第6話 手続きは完了しました
約三話半使った漫才パートも終わりを迎えます。
ただ、漫才=適合手術と思うと、軽くホラーかもしれません(`・ω・´)
「うーん……どれにするか……」
太郎は、腕を組んで考え込んでいた。
チートを選ぶためだろう。
一方で、ルカはニコニコしながら、太郎を見守っていた。
「――よし、決めた。」
太郎が顔を上げて、ルカに向き直った。
ルカは、ニヤニヤしながら言った。
「当ててみせようか?」
「おう、当ててみろ。」
自信満々に胸を張る太郎に、ルカは言った。
「だいたい全肯定のやつ。」
「なっ、なんでわかった!?」
太郎は、うろたえた。
ルカは、ケラケラと笑った。
「だってキミ――地球語で言うとアレだ、陰キャっぽいから。」
「おい、こら。ちょっと待て。」
太郎がジト目でルカを見ると、ルカは肩をすくめた。
「まあ、それは冗談だけどね。」
「冗談にしては破壊力があり過ぎだぞ……」
太郎は、口を尖らせた。
すると、ルカは息を吐いてから言った。
「キミは、賢いみたいだからね。」
「……そりゃどーも。」
太郎は、まんざらでもない様子で目をそらした。
「だから、効果を実感しやすいものを選ぶだろうな、って。」
ルカがそう言うと、太郎は肩をすくめた。
「お見通しってわけか。」
ルカは、首を横に振った。
「そうでもないかな。6割くらい勘だよ。」
「おいおい……」
太郎が呆れたようにため息をつくと、ルカは苦笑した。
「予備知識がないキミがやりやすいように、とは思ったけどね。」
ルカの言葉を受けて、太郎が首をかしげた。
「ん?……ちょっと待て。」
「どうしたの?」
今度はルカが首をかしげると、太郎は言った。
「予備知識がないと、なんで問題になるんだ?」
ルカは、少しだけ固まった。
それから、両手をひらひらと上げて、降参のポーズを取った。
「わーお、賢いね♪」
ルカのおどけた様子を気にすることもなく、太郎は言った。
「もしかして、割り込み型の転生か?」
ルカは、一瞬だけ言葉を選んで、それから口を開いた。
「そうだね。行き先は赤ん坊じゃないよ。」
それから一息置いて、ルカは続けた。
「厳密な意味では転生じゃないけど、“異世界転生”はそういうのも多いよね?」
ルカがそう言うと、太郎は生唾を飲み込んだ。
「……転生先、聞いてもいいか?」
太郎の重苦しく様子とは対照的に、ルカはあっさりと言った。
「うん。オレの管理区域の、とある惑星の勇者。」
「嘘だろっ!?」
太郎が悲鳴を上げる一方で、ルカはケラケラ笑いながら肩をすくめた。
「いやー、ちょうどこっちも重要人物が死んじゃったんだ♪」
「笑い事じゃねーだろっ!?」
太郎の悲鳴は大きくなる一方だが、ルカの調子は変わらない。
「でも、まだ終わられたら困るから何とかしなきゃ、って思ってたんだ。」
そこで、一息ついて続けた。
「そしたら、ちょうどキミの件があったんだよね♪」
「いやいやいや、冗談じゃねえっ!そんな役割務まるかっ!?」
太郎が大いに悲鳴を上げた。
すると、ルカは微笑して言った。
「まあ、いつまでも陰にいると腐っちゃうから、たまには陽を浴びな。」
ルカのあんまりな言い草に太郎は悲鳴を上げた。
「陽どころか、火だろ、それ!?焼け死んだらどうするんだよっ!?」
ルカは、首をかしげて言った。
「だって、今、死んでるじゃん。」
「そういう意味じゃねええっ!?」
そして、悲鳴を上げ終えた後、太郎は急に下手に出ながら言った。
「あのー……ルカ、さん?」
「どうしたのさ、いきなり名前呼びまでして改まって。」
ルカは首をかしげた。
すると、太郎が言いにくそうに、おずおずと、珍しく敬語で言った。
「もうちょっと、穏やかな転生先がないですかね……?」
「ないよ♪」
ルカは即答した。
太郎はうなだれた。
「……だよな、そうだよな……」
この世の終わりであるかのような様子の太郎に、ルカは淡々と言う。
「だって、オレはあくまでも管理者だもん。」
「……だもん、って……こっちは夢が一気に悪夢に変わった気分だぞ……」
太郎がルカをジト目で、しかし力なく見た。
ルカはニッコリと笑った。
「大丈夫、生きてればいいことあるよ!」
「今、死んでるんだけどなっ!?」
やけくそ気味に悲鳴を上げた太郎に、ルカはニコニコしながら頷いた。
――太郎が不意に体勢を崩した。
「え?」
脱力したように、地面に膝をつく。
「な、なんだこれ……力が入らねぇ……っ。」
「そろそろ、お別れの時間かな。」
その言葉を受けて、太郎はルカを見上げた。
そして、顔をこわばらせた。
まず、太郎の目に入ったものは、木槌だった。
それも、頭の部位が人の頭ほどある、冗談のような木槌だった。
「えっ……ちょっ……ルカさん?……なにをする気なんですかね……?」
太郎は青くなって、ルカに尋ねた。
ルカは、当たり前のように答えた。
「この場面でやることなんて、ここでの記憶を消すことだよ~」
「え?記憶を消す?ちょっと?」
太郎は、頭で考えるよりも早く、四つん這いになった。
それから、ルカに背を向けながら、少しでも遠ざかろうとした。
太郎がどれだけ進んでいるつもりなのかはわからない。
しかし、ルカとの距離は開かない。
太郎は、その場で手足を動かしてバタバタしているだけだった。
太郎の目の前が暗くなる。
太郎の背後にはルカが立っていた。
太郎は、逃げることに必死で、その表情を見ることはできない。
そして、木槌が振り下ろされる。
「それじゃあ、良い異世界生活を!」
太郎の後頭部に木槌が当たる。
太郎が光の粒になって周囲に散らばった。
その中で、白く輝く光の球だけが残っており、浮かび上がった。
ルカは、光の球に両手を伸ばして、手元に収めた。
「うん、これだけは返してもらわないとね。」
そして、太郎の残滓が見る影もなくなると、ルカもまたその場から姿を消した。




