7話
「終わったー」
教室中がため息に包まれた。
【一学期中間テスト最終日】が無事終わり、あちらこちらから遊びの予定などが聞こえてくる。
3人が家に来てから1週間、みんな中々に勉強を頑張っていたと思う。
といっても、そんなすぐに劇的な頭の改造が行われる訳もなく、
「二宮、全然ダメだった」
「私もだよ……」
とうなだれる枚方と糸田。
「ま、まあ、だいぶ頑張ってたしさ、次また頑張ればいいんじゃないか?……」
「……そうだよね、まあ、次頑張る」
俺は今まで人を慰める経験なんてほとんど無かったので、少しぎこちなくなった。
だが枚方も糸田も、それを気にする様子もなく素直に受け入れてくれたみたいだ。
「俊介は今日部活?」
「ああ、大会近いからな」
「そうか、頑張れよ」
「おう」
テスト終わってすぐなのに大変だな。なんて思いながら俺は教室を後にした。
俊介の結果は分かりきっているし、特には言及しない。
テスト期間が終わり、今日からバイトのシフトが入っているので、一旦家に帰ってからバイト先のファミレスへ行く予定だ。
特にお金の使い道などは無いが、他にやる事もないのでなんとなくバイトをやっている。
「ちょっと、二宮」
階段を下りていると、後ろから声が聞こえる。振り返ると、枚方が慌てて追いかけて来ていた。
「目の前に居たのによくそのまま帰れたね……」
「え?」
「一緒に帰ろうって言ってるのよ、あやは」
「い、いやそんな……杏美!何言ってくれてんの!」
顔を赤くして小声で糸田に怒る枚方。
「ああ、糸田も居たのか。見えなかっ」
「ん? 何か言った?」
「なんでもないです、すみません」
拳をグリグリと背中に押し付けられ、平和主義の俺はすぐに謝った。決して逃げたのではない。
「じゃあ、行こっか」
下駄箱を通り、正門から出る。
女子2人と帰宅なんてもちろん初めての経験で、少し緊張していた。あれ、似たようなこと前にもあったな。
「ねえ二宮、テストも終わったしさ、今度どっか遊びに行こうよ」
「え……」
今のは2人で、というニュアンスに聞こえたが気のせいだろうか。
俺は無意識に糸田のことを見る。
「も、もちろん杏美と。あと菊間も一緒に」
そうだよな……何を勘違いしていたんだ、俺は。
枚方は、俺の事を友達として見ているだけだ。
「……ああ、でも俊介は大会が終わるまで忙しいかもな」
「ならその後だね」
「どこ行く? あや」
「杏美はどっか行きたいとこないの?」
「んーと……」
◇
「じゃあね杏美、二宮」
「うん、バイバイ」
「二宮なんで会釈してんの」
「えっと、なんとなく……」
手を振っていた糸田に冷静に突っ込まれ、少し恥ずかしくなった。
そういえば、糸田と2人きりになるのはこれが初めてかもしれない。
俺は少し気まずいが、糸田はそんな事ないらしく平然としていた。
こういう所が陰キャの俺と陽キャの違いなんだろうな、と改めて感じさせられる。
「春ちゃんは元気?」
「あ、ああ。また糸田に会いたいって言ってた」
「そっか」
下を向いていて顔が見えないが、明らかにに照れくさそうな糸田。よっぽど嬉しいのだろう。
「でさ、春ちゃんって中3でしょ? 高校とかもう決まってるの?」
「さあ……」
高校について何度か親と話し合っているところを見たことはあるが、具体的な事は全く知らなかった。
「あんた本当にお兄ちゃんなの?」
「一応これでも10年以上お兄ちゃんやってます……」
「はぁ。うちの高校、来ないかな〜」
呆れ顔になる糸田だったが、そんな期待を口にしていた。
「じゃあ、私こっちだから」
「おう、……」
手を振ってみた。
が、小っ恥ずかしくて中途半端になってしまう。
糸田はそれを見て鼻で笑うも、気を使ってくれたのか何も言わずにそのまま去って行った。




