6話
枚方の持って来たお菓子を食べながら、春も含めた5人で色んな話をする。
正直、今まではこういう人種との話について行けないと思っていた。が、意外と楽しんでいる自分がいた。
もうこいつらと友達……なのかな。
「ねえ春ちゃん、二宮って小さい時もこんなだったの?」
と糸田が聞く。いつの間にか俺と俊介の、昔の話になっていた様だ。
こんなってどんなだよ……
「そうですね〜。メガネはかけてなかったけど、そんな昔から変わった所もないですかね」
「だな、優ちゃん昔からこんな感じだった」
だからどんなだよ……
「なんか小さい二宮、想像できそう」
ふふっと笑う糸田。
バカにしているみたいな顔だ。
「私も小さい杏美、想像出来るよ〜? このまんまでしょ」
「……で、2人は初恋いつ頃?」
「酷いな〜杏美は。無視?」
「あや、うるさい」
糸田は、枚方のイジりを無かったことにして聞いて来た。
これは恋バナと言うやつだろう。
いつか来るんだろうとは思っていたが……遂に来てしまったか。
俺は背筋を伸ばして、どう迎撃するかを考えた。
「いつだろ、忘れたなー」
慣れた返しをする俊介。
そうか、別に昔の事だし、どうとでも言えるんだ。と俊介の答えに学ばされる。
どうせみんな俺の恋バナなんて興味無いだろうし、俺も言いたくない。
「俺も、忘れた」
「嘘でしょ〜、優ちゃん絶対あの遊園地の時の子だって」
「……だから違うって何回も言ってるだろ?」
……恨む。一生絶対恨み続けてやる。
「なにそれ、その話聞かせてよ」
俺が弁解するも、糸田は既に興味津々だ。
「おにぃ。ほんとにあの時の子、好きなの?」
春は俺の事を睨みつけている。
本当に余計なことをしてくれたな、と俺は俊介を睨みつける。
「あの時の子って?」
◇
「優ちゃーん」
「優太、どこ行ったんだ……」
まだ幼かった頃、俺と俊介の家族で遊園地に行き、そこで俺は迷子になった。
……きっとボケっとしていたんだろう。俊介によると俺はいつもボケっとしていたらしいが。
確か俺はみんなとはぐれ、泣きそうになりながら園内をさまよっていたと思う。
そんな時、道の隅にうずくまって泣いている女の子を見つける。
「お前、迷子なの?」
「うん……あなたお名前は?」
「優太、二宮優太。ほら、家族、探しに行こう」
……一目惚れだった。
泣いていた彼女のために、自分のことなんて忘れ、必死に彼女の家族を探した。
最終的に迷子センターの様な場所に辿り着き、そこに2人共の家族がいた。
あの時の安堵感は、今でもでも鮮明に覚えている。
俺もその子も、泣き崩れてしまった。
だがその時、彼女の名前も聞かずに別れてしまい、後でもの凄く後悔することになる。
今でも好きかと言われれば、よく分からない。ずいぶんと昔のことで、もう顔も思い出せないし。
◇
「へえ〜」
似たような話が、俊介視点で語られた。
「おにぃ、ほんとのほんとに好きなの?」
近いって……
「だーかーらー、何でもないって言ってるだろ?」
今となっては彼女の事を探し出すなんて不可能なんだし、俺も探し出そうなんて思っていない。
だからこいつらに話した所で、俺が恥ずかしいだけだ。
「ん、あやどうした? 顔真っ赤だけど」
「え? ああ……なんでもない、ちょっとトイレ借りるね二宮」
「……玄関の横にあるから」
「うん、ありがと」
慌てて出ていった枚方。
みんな不思議に思いつつも、俺への追及を優先し、俺もそれをかわすのに必死だった。
◇
「じゃあ、お邪魔しました〜」
ふぅ。みんなを見送って一息付くと、空はもう暗くなっていた。
あれからほとんど勉強出来なかったな……
でも、本当に楽しかった。
「おにぃ、女子にデレデレし過ぎ」
「なっ……」
「あの枚方って人、ほんとに……」
「なに?」
「なんでもない」
なんで怒ってるんだよ……
だけど、春も糸田と仲良くなれたみたいだし、良かった。
俺はなんとなく無意識に春の頭を撫でた。
サラサラの髪が揺れる。
「……おにぃのバカ、キモい」
そうは言うものの、俺の手を振りほどこうとはしなかった。




