9話
「ねえ、この間みんなで遊びに行こうって話してたの、これにしない?」
枚方はそう言ってみんなに花火大会のチラシを見せる。
この街の大きなイベントで、毎年屋台なども出ているらしいが、人がごった返すので俺はいつも家から見ている。
決して一緒に行く相手が居なかったわけではない。
「そうだな、俺はいいけど」
「うん、みんなで花火大会。いいね」
折角だし今年は外で見るのも悪くないと思い、俺は軽く了承した。糸田もそれに続き賛成する。
「やった、じゃあ後で菊間も誘おっか」
「ああ」
「みんなで花火大会ですか? 私も行っちゃダメですか〜?」
「お前まだ居たのか……」
俊介の名前が出ると、隣に居た水本が話に入って来た。
「別にいいんじゃない?」
絶対反対すると思っていた枚方は、なぜか簡単に了承した。
さっき譲って貰ったからとかで恩でも感じているんだろうか……。
「それなら二宮、春ちゃんも誘ってみてよ」
「ああ、誘ってみるつもり。来ないかもしれないけど」
「来るでしょ。【おにぃ】が誘ったら」
糸田がそう言い、枚方と俊介も笑いながら頷く。
「その呼び方するなよ……。まあとにかく誘ってみるから」
結局俊介と春を誘って6人で行くことになり、細かい事は日が近付いてからという事になった。
◇
「先輩、次シフト入るのいつですか? ちょっと用があるんで教えて欲しいんですけど〜」
その日の夜、今日登録した水本のメールアドレスから早速メールが届いた。
用があるなら学校で言えばいいのに。なんて思いながら返信を考える。
が、どう返そうかつい悩んでしまう。
そんなに悩むことでもないはずだが、普段メールを送り慣れていない俺からすると、どういう文章を送ればいいのか分からなかった。
何度も打ち直していると不意に部屋の扉が開き、
「おにぃ、ご飯。さっきから呼んでるんだけど」
と春に大声で怒られた。
集中していて聞こえていなかったみたいだ。
「ああ、ごめん。今行く」
俺はそう言って、
「来週火曜、5時半」
今打っていた文字をそのまま水本に送ってから階段を下りた。
「春、お前花火大会誰かと行く予定ある?」
階段を下り、夜ご飯を食べていると今日の事を思い出したので春に聞いてみた。
「あったらなんなの?」
箸を止めて不機嫌そうにこっちを見る春。
「俊介達と行くことになったけど、糸田がお前も来ないか? って」
「……行く」
行くのかよ……
本当にこいつの考えていることはよく分からない。
「じゃあ、色々決まったらまた言うから」
「……うん」
◇
「二宮先輩」
火曜日。バイト先のファミレスに着くと、水本が俺を呼ぶ。
「んあ゛」
声がした方を振り向くと、突然口に何かが突っ込まれた。
「菊間先輩に手作りクッキーを差し入れしようと思って、試しに作ってみました。どうですか?」
水本が上目遣いで聞いて来る。
俺は何が起こったのかイマイチ把握出来ていなかったが、とりあえず口の中の物をボリボリと味わってみた。
「うん、おい、しい、と思うぞ」
「……先輩、照れてるんですか〜?」
赤くなった俺の顔を覗き込む水本。
俺は顔を背けて1度咳払いをする。
「いやでも、これは本当に美味しい。水本料理上手いんだな」
「そんな事ないですよ〜? クッキーって案外簡単ですし。あ、これも食べていいですよ」
と残りのクッキーを重ねて俺の口へ放り込む水本。
俺は恥ずかしがりながらも、口を大きくしてそれを食した。
そんな俺を、笑顔で眺める水本。
なんだか餌付けされているみたいだ。
口の中のクッキーを食べ終え、一息ついてから俺は少し気になった事を水本に聞いた。
「水本、お前なんで俊介のこと好きなの?」




