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5話


 階段を上って正面にある俺の部屋に入った4人は、部屋の机に2人ずつ向かい合って座る。


 正直俊介の隣が1番落ち着くのだが、なぜかあいつは迷うことなく向かい側へ行き、俺の隣には枚方(ひらかた)が座った。


「へえ、結構片付いてる。なんか男子の部屋っぽくないね」


 やっぱり陽キャ様は異性の家に行くなんてよくある事なんだろう。枚方の慣れている感が凄い。


 糸田は糸田で特にリアクションせず部屋を見回している。

 なにをそんなにじっくり見ているのかは分からないが。


「俺達ももう2年なんだし、勉強頑張らないとな」


 俊介が気合いを入れる。


「そうだね、進路のこともあるし」

「あや、進路決まってるの?」

「ううん、全然決まってない……」

「そっか、私も先のことは全然なんだよね……。2人は?」


 糸田に聞かれ、俺と俊介は首を横に振った。

 

「周りに就職するって奴らもいるけど、偉いよあいつらは。大人になるの怖いとか、ねえのかな」


 俊介の言葉に少し共感させられた。

 ニュースで、ブラック企業だのなんだのと社会の厳しい面が取り上げられる度に、そこへ足を踏み出す勇気が出なくなる。


 うちの高校は進学校では無いので、就職するという生徒も少なくないが、同時になんとなく大学へ進学するという生徒も少なくない。




「ま、とりあえず優太先生に勉強を教えて貰うとしますか」


 その人任せすぎる所は何とかならないのだろうか、と俺が呆れていると、


「おにぃ、私にも教えて〜」


 と不意に耳横で声がする。

 気付いたら、春が俺と枚方の間に割り込んで座っていた。


 いつ来たんだ……


「部屋行ってろよ。お前にはいつでも教えてあげれるだろ?」

「いいじゃん二宮。春ちゃんだっけ? 一緒にやろうよ」


 なぜか糸田は春に対して好意的らしい。

 身長が近いとかで親近感でも湧いているんだろうか……


「春ちゃんも1人は寂しいだろうしさ、許してやりなよ」


 俊介にまでそう言われ、流石に俺は引き下がるしか無かった。


「ありがとうございます〜」


 春はパッと顔を明るくして、持って来た教材を広げだした。


 俺は人に勉強を教えるのが嫌いではない。それに割と上手い方だ、と自分では思っている。


 よしっ、と1度気合いを入れた。







「だからそこはさ、こう、展開すると……」

「あー、そっか」







「ちょい休憩しよう、流石に疲れた……」

「え〜、俺はまだ出来るよ優ちゃん、もうちょい頑張ろ?」

「なんで俺が俊介に励まされてんだよ……。お前が1番足引っ張ってたんだからな?」

「そうなのか? すまんすまん」


 あれから何時間かずっと座りっぱなしだったのに、俊介は疲れた様子ひとつ見せない。

 体力だけは相変わらず化け物級だ。


 一方、枚方と糸田はバカではあったが、幸い俊介程ではなかった。

 糸田に関しては、途中から春に勉強教えてくれたりして割と助けられた。


「ありがとな糸田。春の面倒見てくれて」

「本当にありがとうございました〜。おにぃより全然優くて、頼り甲斐のあるお姉ちゃんって感じでした!」


 糸田は、普段同級生から年下のように可愛がられているので、姉という存在には憧れていた。

 

 そんな彼女が【お姉ちゃん】という響きを聞いて、嬉しくないはずがない。彼女は照れくさそうに笑った。


 ……てか俺も十分優しく教えてただろ……




「私、お土産にお菓子持ってきたんだけど、休憩するならみんなで食べる? 来た時に渡すの忘れてた」


 枚方が紙袋を宙に上げてみんなに見せる。


「あや、グッジョブ」


 糸田は親指を突き出した。


「いいね、じゃあ一旦片付けて休憩にしよう」


 まだ出来ると言っていた俊介も、食べ物となると勉強は二の次らしい。


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