを見つめていて喉の奥で悲鳴を上げる。
なんでアヒルが部屋に、と思ったところで「あぁ、なんだ王子か」と昨夜のことを思い出した。
アヒルは私が目覚めたのを確認すると、窓際を示してまたぐわぐわと鳴いた。
促されるように視線を向ければそこには一通の封筒が置いてある。魔女からの返事だ。弾かれるようにベッドから飛び降りて封筒を確認する。
私を追ってペタペタと歩いて来たアヒルをソファに上げ、その隣に自分も座って二人で魔女からの返信を読む。
美しい文字で綴られた魔女の手紙は、丁寧なお手紙をありがとう、という文言から始まり、王子はたっぷり反省するべきと実にもっともなことが書かれ(アヒルはそれを読んでしょんぼりしていた)、最後に呪いを解く方法があった。
いわく、『真実の愛によって魔法は解ける』らしい。
「真実の愛……」
「くわ、くわわ……」
私と王子は少しの間沈黙した。
『真実の愛』とは、何をもって真実の愛と定義するのか私にはちっともわからない。
私は妹のように恋多き女ではなかったし、むしろ初恋すら未だ知らず、愛どころか恋すらわからない恋愛初心者だ。
「……王子殿下、『真実の愛』ってなんだかわかります?」
一縷の望みをかけて王子に問うも、王子も隣で首を傾げている。ダメな気しかしない。私は思わず両手で顔を覆って叫んだ。
「こんなの無理だよ! なんか、なんか他にヒントないの!?」
「あらぁ、ちょっと難しかったかしらぁ?」
「ちょっとどころじゃない! 真実の愛とか抽象的過ぎてわかんな……、え?」
いきなり割って入った声に思わず顔を上げると、向かいで黒髪の美女が優雅にお茶を飲んでいた。
緩くウェーブのかかった艶やかな黒い髪、不思議な光沢を放つドレスに身を包んだ美しい女性に思わず息を呑む。
「……ま、魔女様……?」
「はぁい。呼ばれた気がして来ちゃったぁ」
うふ、と微笑む西の森の魔女を見て隣に座っていたアヒルががっちがちに硬直していたので、膝の上に乗せて宥めるように背中を撫でる。この様子では呪いと共に何らかのトラウマも植え付けられたのかもしれない。
「呼んだ……、えぇと、はい。魔法を解く方法についてヒントが欲しくて……」
「ヒントも何も、真実の愛ってそのまんまでしょう? あぁ、でも、そうよね。アヒルと真実の愛を育めと言われても、ただの異常性癖になっちゃうわよねぇ。貴女は巻き込まれただけみたいだし、ヒント代わりにサービスしてあげる」
「え?」
「このアヒルちゃんの言葉、貴女にだけ通じるように魔法をかけてあげるわね」
「お、思ってたサービスと違う……!」
魔女は私が膝の上に抱えたアヒルに人差し指を向けてくるりと一回宙で円を描くと、仕事は終わったとばかりに「じゃあ、頑張ってねぇ」と煙のように消えてしまった。
「えぇえ、結局真実の愛って何なのよ……」
「ぐー……(全くだな)」
「あれ、王子殿下、今『全くだな』って言った……?」
「くわっ!? ぐあ、くわわ!? (私の言葉がわかるのか!?)」
「うわ、うるさい」
こうして呪いを解く方法がわかり、ついでにアヒルの言葉もわかるようになったのだが、肝心の『真実の愛』というものがわからないので、結局事態は解決しなかった。
とりあえず意思疎通は出来るようになったものの王子の言葉がわかるのは私だけであったので、王室からの要望もあってこの日から正式に私と王子の同棲生活が始まったのだった。
真実の愛はともかく、しばらく一緒に暮らせば情くらい湧くだろうという打算込みである。
アヒル姿では執務は出来ないので、どうしても王子の決済が必要な仕事が発生したら屋敷に連絡をもらうことにして、私はアヒルと日がな一日散歩をしたり、水浴びをさせたりして過ごしていた。
「あんたねぇ、いくら王子でも盗みは盗みよ。窃盗は犯罪。あんたのは押入り強盗。なーんであの妹の言う事聞いちゃうかなぁ。王族は魅了耐性高いんじゃなかったの」
「くわ……くわー(面目ない……、あの時はまるで熱に浮かされたようで……)」
「反省だけならアヒルでも出来るのよ」
水浴びの後、濡れたアヒルをタオルで拭いて、湖のほとりで日向ぼっこをしながら雑談に興じる。
私たちは今、王都を離れて領地の屋敷に滞在していた。
領地で数日を過ごす内に、私はアヒルへの対応がすっかり雑になり、今では王子をあんた呼ばわりである。
例え婚約者でも普通王子殿下にこのような物言いをしたら不敬罪で処罰は免れない。
けれど王子も慣れたようで、不快な様子も見せずもちもちしたアヒルボディを丸めて私の隣でくわくわ鳴いている。
「そうだ、午後は街に行ってみない?」
「くわ……? (街?)」
「ずっと屋敷の庭にいるのもつまらないでしょ。王都は賑わい過ぎて無理だけど、こっちの街なら王子のことを知ってる人もいないでしょうし、確か今日は市が立つ日だから面白いものがあるかも!」
昨日はこの辺りの畑を見学に行った。王子は初めての農村をとても興味深く観察していたから、市場も面白いと思うかもしれない。
私の提案に彼も頷いてくれたので、移動用に誂えて貰ったアヒルバッグ(アヒルを入れて肩から提げられる抱っこ用バッグである)にアヒルを入れて午後は市場散策へと繰り出す。
「こっちは王都に比べると空気が緩やかね」
「くわわ、くわ、くわー(今年は豊作で納税に不安が少ないと言っていたから、それもあるかもしれないな)」
「確かに、小作人たちにとっては死活問題だものね。明日は朝から少し遠出して果樹園の方を見に行きましょうか。葡萄園があるのよ」
「ぐわっ(この辺はワインも特産だったな)」
「あら、よくご存知ね」
「くわくあぁ(これでもこの国の王子だぞ)」
そんな会話を交えながら、街の端に馬車をつけて大通りを市場の方に向かって歩く。
王都に比べたら規模は小さいが、近隣から訪れた商人の屋台は賑わい、市場は活気に溢れていた。
きゃあきゃあ声を上げて人混みを駆け抜ける子供達にぶつからないように気を付けながら市場を眺めて回る。
野菜を売る屋台もあれば、装飾品を売る屋台もある。子供達に人気なのは飴を売る屋台のようで人混みが見えた。
近くにあった串に刺した肉を焼いている屋台からは香ばしい匂いが漂い、火に肉汁が落ちる度にじゅうじゅうと音を立てているのが聞こえる。
パンの焼ける匂いに、独特な香辛料の匂い、熱した飴の甘い匂い。
市場には色んな匂いがして、バッグの中のアヒルもキョロキョロと忙しなく辺りを見回していた。
「あっ、アヒルだ!」
「ほんとだー!」
しかしそんなアヒルを目敏く見つけ、好奇心からわらわらと寄ってきた子供達にあっという間に取り囲まれてしまった。
子供の洞察力というのは侮れないものだ。
「アヒル可愛い〜! アップルパイ食べる?」
「こら、アヒルはアップルパイ食べないわ。王子も食べようとしないの! めっ! 後で林檎あげるから!」
「このアヒルの名前『王子』っていうの? 変なのー」
「変じゃないわ。これはそんじょそこらのアヒルとは違う、ロイヤルなアヒルなのよ」
「ふーん?」
結局アヒルは餌付けの代わりに子供達に順番に撫で回され、解放された頃にはぐったりとしていたので早めに戻ることにした。
馬車に戻るとアヒルはよろよろとバッグの中から出て、私の膝の上にもちっと身体を落ち着かせた。撫でろという意思表示である。
私は頷き、領地の子供達の相手をしてくれたお礼にと、屋敷に到着するまで優しくその背を撫で続けたのだった。
──そして王子がアヒルになって三ヶ月ほどが経った頃、王都にいる父から突然手紙が届いた。
様子伺いの手紙ならこれまでにも何度か来ていたが、今回はどうやら違うらしい。
内容を確認すれば、宮廷内で王太子には王子の弟君をと推す声が出ているということが書かれていた。
王子と弟君は共に正当な王位継承権を持つがそれぞれ母親が異なる。母親の出自でいうのなら王子の方がずっと上だが、本人がアヒルである以上そういった声が上がるのは時間の問題でもあった。
「……くわわ(まぁ、仕方のないことだ)」
「でも、まだ決まった訳じゃないでしょ? 今からでも王都に戻って……」
「くわわー、くわ(いいんだ。戻ったところでただのアヒルに何が出来る?)」
アヒルは全て納得しているという風にそう言ったけれど、その鳴き声にはいつものキレがなく、彼が本当はひどく悔やんでいることがひしひしと伝わってくる。
当たり前だ。彼はずっとそのために生きて来たのに。
妹になど唆されなかったら王太子は間違いなく彼に決まっていたのに。
なのにどうして彼は私に苛立ちをぶつけるでもなく、ただ受け入れることが出来るのだろうか。
つきんと喉の奥が痛む。
今すぐにでも妹を彼の目の前に引き摺り出して土下座で謝罪させてやりたかった。何なら自分もその隣で土下座して謝りたかった。
でも、彼はきっとそれを許さない。
これまでにも妹を腹立たしく思うことはあったけれど、殺してやりたいとまで思ったのはこの時が初めてだった。
──私はこの時、真実の愛ではなく本物の憎悪を知った。
その晩は私もアヒルも何だか疲れてしまって早々にベッドに入った。
王子はその頃には床のクッションではなく私のベッドの上に置いた専用クッションの上で眠るようになっていて、明かりを落とした部屋の中には時折アヒルの喉から漏れるくぅくぅという微かな音だけが聞こえている。
満月が近いからか明かりがなくても部屋の中は完全な闇ではなく、薄明かりの中で王子の純白の羽根がぼんやりと光って見えた。
(私がもう少し情の深い女なら、真実の愛というのも理解が出来たのかしら)
人を愛するということが私にはよくわからない。
参考になるかと思って恋愛小説と呼ばれるものも何冊か読んだけど、ちっともしっくりこなかった。
私ではなく他の令嬢だったら王子の呪いはとっくに解けて、王太子の座を奪われそうになることもなかったのかもしれない。
そんな事を考え始めたら止まらなくなって胸の奥がずんと重くなっていく。
(……ごめんなさい、王子殿下……)
ひどく申し訳ない気持ちで視線を王子に向け、私はハッと目を見開いた。
いつの間にか自分の横に知らない青年が横たわっていた。
月明かりに輝く銀の髪、伏せられた長い睫毛。眠っていてもよくわかるほど美しい青年だった。
「えっ?」
何が起こったのかと驚いて目を瞬かせると、青年の姿はかき消えて、そこにいたのはぐっすりと眠るアヒルだけ。
呪いを解きたいという気持ちが幻を見せたのか。
なんだか自分の浅ましさを突き付けられたようで、私はますます落ち込んで一睡も出来ずに朝を迎えたのだった。
「……くあっくあ(話がある)」
翌日は朝からずっと雨が降っていて、鈍色の空と同じように屋敷全体が暗く灰色に沈んで見えた。
朝食の後、何をするでもなくぼんやりと外を眺めていた私は、アヒルに声を掛けられてゆるりと視線を動かす。
すっかり見慣れたアヒルは、どこか神妙な様子で私の前に立っていた。
「なぁに」
「ぐわぐわ(婚約を解消しよう)」
「は?」
一瞬何を言われたのかわからず、口元がひくりと小さく痙攣した。
「ぐわ、ぐわわ、くわ(婚約を解消しよう。君は自由だ)」
「ど、どうして今更そんなこと言うのよ」
「……ぐわっ、がー(これ以上君をアヒルに付き合わせるのは忍びない)」
そう言って俯いたアヒルに、私は思わずカッとなって叫んだ。
「本当にそれはそうなんだけど! あなただってこのままで良いはずないでしょ! 呪いが解けるまで、私、絶対に婚約者辞めないから!」
叫んでしまってから、どうしてこんなことを口にしてしまったのかと手のひらで口を覆う。
私は巻き込まれて尻拭いで婚約させられたに過ぎないアヒルの世話係だ。
婚約が解消出来るのなら、私にとってはその方がいいに決まっている。
でも、私はどうしてもそれを良しと思えなかったのだ。
訳がわからなくて頭の中がグルグルする。自分の考えに困惑する私に、アヒルは小さな声で「ありがとう」と鳴いた。
その日は何もする気が起きなくて、アヒルと並んで座って一日中外を眺めて過ごした。
静かで、穏やかで、とても柔らかな時間だった。
その日からまたしばらく経って、宮廷から王子の確認が必要な書類があるので一度来てほしいと使者がやって来た。
もちろん通訳として私も同行を求められた。
久しぶりの王都に私もアヒルも少しだけ緊張したけれど、王子の側近は皆優秀で、私たちが極力他の人に会わずに執務室まで移動できるよう取り計らってくれたので心配は杞憂に終わった。
「殿下、お健やかにお過ごしのようで何よりです」
「ぐわー」
「王子殿下は『皆に苦労をかけてすまない』と仰せです」
クッションを置いて高さを調節した豪奢な椅子にちょこんと座ったアヒルは、そうしていると不思議とロイヤルな雰囲気を漂わせているように見えるから不思議だ。
私が傍らに立ち準備が整うと、早速机の上に書類が置かれる。
「ご確認頂きたい案件はこちらです」
「くわっ」
王子はじっと書類を覗き込み、しばらく何かを考えるように丸い頭をゆらゆらさせていたが、すぐに私を振り返って「くわ!」と鳴いた。
「えっと、この件の資料は昨年ではなく一昨年の条件を参照するようにと仰せです」
「一昨年ですか?」
「北部での冷害の状況は昨年より一昨年に近い、と。一昨年に該当領地の代官たちから提出された資料は殿下の個人書庫にある、と仰せです」
「なるほど。至急確認させましょう。次はこちらですが……」
私は王子のアヒル語を通訳し、時折アヒルに代筆を頼まれて、昼前には執務室に私のための机と椅子が用意されてしまった。
「ねぇ王子、使節団の前回の受け入れの資料どこ!?」
「ぐわわ、ぐわっ」
「はぁ!? 何で個人の書庫に入れるのよ! こういうのは必要な時にすぐ参照出来る場所で保管しなさいよ!」
「ぐわー……」
「あぁ、はいはいごめんね。王子頑張ったんだよね」
私とて上級貴族としてそれなりの教育を受けているし、それに加えて妹の尻拭いで培った外交経験もあり、なんだかんだで適応出来てしまったせいでここぞとばかりに仕事を増やされ、その日は真夜中近くまで王子の執務室から解放されることはなかった。
ちょっと書類にサインするだけだと言ったのに!とぶつくさ文句を言う私の膝の上でアヒルは既に寝息を立てている。
「遅くまでお付き合い頂き誠に有難うございます。お部屋をご用意致しましたので、こちらへどうぞ」
宮廷に仕えているらしい女性の案内にアヒルを抱えて立ち上がったところ、王子は自室でお休みになられますとアヒルを回収された。
王子もたまには自分の部屋でゆっくり休みたいか。
そう納得して眠い目を擦りながら案内についていく。
いつもなら緊張しっぱなしのお城の廊下も、深夜となっては誰もおらずしんと静まり返っているからか、はたまた限界を超えそうな眠気のせいか、ただただ早く部屋に着いてほしいとしか感じない。
通された客室も相当に豪奢であったけれど、私は部屋の内装を堪能する気力もなく、ベッドに直行してそのまま朝まで泥のように眠ってしまった。
翌日は部屋まで朝食が運ばれて、久しぶりに一人で食事をとった。
はて、一人というのはこんなに静かなものだったのか。
ここ最近は毎日くわくわ鳴くアヒルとおはようからおやすみまで一緒だったから、妙な感じがする。
パンを食べたがるアヒルを捕まえて果物を食べさせることもないし、アヒルに遠慮して肉類を控える必要もない。
気分は楽だけど、何となく胸に穴が空いたような空虚さを感じた。
朝食を下げてもらう際、昨夜部屋まで案内してくれた女性がやって来て、今日は執務はなく午後には馬車で屋敷まで送ってくれると教えてくれた。
「今は庭園の花が見頃ですから、散策などされてはいかがですか」
「ではお言葉に甘えて……」
部屋にいてもやる事はないし、暇潰しがてら庭園へと向かう。
花が見頃というだけあって庭園が近付くとふわりと良い香りが漂ってきた。
この庭園は中央に噴水があり、その近くにはベンチが配置されていたはずだ。そこでぼんやり花を眺めるのも悪くない。
色とりどりに咲き誇る花を眺めながらゆっくりと時間をかけて庭園を歩く。
貴族に開放されている庭園のはずだが、その日は他に人の気配はなく、私は他人の目を気にする事なく散策を楽しんでいた。
(これからどうするべきかしら。とりあえず妹は捕まえて逆さに吊るすとして、どうにかして魔女に王子の呪いを解いて貰うよう改めてお願いに……)
花の香りを胸一杯に吸い込み、一人思案に耽っていると背後でがさりと音が聞こえた。
庭師だろうかと何気なく振り返れば、口元を布で覆って顔を隠した、いかにも怪しい男がこちらに向かってやって来るところだった。
(お城の庭に不審者!?)
ギョッとして逃げようとするが、既に退路は塞がれており、逃げ場を失った私は生け垣に追い込まれていた。
「なっ、何者です!」
「名乗るほどの者ではございません。いやなに、あなた様に少々ご助力頂きたいのですよ」
男はそう言って嫌味なほど恭しく宮廷風に膝を折る。
そして彼はにやりと目を細めながら続けた。
「王子殿下に、王位継承権を放棄して頂くよう婚約者であるあなた様から進言して頂きたい」
「何ですって?」
「簡単な話ですよ。なにしろ、王子殿下は今や哀れな畜生に成り果てた。今まで王族として認めていたのが甘いのです」
「無礼な……! あの方は呪いであの姿になっているだけです!」
「しかし戻れる保証もないのは事実」
じり、と男がまた一歩距離を詰める。その手には小振りながらも鋭いナイフが握られていた。
「あまり手荒な真似はしたくないのですけどねぇ。あなた様さえいなければ王子殿下はただのアヒル。そうですね、夕食にアヒルのローストが一品加わってこの話は終わりです」
「そんなことさせないわ!」
例え、この命に換えても。
突き付けられた白刃に足が震えるのを叱咤し、大きく息を吸う。
そして私はいつも妹を叱り付けていた時の声量で思い切り叫んだ。
「不審者よ! 誰か来てぇえええええええ!!!!」
屋敷の使用人にガラスが割れると称された自慢の叫び声である。
至近距離で直撃を受けた男は足をよろめかせたが、それも束の間のことで、すぐに私を睨み付けてナイフを握り直した。
「小癪な……!」
振り上げられたナイフにこれから訪れる痛みを覚悟してぎゅっと強く目を閉じる。
けれど覚悟した衝撃は訪れず、代わりに聞き慣れた鳴き声がその場に響いた。
「くわーっ!!!!」
反射的に声の方を向くと空が一瞬翳って何かがその場に飛び込んできた。
「うわっ、なんだ!?」
「がーっ! ぐわっ! ぐわー!!!」
バタバタと何度も飛び上がって男に飛び掛かり、宙を叩く白い翼。舞い散る羽根。
執拗につつかれた男は兵士たちの鳴らす警笛に気付いてか生け垣の間に逃げていった。
「……くわ!?(無事か!?)」
「平気、よ……」
振り返ったアヒルに問われて返すも、足に力が入らなくてその場にへたり込んでしまう。
今になって全身が震えて止まらない。
がたがたと震える私に、アヒルがよたよたと近寄って大丈夫かと顔を覗き込んでくる。
白い羽根はボサボサで、辺りにも羽根がたくさん落ちていて、よたよた歩く姿だってどう見ても大丈夫じゃないのはアヒルの方だ。
それでも彼は己の身を顧みず私を助けに来てくれた。
「……アヒルは飛べないんじゃなかったの……」
「ぐわ、ぐわぐわ、ぐー(飛んでない。二階から助走をつけて飛び降りただけだ)」
「何それ。危ないよ、もう……」
私の膝に身体を乗り上げて顔を覗き込んでくるアヒルに頬ずりをして抱き締める。
「……助けてくれて、ありがとう」
「くー(君が無事で良かった)」
ギュッと抱き締めたアヒルの羽毛は温かくて、今度は恐怖ではなく安心から涙が溢れた。
「──アヒルちゃんなりの頑張りは認めるけど、満点はあげられないわねぇ」
と、そこに場違いなほどのんびりとした声がしてアヒルと共に顔を上げる。
視線の先では例の魔女が足を組んだ姿で宙に浮かんでいた。
「魔女様、どうしてここに」
「えー? ほら、アフターフォローも魔女の仕事って言うかぁ。そろそろ反省出来たかなーって見に来たトコ」
「そういえばさっき満点がどうとか……」
「そうそう。なんか吊り橋効果的な感じあったし、満点はあげられないわねぇ。まぁ、100点満点中73点くらいかしら」
「び、微妙!」
「でも合格よ。真実の愛を確認したわ」
「えっ?」
「え? 惚れた相手の為に命を差し出せるのが真実の愛でなくて何なのよ」
そう言われて私とアヒルは顔を見合わせた。
真実の愛を確認したと魔女は言ったが、王子は依然アヒルのままだし、私はいまだに愛が何だかわからないままだ。
首を捻る私たちを見て、魔女はころころと鈴を転がすように笑って言った。
「やぁねぇ、この子たちったら。真実の愛で呪いを解くと来たら、最後はアレに決まってるじゃなぁい」
「……アレ?」
「んもう! キスよ、キス! 」
早よ接吻せいという魔女の言葉を聞いてボッと頬が熱くなる。
目を逸らした純白のアヒルも、多分人間の姿だったら顔が赤くなっていたと思う。
もじもじする私たちに焦れてか、ついにキース!キース!とキスコールを始めた魔女に急かされて、チラとアヒルを見やるとアヒルもこちらを見ていた。
「くわ……」
「待って、何も言わないで! これは! 必要な儀式なのよ! そう! 呪いを解くために仕方なく! そういうことにしましょう!?」
「くー」
何だか不満そうな声を上げるアヒルを押し切って目を閉じる。気分はまな板にのせられた魚だった。
すぐに唇に固いものが触れて、あ、これ嘴だわと思った瞬間ごうとその場に強い風が吹いた。
「……あの、大丈夫か?」
風が止み、そっと囁くような声が聞こえてゆっくり目を開ける。
目の前には仕立ての良い衣装に身を包んだ銀色の髪に青い瞳の青年が膝をついていて、ジッと私の顔を覗き込んでいた。
「……誰?」
「元・ロイヤルなアヒルだが……」
その呼び方を知っているのは私とアヒルだけだ。
そういえばこの顔、どこかで見たような記憶がある。月夜に見たあの姿は私の妄想ではなかったのか。
そんな事を思いながら私はそっと元ロイヤルなアヒルの頬に手を添えた。幻ではなく、しっかりと体温を感じたことにホッと息を吐く。
「……戻れたね」
「うん。君のお陰だ」
いつの間にか魔女は姿を消しており、その場には呪いの名残を思わせるように舞い散った白い羽根だけが残っていた。
──王子が人間に戻ってから、これまた当然ながら宮廷は大混乱に陥った。
けれど王子本人がその混乱を鎮め、重臣たちを集めた話し合いの結果、王太子は王子ではなく、その弟が立つことに決まった。
王子が呪いのために不在にしていた間、代理で公務をこなし外交の手腕も見せた優秀な弟王子の立太子である。母親の出自の件で反対意見も出たようだが、最終的には平和的に意見はまとまったという。
「……本当に、それで良かったの?」
王城の庭園で王子から直接その報告を聞いて、私は隣を歩く王子を見上げる。
私の脳裏にはあの日の悲しげなアヒルの姿が今でも残っていた。
彼自身、うちのあの妹にさえ近付かなければ順当に王太子となっていただろうに、あっさりと身を引いてしまったことに疑問もあった。
けれど王子はどこか晴れ晴れとした笑顔を浮かべて言った。
「あぁ。元々弟の方が向いていると思ってたんだ。それに一度呪われた身ではさすがに瑕疵が大きいしね」
「それはあなただけのせいじゃないでしょう!?」
「そうだけど、それで済ませてはいけないんだよ。でも、代わりに侯爵位と領地を賜ることになったよ。これからは弟の補佐として国に仕えるさ」
「……そう」
彼が決めたことなら、私にこれ以上言えることはない。
まだどこかモヤモヤするけれど、このモヤモヤもいつか昇華出来ると信じて顔を上げる。
「ところで、婚約のことなんだが」
突然神妙な顔になった王子の言葉に、あぁそうねと頷く。
私が婚約者になったのは王子の呪いのせいだ。呪いが解けた今、王族である彼にはもっと相応しい人と婚約する権利がある。
状況が状況だったから特例としてお互いに瑕疵なく婚約をなかったことにできるはずだ。
「破棄したい? いいわよ。あなたは人間に戻れたし、私もお役御免でしょう」
アヒルの世話係という名の婚約者生活は今思えばそんなに悪くはなかった。
正直寂しい気持ちはあるけれど、どうか申し訳なく思ったりなんてしないでほしいと続けようとしたところで王子が口を開いた。
「あの、破棄したいというか、君が嫌なのではないかと……」
「どういうこと? 婚約破棄したいんじゃないの?」
「そんな訳ないだろう! でも、その……」
王子は顔を赤くしながら何やらもじもじもごもごしていたが、腹を決めたのかそっと私に耳打ちした。
「──まだ残っているんだ、あの呪い」
「えっ!? どうして!? 人間に戻っているじゃない!」
「あー、その、戻ったが、戻らなかったところがあって……」
「どこ!?」
なおも追及すれば、ついに観念した王子は羞恥にキュッと唇を噛んで答えた。
「…………………………尻尾」
尻尾。その言葉に瞬時にかつてのアヒルの姿が脳裏に蘇る。
歩く度にふりふりと揺れる純白のアヒル尻。そこにある上向きにくるんとカールした可愛い尻尾。
人間には戻ったが尻に尾羽が残ったままなのだと告白する王子には悪いが、堪えきれず私はその場で盛大に吹き出した。
笑い過ぎてお腹が痛いし目尻には涙まで滲んでいる。
それを指先で拭って私は言った。
「──私、あなたの尻尾、結構好きよ!」
こうして私の婚約者として充てがわれた一羽のアヒルは『真実の愛』によって元の姿に戻り、私たちは時折アヒル語で喧嘩などしつつもいつまでも仲良く暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
追伸
妹はやっぱりその後も帰って来なかった。
あいつ、帰ってきたらとっ捕まえて庭の木に逆さに吊るしてやるんだから。




