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ガイウス魔法法を改正するよ

 




 今日は演説をする。そう、政務院で。という訳で政務院議事堂に到着した訳なんだけれど、早速緊張してきた。何故なら法案の可決はここで決まると言っても過言ではないのだから。

 法改正には政務院、神星院での承認の後に護民院が審議するって形なんだけれど、実は政務院で承認されるだけでも法は通る。そう、政務院の優越という奴だ。理由としては実際国家を運営しているのは貴族集団の政務院だから政務院の決定が優先されるべきであると言う所だろう。

 まぁともかくだ、ここで決めなくちゃならないって事だ。

 でも一筋縄ではいかないだろう。ラスアジィンニコフが政務院を何とかしてくれるとは言ってくれたけど、それでも半分取れるか怪しいと言うのが現状である。


 「任せてくださいって言ったくせに半分取れるか怪しいって、なんか、なんかじゃない?」


 ラスアジィンニコフと結託してからそろそろ半年、軽口くらいならこうして叩けるようにはなった。と言うか、この人はなんか人を絆すような力を持っている。スキピ将軍もそうであったように、私も彼を気に入ってしまう、自然と。


 「皇帝権威に傷が付かなきゃオッケーな神星院と違って政務院は面倒臭いんですよ。彼らは貴族の中の貴族、全員古狸なんです」


 神星院は宗教サイドの衆議院なんだけれども、宗教サイドって事は聖職者しながら政治家してるって事で、加えて星教の教義的には聖職者は同時に科学者でもある。つまり神星院の議員とは聖職者で政治家で科学者であり、忙しいすぎて時間がない。だから神星院の相違としては皇帝権威とか星教の権威を損なうような法律じゃなければ全然いいですよって感じである。


 「まぁ、だから、その古狸共を黙らせてくださいね、頑張って」


 「わかってるよ、その為の皇帝権威とスピキ将軍でしょ」


 政務院議事堂は扇状の構造をしており、まるで大学の半円型の大講義室のようだった。また季節の割に人熱でかなり暖かく、蝋燭は溶けまくって所々折れてる。それ程までに、今回のガイウス魔法法改正は重大な事柄なのだ。


 「陛下、あの一団が平民議員、その横が貴族議員、そしてあっちが軍部です」


 政務院議員の議員定数は300名、そのうち20名が平民議員そして120名が軍人であり残り160名が貴族だ。で、ガイウス魔法法改正にどの派閥が賛成してくれるのかと言うと、これはむろん平民議員と、そして北方征伐の為に軍事力を確保したい軍部だ。

 でこれで平民議員と軍人が賛成するとして140。既得権益を保護したい貴族は反対するだろうから20足りない。ここで出てくるのが皇帝である私の存在だ。皇帝は一人で議員定数の一割の票を持つ。これで170票。過半数は取れている、ただし理論上だからどうなるかはわからない。

 まぁ昔は、特に五皇帝時代は皇帝は五人いるから150票とかヘラヘラ帝時代は俺は皇帝三人分の力を持ってるとか言って90票だったりしたんだけれど、もうそう言うのはできなくなってしまったみたい。


 「あぁあと、この前も言ったんですけれど、くれぐれも貴族議員は刺激しないで下さいね。今回はあくまで必要に迫られたから改正をすると、平等性とか不道徳ではなく、必要だからと言う所を強調して下さい。暴君ヘラヘラ帝の悪夢がトラウマなんです」


 ヘラヘラ帝は私の二代前の皇帝だ。というか私が皇帝になったのはこの人せいだったりする。この人はヘラヘラ勅令って言って、マレ・ノストルムの属州全てにマレ・ノストルム市民権を与えた人だ。それで急進的過ぎてトイレ中に殺されちゃった。


 「勿論。この法案は可決しなきゃならないし、それに死にたくないからそんなやばい事しないよ」


 開式の時間となり、私は議長席に向かった。皇帝は政務会議長の地位も兼任するのだ。


 「諸君、第784回政務会は本日招集されました。議会を開式致します」


 さっきまでうるさく議論していた議員たちは行儀良く指定された席に座った。だが蝋燭の燃えるスピードが変わっていない所を見るに、議員たちの内心の緊張感というのは変わっていないんだろう。


 「では第一位、ガイウス魔法法改正についての審議です。また、参考としてノストルム魔法大学校学校長、ロバティオン・プトレマイオス氏、そしてノストルム軍将軍、スピキ・ゲルマヌス氏を招集致しました。では参考人、貴族議員代表、平民議員代表、軍部代表、そして私皇帝ヘリオースの順に意見を聴取致します。では、ロバティオン・プトレマイオス氏、お願い致します」


 ロバティオン・プトレマイオスは一瞬嫌そうな顔をした。当然である。政務院とは戦場であり、ここで変な発言をすれば死ぬ。だから彼のような、政治とはあまり関わりたくないけれど便宜は図って欲しいなって人は無難な事を言わなくちゃならないんだけど、それはそれとして彼はガイウス魔法法を改正したいと考えているから何を言おうか、本当に言って良いのかと二重三重に思い悩んでいるのだ。


 「はい、ロバティオン・プトレマイオスです。ガイウス魔法法改正について、私はこの改正草案を全面的に支持します。魔法を究め、遥か宇宙の穴にある天国へ人々を届ける。それが星教の理念ですし、魔法はその為にあります。故に魔法学校は新たな才能を逃すべきではない」


 私の作案したガイウス魔法法改正草案とは以下の通りだ。

 魔法学校で学ばないと最悪死罪は変わらないけど、金貨3枚を支払えば魔法学校以外で学んでいても罪を赦免されるよ。あと平民でも高額な学費を払えば入学できるよ。


 「しかし魔法法の意図、つまり大多数の愚衆に魔法という力を持たすべきではないというのも理解できます。ですからこの改正草案は法の意図と魔法大学校、しいては星教の理念の最善の折衷案になるというのが……」


 「魔法大学校の総意です」


 この人最後の最後で私の意思ですって言いたくないから逃げたな。でもそれがいいと思う。だってあの人頑張ってたし。その証拠に座った後油汗を袖で何度も拭いてたし。


 「ありがとうございます、ロバティオン・プトレマイオス氏。ではスピキ将軍、お願いします」


 彼は座ったまま、あのゆったりとした丁寧な口調で喋り始めた。


 「すいません、最近腰痛が酷くって、このままの姿勢で皆様にお話しする事をお許し下さい」


 「えぇ、ガイウス魔法法改正についてでしたね。軍人の意見ですが、私としては賛成ですよ。何ならもっと緩和してもいいとも考えています。結局、戦場で役立つのはボンボンの将校よりも1000人の魔法戦力です。純粋な火力で勝っていれば戦術も戦略も無意味になるのですから」


 「つまり無能な指揮官を増やすくらいなら魔法を撃つ大砲を増やして欲しいのです。結局無能な指揮が味方を殺すのですから。そしてこれは政治にも言える事だと考えております。この審議には関係ありませんがね、独裁官制度もその代表ですよ。あれは廃止するべきだ」


 ラスアジィンニコフが一瞬私を睨み、そして少し笑った。何を考えているかはわからない。後で聞いてみるしかないけれど、やはり怖いな。


 「有難うございます、スピキ将軍。では次に平民議員代表、お願いします」


 その後平民議員の代表は階級による格差是正の為に妥当であるとし、貴族は魔法の拡散はノストルム内の風紀が乱れ、もしもの内乱が起こった場合、鎮圧が極めて難しくなるとして断固否定、そして軍部代表はスキピ将軍とほぼ変わらぬ発言をした。


 「有り難うございました。では、皇帝の意思表明とさていただきます」

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