22/92
双子
twitter300字ss様、2016年3月(第十九回)のお題『別れ』で書かせて頂いたものです。
ジャンル:オリジナル
スペース・改行・ルビを除く300字
私たちは白樺の森で生まれました。
生まれてから今まで、片時も離れず育ちました。
年頃になった私たちは奉公に出ることになりました。
身を清め、髪を整え、お化粧を施し、真新しい着物を着せてもらって車に乗りました。
初めての都会はどのようなところでしょう。
不安で胸が押しつぶされそうになっている私に、お姉様は「ふたりでなら大丈夫よ」と微笑まれました。
嗚呼、なんと心強い。
私はお姉様の手を握りました。
しかし。奉公先で私は、お姉様と離されてしまったのです。
すぐ近くで働く彼女を見ながら、そのたおやかなお手を取ることができない悲しみに、私はラーメンスープの海で溺れてしまいそうでした。
そう。
私たちの名は
割り箸。




