私達の存在の理由は
冷たく暗い廊下を、歩いていた。
リビングに向かっている私は、そこに無いはずの物を見て、足をとめた。
本の様な物が、うっすらと光を放っていたからだ。
「なんで、こんな物が・・・」
少し冷たくなっている本を、触ると、光がゆっくり文字に変化した。その言葉は・・・。
【これまでの行動を記録しますか?】
「え?」
まるで、ゲームの中に居る様な思いに私はなった。
今の私が、ゲームのキャラクターだと言っているかの様に、文字はユラユラと浮かんでいたのだ。
・・・この質問に「はい」と、答えてみようか・・・。
それとも、「いいえ」と答えてみようか・・・。
「セーブしない」
まずは、しない方を選んでみた。別に、ただの「はい」か「いいえ」の事なのだが、いつもと全く違うのだから、警戒してしまうのだ。
【分かりました】
文字が、ゆっくり元の状態に戻った。
また本を触る。
「セーブをする」
その言葉で、何が変わるのだろうか。
【セーブをしました】
やっぱり、言葉は違うな。
「誰がこんなものを、置いたんだ?」
リビングへ、歩きだした。
リビングのドアの前まで来たが、リビングの電気は点いていないようだ。
「誰も、居ないのか?」
ガチャッと、ドアを開ける。
リビングは、誰か一人くらい必ずいるが・・・。
「やはり、誰もいないか。一体どこに居るんだ?」
考えてみるが、分からない。
「あいつらの部屋から魔力を感じなかったから、部屋にもだれもいなかったはずだ」
じゃあ、どこに?
廊下に戻ると、暗い空間ができていた。
「あの中に、皆が?」
あの中に入る前に、玄関のドアノブを回すが・・・。
ガチャ・・・ガチャ・・・。
「やっぱり、開かないか」
行くしかない。私は、走りながら冷たく暗い空間の中へと、入って行った。
「・・・」
同じ場所を、ずっと歩いている気がする。
どこ行けばいいのか全く分からないから、さっきから進んでいる。
トコトコと、歩いているが・・・。どうしてこうなったのだろうか?
「ん? ・・・何か刺さっているな」
そこには、看板が床に刺さっていた。
「何で看板が、こんな所に?」
何か、書いてあるな。
【パンパカパーン!
突然ですが隊長、私はとっても困っているんですよ。
熊さんが、お腹を空かせているからです。餌を求めているからです!
私は、今すぐにでも餌をあげたいと思っているんですけどね・・・。
手が離せないんですよ。理由は、言いません。
言ったら、理由が分かった隊長の驚く顔が見れないので!
残念、残念。
てことで! 隊長、この先にとてもカワイイ熊さんが居るので! ピエロさんが作った、オリジナルの餌をあげてください。
餌を動物達にあげてくれたら、良い物あげますから!ね? ね?
んーじゃっ、お願いします。
・・・、気を付けてください。
今のお腹を空かせているカワイイ熊さんは、なんでも食べるみたいですから】
「・・・?」
いつの間にか餌が足元に置いてある。場所も、変わっていた。
気付かなかった。
「餌は、これか」
少し重い袋の中には、蜂蜜か何かが入っているのだろうか? 少しだけ、蜂蜜の香りがするからだ。
すぐに終わる、そう思っていた。
急いで餌を、皿の中に入れようと走った。
熊がいると言っていたが、どこにもいないぞ?
「あと少しで・・・」
その時だった。
ガリンッと、嫌な音がした。どんどん痛くなる左の腕から、暖かい大量の赤い血が「ドバッ」とあふれていた。
目の前の熊の爪は、赤くなっていた。
急いで、袋の中に入っている熊の餌を、目の前の熊に投げたが・・・。
やはり、ちゃんと皿の中に入れないといけなかったようだ。
熊が、私を噛み殺したのだから・・・。
バットエンドルート
【熊さんの殺戮ショー】