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ハンニヴァルカを知らない人はいないでしょ





 ハンニヴァルカ・ヴァルケニオン、帝国最大の敵。7年前、彼はカルタゴン戦争においてアルペンを越え帝国領に侵入、そのまま南下し帝都の目と鼻の先に辿り着いた。

 全ノストルム市民は恐怖しただろう。あのハンニヴァルカがやってくる、殺されると。だが、そうはならなかった。

 スピキ将軍はハンニヴァルカの包囲殲滅戦術を完全にコピー改良して彼に打ち勝ったのである。

 その後ハンニヴァルカは撤退を強いられ、最終的にはその5年後にスピキ将軍によってゲルマンの地で討たれる事となった。

 ハンニヴァルカは死んだ、しかしその恐怖は未だ強く残っている。蛮族と蔑んできた彼らの中から自分達を脅かす存在が生まれたのだから。


 「諸君、第785回政務会は本日招集されました。議会を開式致します」


 という訳で政務院議会を開催する。二ヶ月間の制御された奴隷放棄で貴族議会と頑張って流した噂のおかげでハンニヴァルカの恐怖を思い出しているからね、議会の皆は。


 「では第一位、ガイウス魔法法の廃止とヘリオース魔法法の制定についての審議を開始致します。また、参考としてノストルム軍将軍、スピキ・ゲルマヌス氏を招集致しました。では参考人、平民代表議員、貴族代表議員、軍部代表、そして私皇帝ヘリオースの順に意見を聴取致します。では、スピキ・ゲルマヌス氏、お願い致します」


 彼は立ち上がり、議会を一瞥した後に喋った。


 「君達も知っての通り、ハンニヴァルカは恐ろしい男だ。無敵無敗のノストルム軍を破り帝都にまで迫った。そしてそんな男を倒せるのはこのノストルムで唯一、私スピキだけだ。そして、唯一ハンニヴァルカに勝ちうる男として言わせてもらうが、現状のノストルム軍ではハンニヴァルカには勝てない、決して」


 「今のノストルム軍は軟弱だ。第二次奴隷戦争もそうだが、ハンニヴァルカを最後にして同格の相手と戦った経験がない。こんな調子で悪夢と評される奴に勝とうなど、幾ら指揮が私であっても不可能だ」


 「よって我々は階級の固定化や既得権益の保護などという保守的な思考から脱却せねばならぬのです。未曾有の国難が形を持って現れているのですから」


 まるで兵士に演説をするかのように張りのある声と強い言葉で喋った。その姿は老人のものとは思えなかった。


 「ありがとうございます、スピキ・ゲルマヌス将軍。では次に平民議員代表ミュラ・ユリアス氏、お願いします」


 平民議員の代表の言葉は先程のスピキ将軍を後押しする言葉だった。多分、ミュラって人は私のヘリオース魔法法の意図が魔法を広く普及させる事だってわかってるんだろう。だって彼は解放奴隷の子供から一代でここまで上り詰めてきた叩き上げだしね。


 「では次、貴族議員代表パトシキ・トカー氏、お願いします」


 太っちょで歯のかける、典型的な悪役のような男、パトシキ・トカー。でも私はこの人の事は嫌いではない。


 「そもそもです。何で皆様はここまで恐れているのですか?アナキヌス・スパルタクスなどと言う不遜者の正体がハンニヴァルカであると確定した訳ではない」


 「にも関わらず戦々恐々としてハンニヴァルカ、ハンニヴァルカと連呼して、恥ずかしくないのですか?」


 「ハンニヴァルカの名前を出して自体を誇張してさらなる権利を得ようとする軍部に踊らされて、それでも政務院の議員なのですか?」


 彼が何故太っているか、それは派閥を築く為に多く会食したからだ。それも全て、自分の生まれ持った、貴族としての役割、自分に特権を与えてくれた社会というものに利益を還元する為である。

 だから私は彼の事は嫌いではないし、何より過激な手段でしか影響力と権力を拡大できない私なんかよりも、よっぽど政治家として優れている。


 「ありがとうございます、パトシキ・トカー氏。では軍部代表ブルース・タヌキウス氏、お願いします」


 だからこそ私はブルース・タヌキウスを用意した。パトシキ・トカーが協調を持って社会に還元を果たす人とすれば、ブルース・タヌキウスは暴力と陰謀で社会に還元を果たす人だ。


 「心外である!」


 彼は立ち上がったと共に大きく叫んだ。パトシキ・トカーが投げ出した問いによる思考を吹き飛ばす為に叫んだのだ。


 「ハンニヴァルカがハンニヴァルカでは無かったらそれでいい!しかしハンニヴァルカであったらどうするのだ!」


 「そもそも、前提が間違っている。パトシキ・トカーという豚のような男は我ら軍部の事を不遜者と言ったがそこが間違っている」


 「我々軍部は権力を求めていない。我々軍部は国家の剣として必要な当然の戦闘能力を求めている、その為のガイウス魔法法の廃止とヘリオース魔法法の可決だ」


 さぁ、今だよブルース・タヌキウス。ここであれを宣言するんだ。


 「だがお前らはそれを理解しない。故に我ら軍部はここにおいて宣言しよう!我ら軍部の総意を示す為に私はここにおいて、独裁官制度の廃止を要求する!!」


 さぁラスアジィンニコフ。私は今回の議会で貴方の寝首を掻こうと思ってたんだ。余裕綽々に私を子供扱いする貴方の寝首をね。


 「さぁ、皇帝陛下!我ら皇帝よ!我ら軍部の真意を確たるものとする為、私はここにおいて独裁官制度の審議を宣言を要求する!!」


 顔が笑っていないぞ、ラスアジィンニコフ。流石に予想外だったか、ここで独裁官制度の廃止をいきなり議論するなんてね。


 「いいでしょう、では皇帝ヘリオースの名において只今より独裁官制度に関する審議を開始したいと思いますが、賛成の者はご起立下さい」


 「賛成が過半数であった場合、第一位ガイウス魔法法改正とヘリオース魔法法の制定に関する投票を第五位として、第三位に独裁官制度の廃止、第四位に独裁官制度の廃止に関する投票を行います」


 議員の3分の2が起立した。


 「では第三位、独裁官制度の廃止について審議致します。平民議員代表、貴族代表、軍部代表、そして私皇帝ヘリオースの順に意見を聴取致します」


 「ではミュラ氏、お願い致します」

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