第4話
「ありがとうございました~。」
店を始めて3日。店の経営はとても順調だが、日に日にお客さんが増えてて1人だと少し厳しくなってきた。そろそろ人を雇いたいな。
土曜日、私はガラントさんの商店へ向かった。どうもガラントさんは割と大きな商会のトップだったらしく、受付でガラントさんに会いたいというとアポなしでの面会はできないといわれてしまった。仕方ないので私は面会を希望する日を紙に書き、店を後にした。
「うーん。今日はなにをするかな。」
今日はガラントさんに会う予定だったから特にやることが決まっていなかった。
…そういやこの町をしっかり見たことなかったな。せっかくだし散歩でもしますか
私はまず王都の中心地に向かう。そこはやはりというか、とても賑わっていた。店や屋台が立ち並び、たくさんの人であふれている。私はその中から1つの店を選び中に入った。
「いらっしゃいませー。お好きな席へどうぞ」
私は挨拶を返しながら席に座りメニューを見る。
うーん、わからん。
メニューを見ても知ってる料理がなかったので、私は店員のおすすめを聞きそれを頼んでみる。
「お待たせいたしました。」
見た目はー、まあ普通に肉料理かな?いただきます。もぐもぐもぐ。
…何とも言えない味だ。決して不味くはないんだけど。異世界人からすると味が薄く感じる。やっぱり調味料は高級品なのだろうか。そのうち調味料ビジネスやってみようかな。
昼を過ぎているため、店内にほかの客はいない。私は、店主に話しかけこの町について聞いてみる。今の王族はどうなんだと聞くと店主は、今の国王は立派だということを語り始めた。彼によると、前国王から今の国王に代わり税は下がり景気も良くなったらしい。それに、国王と国民との距離も近く、以前にはこの店にも立ち寄ったことがあると自慢していた。私のイメージだと、異世界の国王っていうのは国民が懸命に働き治めた税で私腹を肥やすものだったからなぁ、立派な王というのにも会ってみたくなった。王様、うちの店にも来ないかな。
私はそのあともだらだら店主と話した後、屋台を見回りいくつかの店で話をした後自分の店に戻った。
店に戻ると、なぜかガラントさん店の前で待っていた。
「あれ?ガラントさん、どうしました?」
「あ、ユイさん。先ほどは申し訳ありませんでした。」
「何のことですか?」
「先ほど私の店にいらしたときに追い返してしまったようで。」
「あー、いや全然大丈夫ですよ。ていうか来てすぐ会えないなんて当たりませだと思いますし。」
「しかしですね、」
「いや、逆に予定が先にあるのに私を優先する方がおかしくないですか?」
「…わかりました。ご配慮感謝いたします。」
せっかくの機会だし言っておくか
「あと、ついでに言いますけどそのしゃべり方やめてくれませんか?」
「そのしゃべり方とは何でしょうか?」
「その何でしょうか、とかのへりくだった言葉のことです。」
「…」
ちょっと言い方きつかったかな?
「あ、すみません。ちょっとユイさんと接してると緊張しちゃって。肩の力入っちゃってました。でも、そういってもらえると気楽に話せるんで助かります。」
よかったー。これで気まずくなったらどうしようかと思ってたよ。でもなんで緊張なんてしてたんだろう。
「なんならため口でも大丈夫ですよ。私の方が年下ですし。」
「いやそれは勘弁してください。」
さすがにそれは無理か。
「それで、要件は何だったんですか?」
ガラントさんが聞いてくる。
「実は店を一人で回すのに限界を感じてきてて、2人ほど社員を雇いたいなと思い相談しに行きました。」
「ああ、なるほど。うちから社員をお貸ししましょうか?」
うーん。ガラントさんといえども社員をうちに入れるのは少しためらわれる。それに。ガラントさんは信用できてもその人たちが信用できるわけとは限らない。
「気持ちはありがたいんですけど、やはり雇う人は自分で決めたいなと思っていて、」
「わかりました。それでは商業ギルドに行きましょうか。」
「ギルドキター!」
「ギルドを知ってるんですか?」
「あれですよね。依頼を出したり、S級とかA級とかあるやつ。」
「ああ、それはハンターギルドですね。商業ギルドはその名の通り商売を取りまとめてる組合で、お金を借りたり、求人の依頼をしたり、ということができます。」
そりゃそうか、商業って言ってるしね。ハンターギルドもそのうち行ってみたいなぁ。
案内され歩くこと30分。目の前に建物が見えてくる。石造りの、周りに比べれば少し近代的な建物。これが商業ギルドちゃんですか。
ガラントさんは扉を開ける。
「あ、ガラントさん。本日はどのようなご用件ですか?」
新人さんだろうか。16歳くらいの受付嬢が話しかけてくる。
「今日は私ではなく、この方の付き添いです。」
「あ、そうなんですね。」
受付嬢がこちらを向く。
「失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
「ユイです。この町で、フェルカナ商店っていう店をやらせてもらってます。」
「フェルカナ商店!で、ではあなたは魔女なんですか?」
ん?魔女?
「失礼しました。この子にはあとできつく言っておきますので、お許しください。」
ここで話を聞いていたらしい先輩がとんでくる。
「いや、別に大丈夫ですけど、魔女って何ですか?」
「あ、それはですね…」
「実は、フェルカナ商店は魔女が経営している店だという噂が王都で流れているんですよ。」
言いづらそうにしている先輩の代わりに、ガラントさんが説明してくれる。
っていうか、
「なんですかその噂!」
「誰も見たことがないとても甘い飲み物、不思議な商品の数々、あとは王都の門の外での、小さな箱から明らかに入りきらない量のものを出していたという多数の証言から魔女ということになったんだと思いますよ。」
あ、門の外でのことしっかりみられてましたか。
「で、本当はどっちなんですか?」
「いや、もちろん人間ですよ。」
本当は異世界人だが、それでも人間であることには変わりないだろう。
「いやーやっぱり人間ですか。安心しました。でも魔女も見てみたかったなー。」
新人さんがさっき先輩に注意されたことを忘れたのかのんきな顔をしている。
「あなた、あとで覚悟しておきなさい。」
途端に新人さん?の顔色が悪くなある。私は気にしていないが、まあ自業自得だろう。
「失礼しました。それで、本日のご用件は何でしょうか。」
「えっと、人を2人雇いたいなと思ってるんですが。」
「求人のご依頼ですね。それでしたら、こちらの紙に仕事の内容、報酬と応募条件をお書きください。」
私は紙に必要事項を書いていく。
そういや、給料はどうしようかどうしよう。さっき聞いたが、普通は時給銅貨10枚くらいらしい。でも、いまの王都は労働者が多いから少ない給料で働いてる人も多いんだって。
うーん。低いのは論外として、高すぎても怪しまれる気がするんだよなぁ。今でも魔女だとかなんだとか言われてるし。まあ時給15枚くらいにしとくか。応募人数は男女1人ずつ。男女にした理由は、女性2人だとなんかあったとき対処が難しく、男性2人にすると怖いからだ。
「書けました。」
「では、拝見させていただきます。」
先輩は私から紙をうけとり、読み始める。
「何か問題ありますかね。」
「そうですね。特に問題はないと思います。強いて言うと業務内容にしては給料が高い気がしますが。」
「安いよりは人が集まるかなと思ったので。」
「わかりました。まあ不自然すぎる額ではないので大丈夫だと思います。では、これで出しますね。」
といい、紙を壁に貼る。どうやら、求職者はあの壁から求人を選んで応募するらしい。ちなみに、仲介手数料は銀貨5枚だ。
「ありがとうございます。」
「あ、そうだユイさん、ギルドに加入されますか?」
「加入?加入すると何かあるんですか?」
「ギルドメンバーになっていただければ求人の手数料、お金を借りたときの利子が半額になります。また、ギルドという後ろ盾ができるので絡まれたりすることは少なくなるかもしれないですね。」
はーん、なるほど
「そのかわり、45日に一度、ギルドに集まっていただく必要があります。まあ会議みたいなものですね。」
「なるほど、ちなみにガラントさんは入っているんですか?」
「ええ、私は王都で店を始めたときからずっと加入させてもらってますよ。」
ガラントさんも入ってるのか。ならそんなに心配する必要はないかな。
会議は面倒だが、ガラントさん以外に頼れるところが欲しかった私は加入することを決めた。




