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アドレーヌの町3 成長

「ああ、重たいのにいつもありがとうね」

腰が折りながら杖を着いたおばあちゃんが私の後ろを少しずつ歩く。


「大丈夫ですよ。

これでしばらくは、遠い野菜屋に行かなくてすみますね」


私は、かぼっちゃみたいな野菜や大根、じゃがいもなどの重たい野菜を沢山入れた籠を背負って歩く。


おばあちゃんは

「孫たちは野菜嫌いだから私が沢山作って食べさせないとね」

なんて言いながら嬉しそうだ。


 どうしてこうなったかというと数日前、ソフィアに家まで送られた夜ご飯の時のこと。

私は、真面目にネオさんたちにニィーホンに行けないかと相談したのだが、冗談を言ったのだと思われて笑われた。

「ははは、なんだお前も子供なんだな。

俺も伝説の島へ行きたいと思ったことがある。

まぁ、年齢もそうだが、レベルが高くても行けない伝説の場所なんだ。

遠くなら誰でも見れるのにな」


「見れるのにたどり着けないんですか?」


「ああ、上陸しようとも霧に包まれて元の場所に戻ってるだとよ。

まぁ、ケイお前はまずは成長しないとな」


「どうしたらレベルを上げられるですか?」


ネオは、剃ったひげをさすりながら考える。


「うーん、どうしたもんかな。

普通は、年齢に生じて上がっていくからな。

こればかりは、自然に待つしかないんじゃないか」


そんなのは嫌だ。

そんなことしてたらいつになったら伝説の島に行けるのだろうか?

いや、絶対無理。

その翌日、一日中考えてみた。

その結果は、経験することで成長できるのではと考えた。

さっそく家の手伝いから始める。

ミナさんにお願いして皿洗いから掃除などを始める。


 数日して最初の魔法をミナさんに教えてもらうことになった。

それは生き物の時間を保つ『スレピト』という魔法だ。

この世界では、生き物が死ぬと粒子になり命の大樹へと次の生命に生まれ変わるために還るのだという。


「見ててごらん」

と言い、庭に咲く黄色い花をつむ。

しばらくすると緑の粒子になり消えていった。

次にもう一つの花には『スレピト』を使う。

すると消えないでつんだままの花があった。


「この魔法は、みんな最初に覚えて使えるはず。

ほらやってごらんよ」


私は、緊張しながら黄色い花をつむ。

そしてすぐに『スレピト』を使う。

すると消えずに花の形をしばらく保っていたもののすぐに緑の粒子になって消えていった。


「なんで!?」


驚いている私の頭をよしよしとミナが撫でながら言うには、魔力の力によって保つ時間が違うらしい。


「同じ食べ物でも『スレピト』が強いと値段が高いのよ。

季節が変わっても同じものが食べれるのは、ありがたいけど。

まぁ、私は旬のものをそのときに食べたいし、新鮮なものを食べれる方は好きだわ」


きっと『スレピト』が強いものは、私達の世界の冷凍食品みたいなものなのかもしれない。

私も食べ物価値観は、ミナと同じで嬉しかった。

その後、タグを表示させると魔力が1つ上がっていたことを喜んだ。


 また違う日には、ネオさんに薪割りを教わったと言っても割るのはネオさんで私は薪を拾うだけだが。

ネオさんは、最初は嬉しそうにしていたのに日に日に複雑そうな顔をしていた。

なにか悩み事でもあるのだろうかと聞くと


「ケイは、無理して手伝いをしてはないか?

俺たちに気をつかってやってるんじゃ、、」


私はレベル上げのことを話してみた。

すると納得したようで満足気な顔をすると急に思いつめたようなように言う。


「ケイ、お前はもう家族だ。

敬語はやめろ、いいな」


そういうと薪割りを続け始める。

なんだがネオさんの顔が赤くなってる様に感じて少し私も照れくさくなった。

この世界での初めての家族ができた。



 そんなこんなで家の手伝いから数カ月後には町の手伝いもするようになっていた。


「おばあちゃん、家着きましたよ」


おばあちゃんの家がある南方面は、団地だ。

彼女が住む部屋は、5階にある。

もう少し低い部屋にはならないのかと聞いたが、家賃が少ないのは高い場所だから仕方ないのだという。


「それに階段は健康にいいのよ」

と微笑む。


「ほら」

と彼女がマンション前の公園を指差す。


その公園には、私より幼い子どもたちが追いかけっこしたり滑り台で遊んだりしている。


「この高いところから子どもたちを見るのが好きなの。

はい、お礼ね

いつもありがとうね」


私は、おばあちゃんからお駄賃を貰い帰る。

歩きながらタグの表示を見ると

【魔力】5

【防御力】10

【攻撃力】1

【体力HP】15

【レベル】6

となっている。

数字としてはまだまだだが経験は身になることが分かったのが大収穫だ。

だが、そこで問題がある。

圧倒的に攻撃力の数値が上がらない。

やはり、戦闘の経験がないとだめなのか。

しかし、そこには意外な壁が立ちふさがっていた。


 ある日のことだ。

医者のハインさんに薬草が足りなくなったので、北門の外の側にある薬草畑で多く取ってきてほしいとの手伝いで北門を通ろうとした時。


北門の兵士の茶髪で長身のガタイが良い男のカイザムさんと赤髪で少しカイザムさんより背が低く、髪を1つ結びに歩んでいるレギーラさんに止めたれた。


私のことは、この町の兵士の人たちはみんな知っている。

なにせネオさんは兵士長なんだから。

町で手伝うようになってから町の見回りをしている兵士の人や門番の人達からよく声をかけられるようになった。


一部の人は明らかにネオさんに評価を上げるように言ってくれないかなんて言う人や子供扱いする人もいたけど、カイザムさんとレギーラさんはそんなことをしなかった。


以前にその理由を聞くと、ふたりして


『尊敬するネオさんは、そんなことしない』と声を揃えて言っていたのを思い出した。




 「さーて、ケイはここまでだ」


「カイザムさん、なんで?

東門以外なら私と同じような歳の子でも外へ行ってるのを見ましたよ」


「カイザム先輩。

こういうのは隠さないでちゃんと本人に言ったほうが本人にもいいんですよ」

とレギーラが私と目が合うように腰を低くして教えてくれる。


「ケイ、なんかおかしいなと思うことなかったか?

今までの手伝いで門外に出るような手伝いを頼まれたことなかったろ。

中央南にある治安が少し悪いギルド辺りの道がなぜかいつも通れなかったりとか。」


「あっ」

そう言われるといつも町の手伝いは見回りの兵士たちがいたような。


「ネオさんに言われてんだよ。

ケイに危ない目にあわないようにってな」


そんなそしたら攻撃力を上げるために門外に出て魔物と戦ってみるという作戦ができなくなると落ち込んでいるとカイザムがキツく言う。


「まさか、魔物と戦うつもりでいたんじゃないだろうな」

私はギグっとする。


「たまに子供が面白がって魔物と戦ってみたいと思うやつがいるんだ。

強くなりたいってな。

しかし、それは弱い者がやるやり方だ。

命を大切にしろ。

死んだら終わりなんだ。

それを知ることが強くなるために第一歩だ」


カイザムの言うとおりだ。

守られていることさえも気がつかないで魔物と戦おうと思うなんて愚かだ。

きっと今の私が弱い魔物と戦っても逃げられるもできずに死ぬだろう。


「カイザムさん、レギーラさんありがとうございました」


私は、急に恥ずかしくなって走る。


「落ち込むなよー。

このことはネオさんには黙っててやるからなー」


後ろでレギーラさんの声がした。

私は、結局薬屋さんで手伝いで貯めたお金を使ってできるだけ薬草を買ってハインさんに渡した。


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