矛矛
長年にわたって時間と空間に関する研究を続けていたF博士の家は、研究や発明をする為にかなりの広さがあった。
なので、友人知人から物を預かる事も多かった。
ある日、F博士は友人から二振りの刀を預かって欲しいと、半ば押し付けられるように渡された。
「なんでも、いままでの持ち主はことごとく何者かに斬り殺されているだとか、どんな物でも斬れるぐらい凄い切れ味だとか、色々と言い伝えのある呪われた刀らしい」
「本物の呪いの刀なんて凄いですね博士! 呪いが存在するという事は巨乳サキュバスが存在する可能性だって否定できませんね!」
科学者だって怖い物は怖い。呪いの話もあり、刀から目を離すのも何となく嫌だと思ったF博士とB助手は、研究室の隅に刀を置いておいた。
そのうち、好奇心の強い二人は、ふとある事が気になった。
「そういえば昔、どんな物でも貫く矛と絶対に壊れない盾の話があったな」
「矛盾の故事でしたっけ」
二人の視線の先には、何でも斬れるという二振りの刀があった。
後日、友人が刀を受け取りにくるなり、二人は真っ二つに折れた二振りの刀を出して平謝りした。
「まことに済まない事をした。だが、二振りの刀の何でも斬れるという伝説は真実だったと確認できたぞ」