第3話
side:ガラント
「すいません。少しお時間よろしいですか?」
私はさっき不思議な飲み物を売っていた少女に話しかける。
「はい?どなたですか?」
「私、トゥルメル・ガラントと申します。先ほど飲み物を買わせていただきました。」
「あー1番最初に試供品手にしてくれた人か、おかげでたくさん売れましたよ。ありがとうございました。あっ、私唯っていいます。」
覚えていてくれてよかった。
「ユイさん、とても美味しい飲み物でした。しかし、ずっと商品を売っておられましたがもしかして収納魔法をお持ちで?」
「あー、それはですね…」
少女が答えにくそうにしているのを見て、慌てて訂正する。
「いえ、無理にお話を伺うつもりはございません。ただ少し気になっただけですので、」
「あ、そうですか。それで、本題はなんですか?」
「失礼ですが、ユイさんは商売をしにここに来られたんですよね?」
「はい、最初は王都の店で持ち込みでもして、お金がたまったら自分の店を開こうかなと。」
「持ち込みですか。おそらくユイさんは珍しいものをたくさんお持ちなんでしょうが、高頻度でそれをすると特別な力をお持ちなことが丸わかりですが。」
「…」
これは絶対考えてなかったやつだな。
「そこで提案なのですが、私と協力をするというのはどうでしょうか。」
「協力?」
「はい。私の商店はユイさんに店を開くための初期費用、店の購入費を含めて、を無利子でお貸しします。その代わり、何か1種類ユイさんの商品をうちに卸してほしいのです。」
「…質問いいですか?」
「なんなりと。」
「まず、なんで私の商品がこの飲み物1種類じゃないと思ったんですか?」
「収納魔法、またはほかの不思議な力をお持ちの方が商売に来て商品が1種類のほうが不自然ですよ。」
「あー確かに。じゃあもう1つ。私がお金を借りてそのまま逃げるということは考えなかったんですか?」
「私は商人ですので、人を見る目はあるつもりです。それに、この質問をしてることがそんなことをするつもりはないと言っているようなものです。」
「なるほど。」
少女は考え込む。
「わかりました。これからよろしくお願いします。」
「!ありがとうございます。ご一緒に仕事をできることを楽しみにしております。」
side:ユイ
「どうぞおかけください。」
ガラントさんの店に案内された私は勧められた椅子に座る。
「改めて、私の提案に乗っていいただきありがとうございます。」
「いえいえ、こちらこそ色々助けてくださり感謝してます。」
おそらく、ガラントさんがいなければ大変なことになっていただろう。ガラントさんに感謝しつつ、自分の計画性のなさを反省する。
「じゃあ、まずそちらの店で売る商品を選んでほしいんですけど、希望とかってありますか?」
「そうですね、うちの店は高級品というより庶民向けの手頃な商品を扱っていますので、小さめの、1つ1つがそこまで高くないものがいいですね。」
小さくて安めのものね、何がいいかな。とりあえずいくつか出してガラントさんに選んでもらうか。
「わかりました。じゃあ、いくつか出していくのでご自分で選んでください。」
私はこう言い、ノート、ペン、カイロ、ライターなどを次々とを取り出す。そのたびにガラントさんが目を輝かせて、たくさんの質問をしてくる。さっきまでとても冷静だっただけに少し驚いたが、まあ商人とはこういうものかもしれない。
ガラントさんは20分ほど考えていたが、3000円(30銅貨)の折り畳み傘を選んだ。私としては少し意外だった。私が出したラインナップの中では少し高めのものだったし、何より普通の傘はこの世界にも存在しているからだ。でも本人、それも商売のプロが選んだものに口を出す気はない。
「わかりました。何個必要ですか?」
「とりあえず300個ほどお願いします。」
とガラントさんはお金をを出す。当然、この折り畳み傘では利益を出さないので商品の価格分だけお金を受け取り、段ボールに300個の折り畳み傘を入れ渡す。
「ありがとうございます。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。ちなみに、私のお店選びも今できたりします?早く店を始めてみたいんですが、」
「もちろんです。」
ガラントさんがそういうと、一人の男が入ってきた。商店の不動産担当の人らしい。へえ、不動産担当なんているんだ、もしかしてガラントさんの商店って結構大きい?
相談の結果、貴族街の近くの比較的治安のいいところに店を構えることにした。私は異世界人だけど身を守るためのチートとか持ってないし、襲われたら普通に死ぬから治安の悪いところを選ぶわけにはいかなかったのだ。でも、そこまで大きくない店だしガラントさんが少しおまけしてくれたから、金貨7枚というという比較的安い値段で買えた。…異世界の相場なんてわからないから私の感覚だけど。あとガラントさんへの信用。
早速私は自分の店の予定地へ向かう。広さは大きめのコンビニくらいで、2階建て。1階が商店で2回は自分の居住スペースとなる。もう夜でなので、私は夕食(もちろん通販)を食べた後土地代とは別に借りた金貨3枚の中からベッドを買い速攻寝る。商品ラインナップとか明日から本格的に考えなきゃな。これから忙しくなりそうだ。
3日後
「はあ、終わった~、、」
私は、3日間睡眠時間を削って開店準備をした。日本のコンビニと同じように棚などを並べていき、商品もコンビニに似せつつ異世界向けに一部調整した。それと、異世界から見て明らかにオーバーテクノロジーな商品は置かないようにし、飲食物や少し便利なものなどに抑えた。まだ偉い人に目を付けられるわけにはいかんのだ。
「店名どうしようかなぁ」
私は看板を作りながら考えた。ふとフェルカナ笑顔が頭に浮かぶ。もしフェルカナが王都に来たとき興味を持ってくれる名前にするか。
<フェルカナ商店>
私が凝った名前にしようとすると毎回周りに止められていたことを思い出し、そのままに名前にした。これでならフェルカナも立ち寄ってくれるだろう。
ちなみに商品、棚、その他の経費で借りた金貨3枚は使い切った。合計借金金貨10枚。日本円で約1000万円。
「…」
まあ、頑張っていこう。
てことで、仕込みしますか。
広告も出さず突然開店した店なんて誰も来るわけないので、私は宣伝をすることにした。店の目の前に即席の屋台を作り、通りかかった人にチラシを挟んだチョコを配る。ちなみにチラシは昨日家庭用コピー機を買って作った。原本はもちろん手書きだけど。
「こんにちは~。フェルカナ商店、明日開店です!」
私は通りがかった人々に笑顔でチラシを配る。
「何これ、おいしい!」
「これも売ってるの?」
「はい、他にもたくさんのお菓子も売る予定です。」
「絶対行くわ!」
だんだん注目を集めていく。やはりお菓子の力は強い。私は「フェルカナ商店」の名前が王都に広がっていくのを感じていた。明日が楽しみだ。
翌日
9時から開店だが、8時半くらいから少しずつ人が集まり始める。私は気合を入れなおし、開店の最終確認をする。そうこうしているうちに、9時を迎える。開店時間だ。
「フェルカナ商店、ただいま開店します!」
数十人のお客さんが店に入ってくる。でも、商品に対する質問はない。そのままにしておくと絶対質問攻めにされると思い、あらかじめ商品をまとめて説明した冊子を置いておいたのだ。私ってば頭良い。
「これお願いします。」
「いらっしゃいませ。こちら計銅貨10枚となります。」
「はい、ここの商品すごくいいわね。また利用させてもらうわ。」
「ありがとうございます。またのお越しをお待ちしております。」
入店制限をし、その後最後のお客さんが出ていった。これで初日の営業は終わりだ。正直トラブルの1つや2つは覚悟していたが特に問題なくうまくいった。少し物足りない気もするが、ほっとしているのは言うまでもない。
17時になり、店を閉め片づけをしていると、ガラントさんが訪ねてきた。
「繁盛していたようでよかったです。」
「あ、ガラントさん、ありがとうございます。おかげさまで初日を乗り切ることができました。」
「いやいや、ユイさんのお力ですよ。では、私は戻ります。これからもお互い頑張っていきましょう。」
「はい、これからもよろしくお願いします。」
「こちらこそ」
夜
今日の売り上げは約120万。原価、諸経費は約90万。単純計算、利益30万。営業時間は9時から12時、13時から17時の計7時間。時給4万5000。年200日働くとすると、年収6000万
「6000万、6000万、うふっうふふふふ。」
やばい、笑いが止まらん。




