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(もう我は嫌だ…殺しはもう嫌だ…)
次期魔王、魔界を抜け出し人間界へと逃げてきた
いわゆる家出。
(水もない…今の我では魔物も倒せん、あぁ…ここで死ぬのもいいかもな…)
※※※※※
「んっ…人間の気配…この光の波動は・・・」
「あーもうなんで俺が水汲みなんかせにゃならんのだ!いっつもメンドイ仕事押し付けやがって!」
(なんだ、人の子か…まだ寝て居よう…力をつけねば…)
※※※※※
「はっ…!」
(マズイ…近づいてくる!動かない…!)
「き、君は…?」
※※※※※
(なんだこの人の子は…我が怖くないのか…)
アランは水を魔王に渡し、今朝に残ったパンを渡した。
「君ってどこから来たの?その頭のはなに?触覚?」
「ば、馬鹿にするな!これは魔族の証だ!触覚などと侮辱しよって!」
(ハッ!マズイ…怖がらせたか…)
「うおおおすげぇ!魔族ってこんな角なんだ!かっけぇぇぇ!」
「えっ?」
後の勇者アランは馬鹿である。
いや、恐怖心が欠けている。
「君名前は!?あっ、俺はアラン!」
「ベベル。ただのベベル。」
(もう次期魔王なんて懲り懲りだ…)
そう、ベベルは自分の身分に嫌気がさしていた。
言ったらなんでもくれる使用人。顔を見て話したいのに直ぐに視線を変える警備
次期魔王ってだけで怖がられる一少女の気持ち、それは誰にも理解されない悩みだった
「君もかぁ…」
そう思っていた。
「僕もただのアラン。この黒い髪と黒い目で相当苦労したよ!アハハ!」
なぜあったばっかなのに自分の悩みを見透かす。
次期魔王は少年アランに興味を持った。
同時に恐怖した。黒髪黒目は勇者の証。
「アランはどうして悩む?黒髪黒目は勇者の証なんだぞ?アランは勇者かもしれない」
「うん。言われたそれ。でも黒って印象悪いらしいよ。なんか闇属性の派生色って言われてさ。忌み子だの呪われた子だの散々言われた!ハハ!」
(おかしい…なんで…なんで…)
「なんで笑って居られる!悔しくはないのか!悲しくはないのか!我はこの角が嫌いだ!この黒い翼が嫌いだ!でもそんな風に笑えない!なんで笑っていられる!」
自分にできない事をしている少年に腹が立った
そしてどこか羨ましいと思った。
「自分を認めればいいんじゃないの?」
「あっ…」
次期魔王、いや、ベベルは言葉を失った。
自分は自分を否定していた。何気ない少年の言葉にどこか
光を感じた。小さな光だが、何故か、すごく暖かい。
「アハハハハ!面白いなお前は!」
(うわっ…笑った顔めっちゃ可愛い!)
「よしアラン!毎日我に食べ物を持ってこい!そしていっぱい話そう!」
「え?別にいいけど」
小さな光と小さな闇は生い茂る木漏れ日の中笑いあっていた。
その木漏れ日はどこか、光と闇を感じさせた。