第9話
ある日、私と社員の2人が開店の準備をしていると店の前に馬車が止まった。
「突然の訪問失礼します。ユイ様で間違いないでしょうか。」
正装の若い男性が聞いてくる。
「そうですが、どなた様でしょうか。」
「自己紹介が遅れました。私この国の王宮に勤めている、ザイランと申します。本日はユイ様に王宮に来て頂きたく参上しました。」
「王宮?なんでですか?」
なんか私やったっけ?
「実は、ユイ様に相談がございまして。」
「相談?仕事の話ってことですか?」
「まあそうですね。」
「分かりました。じゃあ用意してから行くので先行っててください。」
「ご用意が済むまでお待ちしてますよ。」
「いえ、ちょっとやりたいこともあるので。」
「そうですか?ではまた後ほど。」
一応ね。知らない人と一緒に行くのは危ないから。
私は準備を終え、王宮に向かう。
「すいませーん。」
受付で、さっきの渡されていた紙を見せると
「ユイ様ですね、お待ちしておりました。どうぞこちらへ。」
と奥の部屋へ案内された。
「で、相談って何ですか?」
奥の部屋ではさっきの人が待っていた。
「実は、来週隣国から女王がいらっしゃいます。」
「隣国と言うと、アーグレム王国ですか?」
「その通りです。そして、その女王への贈り物でこの国の特産品である宝石を贈ることになってまして、それをユイ様のところにお願いできないかなと。」
「1週間後ですか?」
いや、私なら行けるけど普通に考えると1週間前に依頼を出すなんてありえない。
「もともと宝石の用意はできていたんです。ですが、先日「アヤ」の宝石を拝見し、質の良さと大きさにに驚きました。私どもの用意した宝石と同じかそれ以上の物を売っておられるユイ様なら、もしかしたらもっと質の良いものもお持ちなのではと思いまして。」
「確かに「アヤ」を売っている人なら持っているかもしれませんけど、そもそも私が「アヤ」を管理してるわけじゃないですよ。その相談はアヤにしてください。」
「いえ、アヤ様はユイ様ですよね。」
おっとぉ?
「…どういうことですか?」
「そのままの意味です。ユイ様とアヤ様はどちらもあなたですよね?そのくらいは存じております。」
なんで知ってるんだよ。まあいいや。
「ちなみに、予算はどれくらいでどんな感じのものを持っていけばいいんですか?」
「見た目はこんな感じで、予算は報酬含め金貨15枚まででお願いします。」
と言いながらザイランさんは宝石の入った箱を出す。そこには、色とりどりの宝石が入っていた。が、大きさは不ぞろいで色もそこまでだ。
これで金貨15枚か。余裕だね。
「あーなるほど。あと、宝石にこだわりなどはありますか?」
「いえ、特にないです。なんでも大丈夫ですよ。」
「なんでも、ですか。「アヤ」の商品をグレードアップさせたようなもので大丈夫ですかね?」
「そうですね。それでお願いします。」
そんなこだわらなくても報酬結構貰えそうだね。王家との繋がりも欲しかったし、引き受けるとしますか。
「分かりました。引き受けたいと思います。」
「本当ですか?ありがとうございます!」
「今日用意して、明日王宮に届けに行こうと思うんですが大丈夫ですか?」
「…明日!?」
「はい。」
「わ、わかりました。では、よろしくお願いします。」
翌日
王宮で受付に向かうと、すぐに昨日の部屋に案内される。
扉を開けると、そこには昨日のザイランさんと、なんだか雰囲気がある男性がいた。
「あ、ユイ様、お待ちしておりました。」
「こんにちはザイランさん。こちらの方は?」
「あ、私アレストと言います。この国の国王やってます。」
「えっ国王様ですか?」
「ええ。ユイさん、今日はよろしくね。」
「こちらこそお願いします陛下。」
「アレストで大丈夫だよ。」
「…分かりましたアレスト様。早速ですが、こちら依頼の品の方になります。」
私は、地球製の宝石の装飾品を出す。人造宝石を使って作られたもので、さすがに金貨15枚は掛からないがそれでも数十万はした。だが、異世界ならこれで十分なはずだ。
「こっここっこれは…」
ザイランさんがニワトリになった。
「ご依頼通り宝石ですが。」
「…」
「ユイさん。素晴らしいものを用意して頂き感謝する。こんな美しいものは見たことがない。」
少しの沈黙の後、アレスト様が話し始める。
「しかし、これは金貨100枚でも買えない品だ。申し訳ないが、今の王宮にそんな余裕はない。」
「何言ってるんですか、約束通り金貨15枚でいいですよ。」
まあ本来15枚でも高すぎだけど。
「…いや、このようなものをそんな価格で買わせていただく訳にはいかない。」
「いえ、15枚でもちゃんと利益が出ているので大丈夫ですよ。」
「しかし、しかるべき場所で売れば金貨100枚は固い品で…」
「これは、今日のために仕入れたものなんです。買っていただかなければ困ります!」
私はオーバースペックだったかなと思いつつ少し語気を強めて言う。
その言葉に、アレスト様はやっと折れた。
「…わかりました。この礼はいつか必ず。」
といいながら、私に金貨15枚を渡す。よっしゃ、王様とのつながりゲットだぜ。
「じゃあ、アレスト様、ザイランさん。今日はありがとうございました。」
「こちらこそお世話になりました。あ、もし何か困ったことがあったらいつでも私を頼ってくださいね。」
なぜか敬語になっているがそれは非常に助かる。
「ありがとうございます。頼らせていただきます。」
「ユイさん、また会いましょう!」
私は2人と別れたあと笑顔で帰路についた。
1週間後 side:セラフィナ
「ふあぁー、やっと着いた。」
アーグレム王国の女王、セラフィナ・オルディアはそう言いながら船を降りる。
「セラフィナ様、ようこそヴァルセリオン王国へ。」
そう言いながら出迎えるのはヴァルセリオン王国の外交官、ヴァルト・ノクスだ。
「ああ、ヴァルトさんこんにちは。本日はよろしくお願いします。」
「ええ、こちらこそ。では、王宮へご案内いたします。」
side:ユイ
あれ?なんか今日は騒がしいなぁ。
私がいつも通り王都を散歩していると、何やら王都がざわついている。その辺の人たちに聞いてみると、どうやら隣国から王様がやってきたらしい。あー、今日だったっけ。
せっかくだし私も見てみたいな。
side:セラフィナ
ヴァルトさん達と馬車で王宮に向かっていると、道中たくさんの人が集まっていた。せっかくの機会なので手を振るとみんな笑顔で手を振り返してくれた。
「ふふっ」
思わず私も笑顔になる。やっぱりこの国はいいわね。
王宮に着くと、この国の国王であるアレスト様が待っていた。
「セラフィナ様。お久しぶりです!」
「アレスト様、こんにちは。今回もよろしくお願いしますね。」
アレスト様とは小さい頃から何回も会っていたので結構仲が良い。私達は近況報告をし、これからも同盟を継続していくことを確認する。
しばらく話をした後
「これ贈り物です。」
といい、私は箱を取り出した。私がこの国に来るときは毎回プレゼントを交換するのが習慣となっていて、今回は金の装飾品だ。ちなみにかなり自信を持っている。
「ありがとうございます。じゃあ私からもお贈りしますね。」
といい、何やら怪しい笑みを浮かべるアレスト様。
怪訝に思いつつ、私は贈られた箱を開ける。
「…………」
な、なんじゃこりゃぁぁ。




