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5.彼女達は願望と欲望を書き出して行動方針を決める

「ねぇクロス~。リールね、何か心に残るプレゼントが欲しいよ~」


リビングルームのソファの上でリールは寝転がる。

それは一方的に甘える仕草である共に、おねだりを強調したアピール方法だ。

しかし、隣に座っているクロスはリールの行動に目も暮れず、ホログラムコンピューターというプラズマ機器を操作しながら応えた。


「いいですよ。けれど、何かとは何ですか?具体的に言ってくれれば望む物を買い与えられますよ」


「朝に見た『宇宙戦隊ギガントジャスティス』の超新星ロボットでも?」


「本当に欲しいなら買いますが、あれは惑星サイズだったので保管スペースがありませんね。それでリールは何が欲しかったのですか?」


「うーんとね、リールの部屋に飾るものかな。あとね、いっぱい楽しい事とか!」


リールはプレゼント要望に加え、楽しい体験することの両方を要求しながらクロスに迫った。

少なくともクロスはもっと単純な答えが返ってくると思っていたらしく、つい作業の手が止まる。

そして片手間では解決できない難問だと認識したようだ。

彼女は会話に専念し、姿勢を正しながらリールの方へ向いて真面目に答えた。


「ふむ、抽象的ですね。それならば旅行してお土産を買うというのが最適解でしょうか」


リールの幼稚な性格に関わらず、幼子相手に建設的かつ論理的な話し合いは難しいだろう。

実際リールは自分の期待に応えてくれることだけを望んでいるので、大して思案せず彼女の意見を支持した。


「旅行!すっごく良いね、どこ行くの!?そこにお城はある!?おいしいスぅイーツは!?」


「それは分かりませんね。でも、分からない方が楽しいですよ。心躍ること、落胆すること。その両方を楽しめれば旅行は絶対に嬉しい思い出になるでしょう?」


「リールね、それ知ってる!思い出はぷらいすす(・・・・・)?ってやつでしょ!それじゃあリールね、やりたいことリストを書くね!クロスも書いて!書き出すことが大事だって『銀河学校の宇宙生徒会改革』で言ってたよ!」


「次から次へと思いつくことが沢山あって賑やかですね」


クロスは苦笑に似た反応を示すものの、リールのお願いに対して好意的に付き合った。

そして彼女は紙とペンを用意したのだが、リストを書き始める前にリールは思い出したかのように叫ぶ。


「大変!リールね、まだ文字が書けない!読む事はできるんだけど、書くのは難しいの」


「では、やりたいことリストに文字が書けるようになると書いておきましょうか」


「それって、やりたいことなの?なんだか目標みたいに聞こえる~」


「同じようなものです。とりあえず思いついたことを全部書き出して、それから内容を選び抜くのが利口な手法ですよ」


「やりたいことを全部言って良いの!?つまり、それってクロスがリールのお願いを全部叶えてくれるんだよね!?それじゃあリールはね~……」


クロスは話を進めるために言っただけなのだが、リールの認識の方向性が少々ズレていた。

それでも話し合いが進むなら良いと彼女は思ったものの、それからリールが発する提案は予想を覆すほど膨大の上に幅広かった。

それは食器の用意を忘れないという日常における些細な事から、宇宙を平和にするという人生をかけて成し遂げる壮大な目的まで。

冷静に考えるまでも無くリールが述べた目的は全て支離滅裂であり、手段や過程を無視した空論だ。

しかし、その楽しそうに語る様子からクロスは少女の心情を理解してみせた。


「リールはお話するのが好きなのですね」


「そうだけど違うよ!リールはね、クロスとお話するのが好きなの。それにさっき言ったやりたい事も、全部はクロスと一緒に楽しみたいから!んぇへへ~」


にんまりと笑う。

そこに嘘偽りは気配は感じられず、無邪気に本心を告白しているのだと伝わってくる。

だが、同時にクロスは不思議な感覚を抱いた。


「私のことを()いてくれるのは嬉しい話ですが、そこまで好意的な理由は一体何でしょうか。まだ知り合ってから十日も経っておりませんよ」


「ふふ~ん。リールね、『宇宙恋愛レボリューションズ』を見たから、このドキドキした気持ちを理解しているよ。リールはクロスに一目惚れしたの!それにクロスもリールに一目惚れしているでしょ?」


「そうー……でしたか?」


「そうでしょ!だってクロスはリールのことを見るなり、すっごい勢いで飛び掛かって連れて帰るくらいだもん!」


まるで拉致されたように聞こえてしまう発言だ。

一応、少女の捉え方はあながち間違いでは無い。

ただリールの認識は正確な情報でも無いため、クロスは一瞬目を丸くして訂正した。


「誤解がありますね。私は貴女を即座に殺そうとして、あっさり返り討ちにされただです。とは言え、リールの魅力に惹かれて連れ帰ったのは事実ですね」


「そうでしょ~?あっ、そういえば旅行に行くなら買い物以外もやりたいかな!例えば人助けしたい!『宇宙ヒーローのエターナルラブメモリー』ってドラマみたいに!ついでに殺人事件が起きたらリールが推理して……それで友達を作りたいな~」


「リールは自由奔放ですね。元気と意欲が有り余っているのは良い事です。ックフフフ」


そう言いながらクロスは微笑み、自分のやりたいことリストに『刺激的な日々を!』と綺麗な字で書き綴った。


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