8、終わりと違和感
目を開けると、真っ白な部屋の中にいた。
調度品もないただ椅子だけがある部屋に。
周囲には、白衣を着たスタッフが数人立っている。
部屋の中央にある椅子に俺は座っていた。
「お疲れさまでした」
一人のスタッフが静かに言った。
「見事でしたよ。すべての違和感を見抜いた被験者は、あなたが初めてです」
彼の声は、妙に穏やかだった。
横にある机の上の書類には、《被験者番号:L-027》と記されている。
「……これは、どういうことですか?」
「人間の認識限界を試す実験です。人は現実と仮想の区別がどこまでつくのか、それを調べていました。
あなたはその境界に“気づいた”んです。おめでとうございます。」
淡々とした説明を聞きながら、胸の奥に奇妙な空洞が広がっていく。
「じゃあ、ここが現実なんですか?」
スタッフは少し笑って言った。
「あなたがそう感じるなら、そうなんでしょうね。」
―笑っているのに、目は笑っていなかった―
⸻
部屋を出ると、窓の外に街が見えた。
見慣れたいつもの風景。人々が歩き、車が走っている。
建物の外に出ると風が頬を撫でた。
冷たくて、確かに“現実”の感触がある。
スマホを取り出す。
アンテナはしっかり立っている。時刻は午後4時59分。ちゃんと動いている。
安堵の息をついた、そのとき。
近くのカフェから流れるテレビの声が耳に入った。
「おはようございます。今日もいい天気ですね。」
胸の奥がひやりとする。
だが、すぐに笑って首を振った。
「もう疑うのはやめよう」と、心の中で呟く。
交差点の信号が青に変わり、人々が歩き出す。
空には、薄い雲と、夕陽の気配。
その景色は——やけに美しく見えた。
歩き出す足取りは軽い。
世界はまだ、続いている。
たとえそれが、どんな仕組みでできていようと。
バッグのタグがキラリと光った。
ふと視線を落とす。
そこに刻まれた文字に、俺は気がつかなかった。
“L-027”
彼も"現実"に戻った後の違和感には気づけませんでした。残念ですね。
まぁ"現実"だろうが現実だろうがその人がそうと信じていればそれでいいんじゃないでしょうか。
あなたの周りにもこんな事ないですか?大丈夫ですか?
心配になってらバッグのタグを確かめてみてください。
もしかしたら"違和感"がそこにあるかもしれませんよ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
この作品が初めての投稿となります。
次はちまたで話題の異世界を題材にちょっと違う切り口から書いたお話を投稿していこうと思います。
簡単に終わりまで書いてあるのですが、到底出せるものではないのでゆっくりお待ちいただければと思います。
またお目にかかれるよう頑張りますので応援よろしくお願いします。




