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9話


「ねえ、この間みんなで遊びに行こうって話してたの、これにしない?」


 枚方はそう言ってみんなに花火大会のチラシを見せる。


 この街の大きなイベントで、毎年屋台なども出ているらしいが、人がごった返すので俺はいつも家から見ている。

 決して一緒に行く相手が居なかったわけではない。


「そうだな、俺はいいけど」

「うん、みんなで花火大会。いいね」


 折角だし今年は外で見るのも悪くないと思い、俺は軽く了承した。糸田もそれに続き賛成する。


「やった、じゃあ後で菊間も誘おっか」

「ああ」


「みんなで花火大会ですか? 私も行っちゃダメですか〜?」

「お前まだ居たのか……」


 俊介の名前が出ると、隣に居た水本が話に入って来た。


「別にいいんじゃない?」


 絶対反対すると思っていた枚方は、なぜか簡単に了承した。

 さっき譲って貰ったからとかで恩でも感じているんだろうか……。


「それなら二宮、春ちゃんも誘ってみてよ」

「ああ、誘ってみるつもり。来ないかもしれないけど」

「来るでしょ。【おにぃ】が誘ったら」


 糸田がそう言い、枚方と俊介も笑いながら頷く。


「その呼び方するなよ……。まあとにかく誘ってみるから」


 結局俊介と春を誘って6人で行くことになり、細かい事は日が近付いてからという事になった。

 






「先輩、次シフト入るのいつですか? ちょっと用があるんで教えて欲しいんですけど〜」


 その日の夜、今日登録した水本のメールアドレスから早速メールが届いた。


 用があるなら学校で言えばいいのに。なんて思いながら返信を考える。

 が、どう返そうかつい悩んでしまう。


 そんなに悩むことでもないはずだが、普段メールを送り慣れていない俺からすると、どういう文章を送ればいいのか分からなかった。


 何度も打ち直していると不意に部屋の扉が開き、


「おにぃ、ご飯。さっきから呼んでるんだけど」


 と春に大声で怒られた。

 集中していて聞こえていなかったみたいだ。


「ああ、ごめん。今行く」


 俺はそう言って、


「来週火曜、5時半」


 今打っていた文字をそのまま水本に送ってから階段を下りた。



 

「春、お前花火大会誰かと行く予定ある?」


 階段を下り、夜ご飯を食べていると今日の事を思い出したので春に聞いてみた。


「あったらなんなの?」


 箸を止めて不機嫌そうにこっちを見る春。


「俊介達と行くことになったけど、糸田がお前も来ないか? って」

「……行く」

 

 行くのかよ……

 本当にこいつの考えていることはよく分からない。


「じゃあ、色々決まったらまた言うから」

「……うん」







「二宮先輩」


 火曜日。バイト先のファミレスに着くと、水本が俺を呼ぶ。


「んあ゛」


 声がした方を振り向くと、突然口に何かが突っ込まれた。

 

「菊間先輩に手作りクッキーを差し入れしようと思って、試しに作ってみました。どうですか?」


 水本が上目遣いで聞いて来る。

 

 俺は何が起こったのかイマイチ把握出来ていなかったが、とりあえず口の中の物をボリボリと味わってみた。


「うん、おい、しい、と思うぞ」

「……先輩、照れてるんですか〜?」


 赤くなった俺の顔を覗き込む水本。

 俺は顔を(そむ)けて1度咳払いをする。


「いやでも、これは本当に美味しい。水本料理上手いんだな」

「そんな事ないですよ〜? クッキーって案外簡単ですし。あ、これも食べていいですよ」


 と残りのクッキーを重ねて俺の口へ放り込む水本。

 俺は恥ずかしがりながらも、口を大きくしてそれを食した。


 そんな俺を、笑顔で眺める水本。

 なんだか餌付けされているみたいだ。


 口の中のクッキーを食べ終え、一息ついてから俺は少し気になった事を水本に聞いた。




「水本、お前なんで俊介のこと好きなの?」


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