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雨の日は きみを想う-1 紅い傘
雨の日の、きみに。
twitter300字ss様、2015年6月(第十一回)のお題『雨』で書かせて頂いたものです。
三部作となっております。
1.【紅い傘】
2.【海月、二匹】
3.【手術前夜】
(三作共に、ジャンル:オリジナル/注意書き:BL)
黒い傘の群れが校門に吸い込まれていく。
傘の花が咲く、なんて言うけれど、それならさしずめ葬式用だろう。
男子校なんだから仕方がない。
その中でたったひとつ、紅い花を見つけた。
「男が紅い傘とか無いわー」
「何言ってんだよ。そうじゃなくても暗いのに、黒い傘なんかさしたら気が滅入る」
そう断言されてしまうと、自分の傘の中のなんと暗いことか。
彼が傘を差しかけた。
黒い花から紅い花へ、身をかがめて覗き込む。
そこから見る世界は実に鮮やかだ。街も木も、同じ景色ではない程に。
「断然いいだろ?」
得意げに笑う。
「黄色もおすすめだよ」
「小学生かよ」
彼の頬が紅いのは、きっと傘のせいだろう。
僕の頬が同じ色に見えたとしても、きっと。