最終章 アイツ
暑い。
指も上手く動かせない程暑い。
俺は持っていたゲーム機をたまらず手放した。
俺、高橋 誠 はゲームが大好きだ。
しかしやはり暑いものは暑い。
そしてこのクソ暑いのにどうして櫻井と北島の2人は口論なんて
無駄な労力を発する行動が取れるのだろうか。
アホかあいつらは。まあアホなんだろうが。
俺はまだマトモな人間であろう沖田に声をかけた。
「なあ、今日すっげえ暑いよな」
沖田が振り向く。
その度に金色の髪がキラキラと光る。
「って」
俺は違和感を感じた。その違和感がなんなのか、すぐ分かった。
「沖田、お前なんて顔してんの」
沖田は、泣きそうな、苦しそうな、疑問を抱いているような、
そんななんともいえない表情をしていた。
とても言葉では言い表せない表情だ。
沖田は俺から目線を外し、真正面を見つめ始めた。
そして、変なことを言ってきたのだ。
「なあ、なんか、足りなくねえか?」
「…は?何が」
こいつ、この暑さで頭でもやられたのか?
「もう1人、居た気がする」
沖田はただただ真正面を見続けた。
「怖いこというなよ。俺らはずっとこの『4人』でやってきたじゃねえか」
俺の言葉に、沖田は「そうだっけな…」と言って、うつ伏せ状態になり、やがて眠りについた。
なんなんだコラ。
こっちだって暑いんだから、意味不明なこと言うなよな。
俺は話し相手が居なくなったのでまた暇になった。
櫻井と北島は相変わらず口論中だ。
俺は暇つぶしに教室を見回す。
真っ白な黒板消し。誰かクリーナーかけろよな。日直誰だよ。俺かよ…。
めんどくさかったのでそのまま放置。
こうゆうとこがいけないんだろうな…。
乱雑にまとめられた誰かの参考書。…が、あったような気がした。
けれど瞬きをしてまた見直したら参考書はどこにもなかった。見間違いか?
俺は特に気にしなかったが。
俺は窓の外を見る。
空は恐ろしいほど青い。スッキリした気分になる。
そういやちょっと前に皆でかげうつし…じゃねえや。かげおくりだわ。
後で気付いたんだっけか。
アホらしかったけどまたやりてえなあ。
そんなどうでもいいことを考えながら、
俺は浅いであろう眠りにつくことにした。
*
高校の卒業式。
桜の匂いが舞う中で。
校門を出ようとした寸前で、止まる男子高校生1人。
彼は走る。
あの日、『皆』で居た教室に向かって。
『アイツ』を迎えに行くためだけに。
*
「加嶋って、うざいよな」
「ああ、俺もそう思うな。だってアイツ、俺らのこと仲間仲間ってうるせぇもん」
「漫画の読みすぎだろー」
「あいつが俺らの仲間なわけねえのにな」
「ただ1人で居るのを見て、『可哀想』だと思ったから俺らのグループ入れてやっただけなのにな」
「アホだよな。加嶋って」
「ああでも、
加嶋のそんなとこ、嫌いじゃないけどな」
「まあなー」
初めての投稿でした。
読んでくださったかたほんとうにありがとうございました!