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optatio
自動人形の君へ。
twitter300字ss様、2016年5月のお題『匂い』で書かせて頂いたものです。
ジャンル:オリジナル
注意書き:ややBL風味
スペース・改行除く299字
匂いと言うのは実に奥が深い。
例えば、煙草。
きみが喫煙者でなければ、不快だと判断するのではないのかい?
だがもし恋人が喫煙者なら。
街で同じ匂いを嗅いだだけで幸福な気持ちを覚えるだろう。
もし家族に喫煙者がいたら。
その匂いを懐かしく思うかもしれない。
君はそれだけ言うと目を伏せた。
白磁の肌と黒曜石の瞳と硝子の声を持つ君に、匂いは似合わない。
僕はポケットから煙草を取り出した。
ぷかり、と白い煙がドーナツ型に消えるのをひとしきり眺める。
「思って、みたいの?」
意地悪な質問だっただろうか。
ちらりと僕を見た君が拗ねたように目をそらす。
ふふ。
どの人間よりも精巧に優秀に、と作られた君が、そんなことを思っているなんて。




