サポートキャラは使わなかったようです。
前作のその後はさらっと書いているだけです。
本当にさらっとです。
皆様、初めまして、またはお久しぶりでございます。
リリオ・アイズラントです。
あれからあの逆ハーレムはどうなったかというと、まぁ、アンナの本性がバレて、色々口走ったせいで精神病院行きになりました。
男どもは、ショックだったのか、しばらく姿を見せませんでした。
自業自得でしょうに。
そういえば、あの少女漫画、ゲームにはオリジナルのサポートキャラが出現するんでした。
後に漫画にも逆輸入されましたが。
主人公、つまりアンナの隣室者であるピオニアという女の子です。
彼女はあのチャラ系イケメン担当のアロルドのイトコとは思えないほどとっても大人しい女の子。
でも、魔法の根源たる精霊を下級とはいえ人間に可能な限りで召喚することが出来るし、自分の影をもう一人の自分として具現化できる体質型魔力体【影人】の使い手。
ちなみにアロルドは人の死期を視ることの出来る臓器型魔力体【死眼】の持ち主で、各世代、絶対に数名は魔力体を持って生まれてくる家系だそうです。
この知識はゲームの設定資料集に書かれていました。
何故彼女の話をしたかというと、今その彼女が目の前にいるからです。
朝、可愛らしい封筒をマルタから渡されました。
顔に似合わなさすぎて唖然としていると、「ピオニア嬢からお嬢様にと渡されました。内容も彼女の了承を得て目の前で確認させてもらいましたが、問題がなかったのでお渡ししただけです」と苦笑されてしまいました。
彼女は学院の空き教室で待っていました。
わざわざ、窓の多い教室を選んで。
「アロルドがリリオ嬢に失礼をしたということは分かっています。今回は無礼を承知でお願いをしたいと思いました」
隣室であるアンナのことではなく、アロルドの話。
ということは、アンナは彼女のサポートを受けていなかったようですね。
当然といえば当然です。
ピオニア嬢はアンナよりも極上の外見ですし。
それを鼻にかけていない…というよりも自覚していないところがまた彼女が漫画の方にも逆輸入された理由…ってそんなことはどうでもいいですね。
「なんでしょう?」
「…アロルドに、謝罪する機会を与えていただきたいのです。もちろん、アロルドを許せとは申しません。それだけのことをしたのです。許されないのは当たり前…ですが、謝罪するために一度会っていただきたいと思い、図々しいとは思いましたが今回お呼び立てしたのです」
「許さないと分かっているのに謝罪する機会を、とはどういうことですか」
「許す、許さないはリリオ嬢の意志ですが…謝罪する自由はアロルドにもあります。それに私は、アロルドが人に嫌われてしまうのを見たくないのです」
「お言葉ですけど、彼、もう十分女性には嫌われるようなことをしていでしょう?恋人を取っ替え引っ替えしていること、ご存じないの?」
「存じています。だけど…私では止められなかったから…」
「……貴方、まさかアロルド・ロイが好きなの?」
「さすが才媛と言われるリリオ・アイズラント嬢ですね。人の感情の機微にも聡いなんて」
可愛らしく笑うピオニア。
でも、これだけの整った容姿で、どうして止められなかっただなんて思ったのでしょう。
彼女の外見は天性のものだけではなく、きっとそれを保つための努力もしているはずなのに。
「私は確かにアロルドが好きです。それこそ幼い頃から。けれど素直に気持ちを伝えられない私よりも、自分に愛情を与えてくれる愛らしい女性に惹かれるのは必然です」
「アンナにはアロルドの方から与えていたと思ったけれど、それでも?」
「えぇ。みっともないとは分かっていますが…諦めは悪いのです」
泣きそうな顔で笑うピオニア。
彼女は、アンナに愛を与えるアロルドを見てどれだけの痛みと涙を堪えたのでしょう。
情もそんなになく、早々に婚約を破棄した私とは違って、彼女はアロルドとのそういったものはなかったはず。
「それで…アロルドと、会って下さいますか?」
「分かりました。貴女に免じて彼と会いましょう。ただし、貴女も付き添ってもらえますか?私と彼だけだと、本当に謝罪をしていただけるか分からないもの」
「はい。リリオ嬢がそれでよろしければ。あっ…護衛のマルタ様もいらっしゃった方が良いですよね。私、うっかりしていて…」
「マルタへは私が説明しておきます。明日、またこの時間、この教室で…ということで良いですか?」
「もちろんです。ありがとうございます、リリオ嬢」
上品に礼はしたものの、私が出ていくまで動くつもりはないのでしょう。アロルド・ロイとイトコとは本当に思えません。
そして翌日。
私はマルタを伴って、同じ空き教室に向かうと、ピオニアとアロルドはすでに来ていました。
実はアロルドはピオニアのお願いを断れないので、来ないと言うことは考えていませんでした。
私達はそのまま向かい合うように立ちます。
「さ、アロルド」
「…先日の件のことは許して欲しいとは言わないよ。言える立場でもない。ただ、謝罪はさせてほしい。本当に、申し訳ない」
ピオニアに背中を押されて、アロルドが頭を下げてきます。
…素直ですね。
「確かに、許すとは言えません。それだけのこともされました。ですが、こういったことが二度と無いと誓えるのなら、貴方の謝罪は受け入れましょう」
「誓うよ」
驚いたことに、頭を上げて頷いたアロルドは、もうあの逆ハーレム要員でチャラチャラした少年ではなくなっていました。
「けほっ」
沈黙していたその場を破ったのは乾いた咳。
「ごめんなさ…けほっ、ごほっ…」
咳をしていたのはピオニアでした。
止めようとして口を塞いでいるけれど、逆効果のようで苦しそうです。
「マルタ、保健室へ連れていってあげて」
「畏まりました」
ピオニアを軽く抱き上げて、マルタは保健室へ向かってくれました。
…本当に頼りになります。
「…薬取ってこないと」
「貴方、ピオニア嬢のあの症状知っているの?」
「本人は軽いとか言っているけど、本当に重い喘息だよ」
「だったら離れないでついていてあげれば良いのでは?」
「…アンナの件のこと?」
「それ以外も、恋人を何人も作っているじゃないですか」
「……情けないことに、ピオといるのが恐いんだよ。もしかしたらピオの死期が視えてしまうかもしれないってのがさ。知ってる?喘息ってナメてかかると死ぬこともあるんだよ」
「それは…聞いたことがあるけれど…」
ピオニアの教室に向かいながら話しているから、とても早口です。
そういえば、アロルドは元々喋るのが早い方だけど、焦るとかなりの早口になる、という特徴が設定に書かれていました。
漫画では一つの吹き出しにたくさんセリフが書かれていたことで表現されていたので、あまり分からないけれど、ゲームではその声優さんに聞こえやすく早口で喋るように指示されていたとのこと。
何が言いたいかと言うと、アロルド、本当に喋るの早いです。
「だから、俺は逃げたんだ。でもダメだったよ。どんなに可愛い子に告白されて付き合っても俺の方からは好きになれない」
「じゃあ…アンナには…?」
「アンナに近づいたのは…最初はピオの様子を簡単に見に行ける理由が欲しかっただけだった。どういうわけか、アンナに夢中になってたけどさ」
…ふむ?
最初からアンナにメロメロだったわけではなかったのでしょうか。
「でも、それならばピオニア嬢と付き合われた方が早いのでは?」
「ピオを壊したくないから最初にその考えは自分の中で即却下したんだけど…」
その後、保健室に行くまでの道すがら、私はアロルドと一緒にいたことを後悔することになります。
何故かって?
―アロルドの早口で繰り出される惚気話がとてつもなく長かったからだよ!保健室行くまでノンストップって何?!
もうお前ら付き合えよ!!
おかしいな…リリオの性格微妙に悪い気がする…。
突然おとなしい女の子書きたくなったのがこの小説の発端ですが書いてる本人同様楽しんでいただけたなら嬉しいです。
「感想や意見も書いてやんよ」と思ってくれた方、心よりお待ちしております。




