勇者と魔王が出会うとき。
「はぁ、はぁ」
黒より黒い壁、血の如く赤い廊下を、息を切らしながら走り続ける黒髪の少年
彼は、勇者だ。
「ここに…魔王が…やっと会える」
勇者とは、魔を葬る者。弱き者の味方、人類の味方。
そんな勇者は魔王に…
「やっと会えた・・・魔王」
「遅いではないか、勇者」
恋をした。
※※※※※
「のう勇者よ、今日は何をしようか」
「アランと呼べと言ったろう魔王」
「な、なら我のことも名前で呼んでほしい!ベベルと!」
(あぁ、魔王との隠居は今日で二週間目か
幸せってこういう事を言うんだな・・・)
鳥がチュンチュンと鳴き、涼しい風が二人の肌をなでる
「おい、人の話を聞かぬか!魔王ぞ!我魔王ぞ!」
すると勇者は空を見上げ
「あの時みたいだな、ベベル」
「ぬ?どうしたのだ急に…あぁ確かに、アランと引き裂かれた空だ…」
少し時を遡ろう、そう
勇者と魔王の出会いまで。
※※※※※
「アラン!水を汲んできてくれ!」
(また水か、あそこ苦手なんだよなぁ…)
アラン、セーズ村のしがない村人
後の勇者である。
勇者の朝は早い。起床、薪割り、家畜の世話。
あとは大人の頼み事。
だがこの勇者、村人のわりにどこか異質であった。
見たことのない黒髪、黒目。セーズ村、いや、王都にもそんな容姿の者はだれ一人いなかった。
だが一つ、黒髪黒目について書かれていた書物があった。それは【勇者伝説】。
この本には、勇者は黒髪に黒目と記されており、アランは伝説の勇者の生まれ変わりではないかと
セーズ村では有名だった。まぁ、後々勇者なったけど。
「ふっ!?ふぅ…なんも居ないか…」
(やっぱり…視線を感じる…今日こそは正体を…)
10歳の子供を少し超える高さの林を抜けるとそこには
「き、君は・・・?」
赤い角に少しボロボロの黒いドレスを着た
後の魔王が居たのでした。