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9.クロスは園内の動物を蹂躙虐殺する

「クロス?どうして『宇宙戦隊ギガントジャスティス』の決めポーズを取っているの?」


無知の少女からすれば、瞬きした間に異様な音を聞いても攻防があったことなど連想しようが無い。

一方、クロスも自分の性格が表れている答えで返した。


「虫が飛んできたので払おうとしたのですが、つい(りき)み過ぎました。もし園内の見世物だったら後で怒られるかもしれませんね」


「そうなったら一緒に謝ろ?リールね、保護者(ほごしゃあ)だから礼儀正しくごめんないできるよ」


「その時は同行お願い致しますね。それより早く追いかけっこを始めましょうか。あまり遅くなるとお腹が減って動けなくなりますよ」


「あぁ、そうだった!それじゃあスタートしよ!スタートスタぁートぉ!」


リールは自分から開始の合図を連呼しながら、すぐさま当てもなく走り出した。

傍から見れば子どもが急に駆け出して迷子になるパターンだろう。

だがクロスは視線を外した後もリールの姿を完璧に視認していて、どこへ行こうとも少女の所在地を把握できていた。


「千里眼は問題無く機能していますね。能力妨害が皆無なのは驚きです。それほど弱いつもりは無いのですが、甘く見積もられているのでしょうか」


クロスは自分の価値を(かえり)みて、考える仕草を取りながら小さく唸る。

明らかに緊急時に相応しくない間抜けな反応なのだが、意図的に隙を作って攻撃を誘っているようにも見える。

どのような意図があるにしても、仕留められる機会があれば見逃さないことが重要だ。

そして敵は彼女を徹底的に排除したいため、急いで攻勢へ動き出す。

手始めに認識不可能のレーザー光線を発射させてクロスの脳天に直撃させるものの、ダメージを受けた様子は皆無だった。


「ふむ、知らない間に攻撃されたみたいですね。このまま棒立ちで的になるのは……私の趣味ではありませんので撃退しましょうか」


彼女は腰に差していた鞘から、ゆっくりと丁寧な動作で真紅の長刀を引き抜く。

その戦闘態勢へ入る僅かな間、レーザー光線を撃った敵の1人が茂みの中で流血しながら倒れてしまう。

出血箇所は頭部で、なぜか真っすぐに貫通した跡が残っている。

それは偶然にも先ほどクロスに直撃した箇所と同じであって、異変に見舞われたとしか思えない状態を迎えていた。

間も無くして暗殺者達は反撃されたことを理解し、通信を取り合った。


『おいおいおい、どういうことだ?先走って射撃した奴のバイタルが前触れなく途絶えたぞ。さっきの攻撃に対してターゲットは察知できてないはずだ』


『アレに反撃できるとなれば自動反射の類だろうな。マジックアイテムで園内の生物を洗脳して、ターゲットに襲わせろ。そうすれば反射の利便性は(つい)えるし、あっちの手札を探れる』


『組織が用意してくれた兵器をフル活用か。これでアイテム頼りの奴らだと上に思われたら、なんだか惜しい気がしてくるな』


『ははっ、安心しろ。クロスを始末すれば、それだけでも上は満場一致で最高評価を下してくれるさ』


『あっはははは、呑気な奴め』


暗殺者は愉快な口ぶりで雑談しながら、対象を洗脳するマジックアイテムを起動させる。

その効力は絶大であって、園内に存在する大半の生物が一斉にコントロールされていた。

当然それは客も対象に含まれているため、敵には一欠片の情けも無く、遠慮という言葉をかなぐり捨てた実行力だと言える。

周りを巻き込んでも一切気に留めない様子からして、とにかくクロスさえ殺せば円満解決になるという認識なのだろう。

まさしく極悪人らしい冷徹な価値観で行動しているわけだが、それ以上に問題なのは彼女が大胆かつ無慈悲なことだった。


「リールったら、追いかけっこを忘れて動物を見てますね」


一応クロスも洗脳の対象にされていたが、影響を受けた素振りすら見せず効力を()()けている。

更に涼しい顔で長刀を素早く振るい、向かって来る相手全員を雑草の如く切り捨てていた。


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