4、午後の違和感
その日の午後、職場では同じ場面が何度か繰り返された。
三人が同じタイミングで笑い、同じ角度で頭を下げる。
まるで舞台のリハーサル。セリフも動きも、すでに決められているかのようだった。
「今日もやる気出ないね」
「ほんと、月曜はダメだね」
「ははは、まったく」
同じ言葉、同じ抑揚、同じ笑い。
午後の仕事開始のときも、午後三時のコーヒーブレイクでも、四時の電話のあとでも、同じように繰り返された。
ふと周囲を見渡すと、誰もが画面を見つめ、同じ速度でマウスを動かしている。
キーボードの打音さえ、一定のリズムを刻んでいた。
音が混ざり合って、大きな生き物の呼吸になっている。
(なにか……おかしい)
胸の奥で、朝から感じる違和感がかすかにざわめく。
それを言葉にしようとした瞬間、隣の同僚がこちらを見て笑った。
「大丈夫? 顔色悪いよ?」
その言葉もまた、昨日とまったく同じだった。
イントネーションまで、完璧に一致している。
パソコンの時計は16時58分。
いつもより長く感じる時間。
時計の針が動くたびに、空気がわずかに歪んでいく気がした。
そして、17時15分。
終業のチャイムが鳴った。
それを合図に、全員が同時に立ち上がる。
姿勢も、動作も、まるで指揮者に合わせて動くオーケストラのようだった。
誰かが言った。「おつかれさまでした!」
次の瞬間、全員が一斉に復唱する。
「おつかれさまでした!!!」
声が重なり、響き、そして静まり返る。
そして一斉に出口へ人が消えたあと、俺だけが自分の席にただただ立ち尽くしていた。
(いつから、こんな職場になったんだろう)
誰も答えない。
時計の針が時を刻む音だけが響いていた。
第4話です。
最初のお話は毎日投稿をしたいので1話が短くなっています。
テンポ良く勧めていきたいと思いますので後半分ほどお付き合いください。




