第一章 非現実的な
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青く晴れ渡った空は、哀しいほど青かった。
雲ひとつない空は、どうしてこんなにも哀しいのか。
それともそう感じるのは俺だけなのか。
よく分からない。
それにしても今日は暑い。秋だというのになんて暑さなのだろう。
地球温暖化も着々と進んでいるということがよく分かる暑さだった。
俺は身を包んでいた学ランを脱いで椅子の背もたれに掛けた。
学ランはなんとなく汗でぬれているのが分かった。
クーラーもないこの空間に、今俺を含めた5人の人間が居る。
1人目は今この暑さにバテてぐったりと机の上で寝ている男、北島。
黒髪だから太陽の光を吸収してしまっているんだろう。黒髪なのは俺も同じだが。
2人目はさっきコンビニに行って買ってきたであろうソーダアイスを頬張って
頭がキーンとして苦しみ悶えている男、櫻井。
顔の作りはいいが学校で色々問題を起こしているためあまりモテない残念な奴。
3人目は持参したゲーム機で鼻歌歌いながらボタンをカチカチ押しまくってる男、高橋。
ただのゲームオタクだが何故かモテる奴であった。世界は分からん。
4人目は今俺の隣で居眠りこいてる男、沖田。
こいつの金髪はよく目立つ。今だって太陽の光りに反射してきらきらと輝いている。
そのくせ顔の作りもよく根っからのお調子者なのでよくモテる。
俺の大嫌いなタイプの人間だ。それなのにこいつは入学式以来何かと俺に付きまとってくる。
なんで俺なんだと聞いたら、「相性占いでお前と俺の相性が100%だったから」と言ってきた。
理由がアホすぎてどうでもよくなった。結果放置してたらいつの間にか俺はこのグループの中に居た。
そして5人目、俺。加嶋 駿。
何の変哲もない男子高校生。
学力も運動も顔も(多分)普通の男だ。
何か特徴があるとすれば、たまに問題を起こすぐらいだ。
学校にある教室のうちの一つ。3-4の教室にはむさ苦しい5人の男が集まっているというわけだ。
こんなのはよくあることで、放課後ほぼ毎日。5人で残って教室でうだうだするのが日課になっていた。
「うあー…あちー…」
北島が呻いた。誰も返事しようとしなかったので、俺が返事をしてやった。
「学ラン脱げよ」
すると北島はむっとした顔をして言い返してきた。
「なに言ってんだ。ここまで来たら着続けてやんぜっていうプライドがだな――――」
アホかこいつ。
「じゃあ我慢しろよ」
「ううー。櫻井ー、加嶋が冷たいぃー」
北島はぐったりとしたまま櫻井の方に視線を向けた。
一方櫻井の方は先程のアイスを食べ終わっていたようで、暑い暑いといいながら下敷きで仰いでるようだった。
「いつものことだろ我慢しやがれ」
櫻井は心底どうでもいいような顔で言い放った。
「んだよ。今日は皆冷たいな。一生に一度会えるか会えないかぐらいの仲間じゃねえか俺ら」
「ははっ。んだよそれ」
北島の仲間発言に櫻井は笑い出した。傍でゲームをしていた高橋も会話に入ってきた。
「いいこと言うじゃねえか北島のくせに」
「くせにってなんだよ」
「でもそうだよな。高校の頃の仲間って、一生付き合える仲間だって聞いたことあるし」
「マジで!?じゃあ俺ら一生遊んじゃうか?一生教室でうだうだすっか?」と、北島は笑いながら言った。
そこへ櫻井からの一喝。
「アホか」
「なんでだよ。いいじゃん。大人になっても青春しようぜ」
「おまえは青春しすぎ。勉強しろや」
「てめえに言われたくねぇ!!」
櫻井と北島の口論が始まると、高橋はさっさとゲームに戻っていた。
めんどくさかったのだろう。
と、袖を引っ張られる感覚があった。
沖田の目が開いていた。いつのまに起きたんだ。
「…どうした?」
「なあ、加嶋。仲間っていいよな。一生もんだもんな」
「……おまえもそうゆうのか」
馬鹿じゃねえの。
「加嶋はそう思わないのか?」
「…どうだろうな」
思うわけねえだろ。
「…そうか」
なんだよ。なんでそんな顔すんだよ。
他人なんて、信じられるわけねえだろ。
*
「え?」
瞬きをした、その後の話。
「沖田?」
なんでそんな顔したままなんだよ。
なんでさっきの顔のままなんだよ。
俺は周りを見回した。
「…北島、櫻井?」
2人は口論していたはずなのに、しんと静まり返っていた。
いや、違う。『動いていない』。
口論している姿勢のままで、『止まって』いるのだ。
「高橋?」
高橋がやっていたゲームの画面が止まっている。
高橋の指が止まっている。
俺は教室を見回した。
真っ白になった黒板消し。誰かクリーナーかけてやれよ。
乱雑にまとめられた誰かの参考書。誰のだろうか。
俺は窓の外も見てみた。
雲ひとつない青い空。相変わらず哀しい空だ。
黒板の上にかけてある、時計。
「は…?」
止まっていた。
止まっていたんだ。
ぴくりとも動いていないんだ。
なんだこれ。は?
「なんだよこれ…」
俺は4人に声をかけた。
「おい、何してんだよ。4人とも」
そうだ。これは何かのイタズラだ。手の込んだイタズラだ。
「おい。そろそろ止まったままの演技、限界だろ」
瞬き一つしないで、随分真に迫ってるな。でもこっちは全部分かってるんだぞ。
「俺を驚かそうとしているんだろ?無理無理。俺はこんなのじゃ驚かないぞ。
知ってるだろ。俺はこうゆう非現実的なものは信じないって」
なあ。
「知ってるうえでこんなイタズラなんて、度胸あるよな。
まあ今なら許してやってもいいんだぞ。なあ」
おい。
「なんか言えよ…」
なんだよこれは。
なんでみんな動かないんだよ?
俺は叫ぶようにして皆の名前を呼んだ。
「おい北島!櫻井!高橋!沖田!」
おい。
「なんとか言えよっ!!なんで誰も答えねえんだよ!?」
俺はうつ伏せの姿勢でいた沖田を無理矢理起こして沖田の肩を掴んだ。
「おい沖田!なんでそんな顔のままなんだよ!!もういいだろ!?
はいはい俺は驚かされました。これでいいだろ?
なんで…なんでまだ続けてるんだよ…?おい!!」
『あ~無理無理。無理だよ~。そいつらもう死んでるもん』
二ヒヒという笑い声がその言葉の後に響いた。
「…っ?」
声にならなかった。
なんだこのガキは。
目の前に突然現れたのは緑色の髪をしたガキだった。
「…誰だよ。おまえ。死んでるって、何がだよ?」
すると不思議な声を響かせて、その野郎は二ヒヒと笑った。
『僕は【傍観者】の男の子、モルダだよ~。死んでるっていうのはそのまんま。
君のお友達も両親も、君以外の人間は皆動作が止まって一時的に死んでるんだよ~』
何馬鹿なこと言ってんだこいつは。
でも今この状況は、多分信じたほうがいいのかも…しれない。
「…百歩譲って死んでるとするけど、なんで俺は生きてんだ?なんでそんなことすんだ?何が目的だ?」
『沢山の質問ありがと~。たんせいこめて答えるね。それじゃ~まず一つ目から。
なんで君なのか。それはね~君が世界を嫌っているから。他人を信じていないから~…かな??』
「なんで…」
『なんでそんなこと知ってるのかは企業秘密!じゃあ二つ目の質問に答えるね~。
なんでこんなことするのか、目的は何か。これはね~、ただの暇つぶしだよ☆』
「はあ?」
『あのね~僕は【傍観者】って言ったでしょ?傍観者は何かを見ている人のことを言うんだよ。
僕はとあるゲームを思いついて、傍観者になったんだよ~。
あのね~そのゲームはね、今の君のように世界で【たった1人の生存者】に仕立て上げて、
その生存者はどんな行動をとるのかな~って。それを見て楽しむゲームなの~。
一癖も二癖もある子を主人公にすればもっと楽しくなるでしょ?だから君なんだよ~』
意味わかんねえ。
なんだこれ。展開はやすぎ。クソゲームだな。
こんなの夢だろ。俺いつの間に居眠りしたのかな。
なんだろうな。これ。いつ目、覚めるんだろうな。
『信じてないみたいだね~』
「…だってそうだろ。突然時間が止まって、あなたは世界で1人だけの生存者ですなんて言われて、
はいそうですかなんて、言えるわけねえだろ」
むしろそうゆう奴どんな奴だ。順応力高すぎだろ。
『まあいいや~いずれ君も分かるときが来るよ』
「おい…戻るんだよな?これ」
『んー…それは君次第☆というよりタダで戻す気はないよ!それじゃあ
1人きりの世界を楽しんでね!また今度ねーっ!』
「ちょ、待っ…」
瞬きをした、後。
緑色の髪をしたガキは、消えていた。