6、決定的な違和感
意識を取り戻したときには、朝になっていた。
昨日、どうやって戻ってきたのかも思い出せない。
ただ、すべてが最初に戻ったような——そんな感覚だけがあった。
確かめるようにテレビをつける。
画面には、昨日とまったく同じニュース。
アナウンサーの笑い方まで、寸分違わない。
胸の奥が冷たくなっていく。
慌てて支度をし、家を飛び出した。
お隣さんが、昨日と同じタイミングであいさつをする。
声の調子も、笑顔も、まったく同じだ。
鳥肌が立った。
それでも、平静を装ってあいさつを返す。
——今日は別の道を行こう。
普段とは逆方向の駅へ向かう。
商店街を抜け、住宅街を曲がり、川沿いを歩く。
しばらく進むうちに、空気の流れが変わった。
風が止み、音が消える。
十分ほど歩いたころ、見覚えのある風景が現れた。
白い犬を連れたおばさん。
赤い傘を持つ子ども。
交差点に止まる青いトラック。
……見間違いじゃない。
昨日と、まったく同じ光景だ。
空を見上げると、雲の形まで同じだった。
ピタリと重なる輪郭。
世界が一枚の写真になったように、動かない。
「……また、同じだ。」
喉の奥から漏れた声が、妙に遠くで響いた。
試しに全力で走る。
だが、角を曲がった瞬間——また同じ場所に戻っていた。
まるで街全体が円形の舞台で、
自分がその中央を回されているような錯覚に陥る。
スマホを開いても、圏外。
時間を見ると、画面の数字は19時59分。
——昨日と同じ。
それきり、時計は一秒も動かない。
冷たい汗が頬を伝った。
息が白くなる。
気温は高いはずなのに。
この世界は……なんだ?
初めて予約投稿をしてみました。
同じ時間に更新されるのは良いものですね。
それでは次のお話で。




