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序話 魔王軍の襲来

 とある国の辺境、人口数十人の小さな村。

 村人たちは今日も畑を耕し、井戸端会議に勤しみ、子どもたちは駆け回っている。

しかし、彼らはどこかそわそわしていた。何かがやってくる予感がしているのか・・・そんな時だった。


 カンカンカンカンカンカンカンカンカン!

小さな村に鐘が鳴り響く。

「魔王軍だ!魔王軍が来たぞおおおおお!!!」

見張りの青年が走ってやってくる。

瞬間、村人たちは慌ただしく動き始める。

広場を駆け回っていた子どもたちも

井戸端会議に勤しむお母さんたちも

畑を耕す男たちも

全員が、やることすべてを止め、一心不乱に走り始める。


 向かう先はそれぞれの自宅。

手荷物はほどほどに、財布や水筒を詰め込み家を出る。そして村人全員が同じ方向へ走る。

 そう・・・全員が、先ほど「()()()()()()()()()()()()()()」へ。

「来たぞおおおおお!!!魔王軍が!今月も!来てくれたぞおおおおお!!!」

村人全員は全力で走る。笑顔で、楽しみだったと言わんばかりの顔で!彼らは、待っていたのだ。魔王軍の到来を!


「お前らぁ!準備出来てるかぁ!」

「オオオオオオオオオオ!!!!!」

「よぅし!オーク班は屋台の準備!ハーピー班は花吹雪!スケルトン班はサーカスの小道具と魔獣たちのウォーミングアップだ!」

「了解であります!」

 魔王軍はキビキビと準備を始める。

指示を出したのは獅子の頭を持つ獣人。筋骨隆々な身体と腰に挿した剣、そして輝く鬣はまさに魔王軍の幹部。逆らえそうな者は誰一人いない。そんな彼に近づく小さな影。


「レオンさん、準備は順調ですかな?」

「はっ!全軍動いたところであります!」

「そうですか、巡業にも皆さん慣れてきたということですね。素晴らしい理解力です。」

「いえいえ!腐っていた我々を導いてくださったのは貴方様でございましょう!貴方がいなければ、我々はただ人々と争うことしか出来なかった・・・!」

「謙遜はいけませんよ。見た目だけでも人々から恐れられる皆さんが、こうやって受け入れられている・・・それは全て皆さんの努力があってこそです。」

「はっ!そう言っていただけるだけでも非常にありがたいことであります!」

「ふふふ・・・レオンさんの真摯な態度は素晴らしいですね。ですが、もう少し喜んでもいいのですよ。」


 影は前に進む。獅子は咆哮を上げ、「上司」の到着を伝える。魔王軍は10秒も経たずに集まり一斉に跪き、そして・・・

「おはようございます!和泉様!本日もよろしくお願いします!」

 一言一句間違えず、その場の魔王軍全員がそう言った。和泉さんと呼ばれた男性はにこやかに微笑むと

「はい、本日もよろしくお願いします。人々との共存のためにも、皆さん全力でやっていきましょうね。」

「ハイッ!」


 再び獅子の咆哮が響き、跪く軍勢は作業に戻る。彼らは決して獅子男に跪いていたのではない。その前に立つ、獅子の半分ほどのサイズしかない、初老とも言えない人間の男性に跪いていたのだ。

 服は縦縞のスーツ、灰色のハットをかぶり、靴は革でできている。その姿はまさしく「サラリーマン」であり、魔物ではない。

 しかし、この世界で今魔王軍を仕切るのは他でもないこの人である。


 辺境の村人たちが到着した時には準備は全て整っていた。

オークたちは次々と肉串を焼き上げ並べる。

ハーピーたちはラッパを吹きながら風を巻き上げ花吹雪を散らす。

スライムたちのトランポリンでは子どもたちが楽しそうに飛び跳ね、ヒッポグリフの空中メリーゴーランドには若いカップルがはしゃぎながら風を受けている。

スケルトンと魔獣のサーカス団は骨を巧みに操り、魔獣の火の輪を披露する。

人々は湧き立ち笑顔で楽しんでいた。


 それを遠くから眺める和泉さん。そこに村の長老がやってくる。

「和泉さん、また来てくださりありがとうございます・・・おかげで皆楽しんでおります。」

深々と頭を下げる長老に対し

「いえいえ、こちらこそご連絡くださりありがとうございます。魔王軍はまだまだ受け入れられぬ身です。こうやって人々に呼ばれることだけでも非常にありがたいのです。」

と更に頭を下げる。

「いやいや!頭をあげてくださいな!この村は貧しく人数も少ない。それ故に作れる作物も限界があります。大きな街に行っても安い作物に需要を奪われてしまうのです。それを高値で買い取り、こうやって巡業にまで来てくれるなんて・・・。」

「いいのですよ、お互い助け合いというものです。皆さんが笑顔になるように、私たちも巡業が増えれば笑顔でいられる・・・。共存できるのですから。」

「しかしですなぁ・・・あれほどの軍勢をああも動かせる方となれば、頭も下げたくなるものですよ。流石は『転生者』と思ってしまう。」

「転生ですか・・・懐かしいですね。この地に降り立った日はどうしようかと悩んだものですが・・・世界の役に立てるのは素晴らしいことです。」


 この世界には『転生者』と呼ばれる人々がいる。こことは違う別の世界で一定の功績を収め、その力を振るってもらうために蘇った存在たち・・それが『転生者』である。時に技術をもたらし、時に悪を断罪し、時に王にすらなる『転生者』・・・だが、和泉さんにそんな力はない。


 これは、死んでも蘇る訳でもなく、二刀流で無双する訳でもなく、ゲームの世界に迷い込んでる訳でもなく、最初からレベル999になってたりもしない。

 普通の叔父様サラリーマンが、培ってきた『経験』と『知識』、そしてほんのちょっとの『武道経験』から、人々に悪とされた魔王軍を叩き直し、『一大企業』に変える物語である・・・。

多分続きます・・・うん

更新日は未定だけど・・・

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