『一章 その小女、魔界から』
アルディン王国。世界最古の国で三千年の歴史を持つ。
此処アルディンでは優秀な魔法師を何人も輩出している魔法学校がある。『オルテンシア魔法学園』は九百年前に創立し、勇者伝説に出てくる伝説の魔法師、アリスティア・オルテンシアによって作られた全寮制の学園である。
これは、オルテンシア魔法学園に入学する少女達のお話。
「嫌だぁぁぁ!」
「もー!決まった事なんだから諦めて下さい!ってか離れて!」
「嫌だ嫌だ嫌だ〜!ロディが人間界に行くなんて嫌だぁ!」
「そんな事言われたって、前までは師匠も乗り気だったじゃないですか!」
「そうだけど、前は前、今は今なのぉ〜!」
「今年で何歳なんですかっ!いい大人なんだから泣きじゃくるのも程々にしてよ!」
「まだ子供だもん!ピチピチの2959歳だもん!」
「十分大人ですよ。と言うか転移魔法陣の時間きちゃうので私はもう行きますからね!」
「本当にいっちゃうの?ローデリア…。」
「私だってお友達が欲しいですし、もっと勉強したいんです!」
「でも、古代魔法やロストマジックまで覚えておいて今更学ぶこと無いじゃない…。」
「うっ…で、でも!実践とかそう言うのはまだなので!」
「う〜…。わかったよぉ。でも、お手紙は毎日出してね、マテリアル通信でもいいから!」
「分かりました。じゃぁ、そろそろ行きますね。ちゃんとご飯食べて寝て下さいね!」
「はーい。…行ってらっしゃい、ローデリア。」
「行ってきます。アリスティア様!」
彼女の名前はローデリア・ダッチェス。一六歳。アリスティアの一番弟子で魔族。ピンク色の髪の毛を二つにくくっている。両親は幼少の頃に亡くし、行く宛のなかった彼女をアリスティアが拾い育てた。彼女のポテンシャルは凄かった。魔力量も多く頭も良いので、教えた事はどんどん覚えていった。古代魔法やロストマジックは現代の人間や魔族などでも使える者はほとんど居ない。そんな彼女も魔法学園に入学する歳になり、独り立ちをする時期。過保護なアリスティアは最初は賛成していたものの入学の時期が迫るにつれて、反対の意を唱えだした。そんな、アリスティアの反対を押し切ってローデリアは人間界の王都へやってきた。
「わぁ!此処が人間界、此処が王都!!なんて綺麗な所なの!」
魔界では見ることの無い青い空、太陽。いつも見る景色は薄暗く何処か閑散としていた。だがしかし、人間界の人達は活気に満ちて凄く明るい。街全体が賑やかだと感じる。細かく見て回りたいが今日は入学式。時間もないので珍しいモノに目を奪われながら、オルテンシア魔法学園へ向っていた。