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失恋した女 その1

 この町は小さい。それでも、それなりには暮らしていける町だった。


 所謂、揺り籠から墓場までの一生を送ることができるのである。


 産婦人科があって幼稚園があって小中高と学校がある。


 高卒にはなるけど、成人後は役場や商店で働いてもいいし、海に面しているから漁師にだってなれる。


 そして、小さいながらもホテルもあるから、そこで結婚式を上げられる。


 年老いて病気になれば取り敢えずの病院だってある。


 そして、最後に死んでしまっても葬儀屋も火葬場だってちゃんとあるのだった。


 娯楽は全くないつまらない町だけど、こうして暮らしていく分には全く問題のない所なのだった。


「…あぁ、恋したいなぁ」


 そんな町の片隅にある四畳半の安アパートの二階。その窓辺に膝をつき、ため息混じりにそう零したのは、この物語の主人公である僕、あゆみ 申太郎しんたろうだった。


 今年二十五になる僕は、自分で言うのも恥ずかしいがとにかく恋多き青年だった。


 将来の伴侶となる素敵な人と出会いたい。そして、この小さな町でずっと一緒に暮らしたい。


 そんな淡い思いを抱きながら、この町の役場でほそぼそと働いている。


 約場という仕事柄、この町で暮らすべく婚姻届を出してくる若い男女を僕は何度も見てきた。


 その度に僕はため息をつき、いつか僕も素敵な嫁さんが欲しいなと思うのである。


 そして、そんな僕には一つの特徴があった。


 それは、僕はこの町から今まで一度も出たことがないということである…。






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