ガイウス魔法法改正の続きをするよ……あれ?
皇帝は、私はスカートをしている。でも最早誰も懐疑の目で見てはいない。何故ならイグニオン神星会議とガイウス魔法法と、スカートを履いて政治をやるよりも危険の事に手を出してきたのだから。故に彼らは一政治家として私を見ている。だからこそ、この古狸共に私は足元を見られないように堂々と私の意思を宣言しなくてはならない。
「まず、私は皇帝として宣言しておきます。私は平等だとか公平だとか、そういうものに興味はありません。何故なら私はマレ・ノストルムそのものですから。つまり、です。自然状態に置かれた単独の生物が自己の安全のみを観点とするように、私もマレ・ノストルムの生存という観点のみで判断しているのです」
「その結果こそがこの法案なのです。軍部とスピキ将軍が提唱したように、北部からの野蛮人達を黙らせる為に魔法は必要不可欠です。何よりもう諸君に置かれましてもお気付きでしょう。多くの母親は子供が戦場に行く事を望まない。しかしその反面、国家としては軍事力を必要としている。ならば我々がするべきは徴兵か、あるいは今居る兵士の質を上げる事だ」
「諸君らもご存じの通り、今徴兵を行えば大暴動が起きる。これは確定的でしょう。ですから我々の取れる選択は一つ、ガイウス魔法法を改正し魔法の軍事転用を徹底的に行う事になります」
「以上が私の総意で御座います」
拍手が聞こえる。このうちの何割が本物なのかはわからないけれど、少なくとも手応えはあったように思えるから七割方信じてみよう。
「では第二位、投票とさせていただきます」
職員が投票箱を持ってきて投票用紙を配った。
もう私にはできることはないので、後はその時を待つだけだ。
そして1時間後、その時が訪れる。開票である。といっても、発表するのは私だからここに立っている時点でもう結果は知ってるんだけれどね。
「開票とさせて頂きます。賛成票148票、反対票121票、棄権31票。以上より、政務院においてガイウス魔法法改正を可決致します。また後日、新星院においても審議を行い、最終的に護民院で審議を行います。その際、両院において可決されなかった場合、もう一度政務院においてガイウス魔法法改正について審議をさせていただきます」
ひとまず、これでほぼガイウス魔法法改正は通ったといっても過言ではない。何せ護民院は政務院・神星院での取り決めを審議する機関ではあるけれど、その名の通り護民が彼らの一番の仕事だ。だから平民に有利な改正版ガイウス魔法法は必ず通ると言っても過言ではない。
さて、後は解散の挨拶をするだけかな。
「報告せねばならない事項があります!!」
その時、この議会に呼ばれていない軍人が入ってきた。その軍人は滝汗をかいて息も途切れ途切れであり、如何にも急いできたという雰囲気だった。
「パリファンヌス氏が農場で奴隷に殺害され奴隷が蜂起しました!」
この場にいる誰もがこの事態の重大さを把握していた。
パリファンヌス、この場の誰もが知っているシキリアの大地主だ。政界への影響を出す程の大金持ち。その人が奴隷に殺された。
奴隷法より、主人を殺害した奴隷は処刑、またその殺人現場にいた奴隷も連座で処刑とする。
パリファンヌスが殺されたのは農場、農地には何千人の奴隷。千人規模で殺されるくらいなら蜂起するのは当然。そして他の奴隷がそれに加わるのも当然。そしたら蜂起する奴隷は万を越える。
これは、まずい。
「ヘリオース・エルガーベラス帝の名において勅令を発させていただきます!第728回政務院議会を閉会し、今より第1回政務院特別議会を開会します!またこの議会で決められた内容は皇帝の大権の下、神星院と護民院の了承を得ずに本日付けで効力を持つものとします。第一位は第二次奴隷戦争についてです!」
この事態は迅速に処理しなくちゃならない。だから私は皇帝として、困惑する人たちに対して叫ぶように仕切った。
「軍部はシキリアの現状を整理して誰とどの部隊を派遣してどう戦うかを検討して下さい!それと貴族議員でも平民議員でもいい、パリファンヌス並みに土地と奴隷を持っている者は参考として意見を聞きたい!鎮圧後の後処理がきちんとできなくては今度は第三次奴隷戦争だ!」
あれ、私ってこんなこと言えたっけか。まるで本当に皇帝みたいだ。人の命が関わる事って知りながらテキパキ命令を出してる。
「陛下、私と以下3名、パリファンヌス氏とほぼ同等の農地及び奴隷を所持しております」
「そう、じゃあ教えて。この反乱が治ったら法律に則って奴隷は処理しなくちゃならないんだけど、全員処理するのはお金は掛かるし、残しすぎると反乱の温床になる。だから見せしめに最適な処理はどのくらいの数なの?」
今、私処理って言ってる。人間に対して処理って使ってる。私ってこんな事言えちゃうんだ。
「凡そ2000人でしょうか。一割です。奴隷は動物ではなく人的資源で、そして財産ですから。地主としても反乱奴隷の死亡は避けたいはずですから」
2000……妥当だろう。でも2000人が死ぬのか。いや、今の私、ヘリオースならば耐えられる。それで行こう。
「では処刑は2000と決めた。地主に対しての説明は私からするよ。それでそっちは決まりましたか?軍部の方」
「はい、咄嗟ですが部隊等は決まりました。攻勢計画については道中で決定致します」
「そうか、ならば今すぐに準備編成し迅速に展開させて。数が多くなれば多くなるほど奴隷が合流してめんどくさくなる」
「了解致しました」
第二次奴隷戦争、それは当初予想されたよりも小規模に治った。私の判断が迅速だったから、というのもあったかもしれない。しかし私の判断が体制側にとってどれほどいいものだったとしても、私が命令を下し、奴隷や兵士が死んで、最終的に戦争での死者が9000人、その後の奴隷の処刑が2000人であったという事は変わらない。
でも私は、へーリオスは傷つかなかった。ただ正しいことをしたと冷淡に受け止めれた。しかし、私の中の私は別だった。
第二次奴隷戦争は史実事件です。全然年代違うけどね。発生理由とかも同じっすね。




