第19話
翌日の早朝、私が3週間分の荷物を大きいリュックに入れ集合場所に行くと冒険者らしき男女2人組が既にいた。依頼を受けてくれた人達かな?ちなみに、ご飯は頼まれることを予想し一応3人分をリュックに詰め込んでおいた。
「こんにちは。エリシアさんとレオンハルトさんですか?」
「そうです!依頼者の方ですよね。えーっと、何とお呼びすれば?」
女性の方、エリシアさんが訪ねてきた。ギルドの依頼は依頼者が望む場合匿名で出すことができため、私も匿名にしておいた。
「リュミエラと呼んでください。」
「リュミエラさんですね、よろしくお願いします!」
まだ会ったばかりでどんな人達かわからないので、一応偽名をつかう。リュミエラ、名前借りるね。
「こちらこそよろしくお願いします。じゃあ、早速行きますか。」
「お二人とも冒険者をされてるんですよね。冒険者って、どんなお仕事なんですか?」
「護衛、魔物討伐、あとたまに戦争で稼ぐ方もいるって感じですね。まあ私たちはメインが魔物討伐で、移動するときにちょうど良くそこへの依頼が出ていれば護衛もするって感じです。」
あーなるほど、移動のついでに護衛もできれば一石二鳥だよってことか。
「リュミエラさんは商人の方ですよね。何のために王都に向かわれるんですか?その荷物の量ですと、商売に行くわけでもないようですし。」
「久しぶりに実家に帰るつもりなんです。あといい商品があれば仕入れようかなと。」
「実家ですか…いいですね。僕たちもう何年も両親の顔を見てないですよ。」
「私たち?お二人は家族なんですか?」
「はい。僕が弟で、」
「私が姉でーす。」
てっきりいつも通りの恋人同士かと思ったけど、姉弟か。仲良さそうでうらやましいな。
姉弟、両親ね。…みんな何してるのかな。元の世界に帰りたい気持ちはもちろんあるが、帰り方は見当すらつかない。このまま急に元の世界に戻されるとしても心残りがあるしね。とりあえずこの世界で生き抜いていくしかないか。
昼ご飯は、相変わらず好評だった。二人にこの世界の保存食をもらって食べてみたけど、おいしいとか不味いとか以前に硬くて噛めなかった。食べ物じゃないね、これ。そりゃ地球のものが好評なわけだ。
side:エリシア
「じゃあ、今日はここに泊まりましょう!」
私たちは泊まる場所を決めた。私たちが王都とバルザーク領を行き来するときによく使っている場所だ。二か所を結んだ線からは少し外れているから人は比較的少なく綺麗だし、猛獣も少ない。近くに川もある。
「えっと、これは何ですか?」
リュミエラさんの美味しい夕食を頂いた後武器の手入れをしていると、彼女がまた妙なものを出してきた。小さい袋のようなものかと思ったら十数倍に広がり、三角形の人が入れるスペースができた。
「これはテントで、簡単に言うと持ち運べる寝床みたいなものですね。お二人も一緒に使われますか?」
「…」
「…」
「どうかしましたか?」
はっ!驚きすぎて固まってた。
「いえ、私は大丈夫です。めっちゃ入ってみたいんですけど、一回これに慣れるともう地面で寝られなくなる気がするので。」
「僕も遠慮しておきます。」
「わかりました。では、よろしくお願いします。」
「任せといてください。じゃあ、おやすみなさーい。」
「リュミエラさん、おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
私たちは、野宿するとき必ず交代で見張りをすることにしている。ここは比較的安全な地域だけど何があるか分からない。最初は私だ。
「僕も寝るね、お姉ちゃん。」
「はーい、おやすみレオン。」
私は座りながら今日一日を振り返る。最初からリュミエラさんは少し変わっていた。見たことないバッグ、食べ物、荷物。あの若さで一人で商人をやっているところ、それでいて少し常識が抜けているところ。
「いやー、何者なんでしょうね。」
まあ、考えてもわかんないよね。いい人なのは間違いないし、可愛いし、正体なんてどうでもいいか。
「おっ、そろそろ時間かな?」
横の砂が入った容器を見ると、もうほとんど砂は落ちきっていた。私はレオンを起こしに行く。
「レオン、交代だよ。」
「了解。」
レオンはもう起きていた、というか最近は交代の時間になると勝手に目が覚めるようになったらしい。すごいね。
side:レオンハルト
「レオン、交代だよ。」
「了解。」
僕はお姉ちゃんと見張りを交代した。
それにしても、リュミエラさんは不思議な人だったな。持ち物はもちろん、変わった雰囲気をしていた。そこが魅力的なのかもね。
まあ僕はお姉ちゃん一筋だけど。
「お姉ちゃん、朝だよ。起きてー。」
「うーん。ん、おはようレオン。」
「おはよう。リュミエラさんも起こす?」
「いや、まだ早いんじゃない?先に朝ごはん食べてようよ。」
「…リュミエラさんがいないとご飯食べれないんだけど。」
「あ。」
30分後
「もう我慢できんわ。そろそろ起こしてもいい時間じゃない?」
「そうだね。じゃあ起こしてくる。」
side:ユイ
「リュミエラさん、起きてください。朝ですよ。」
「…あれ、もう朝ですか。なんかまだ眠いですね。」
「荷物持ってたくさん歩きましたからね、疲れるのは当たり前ですよ。」
「確かに。」
じゃあ、出発する用意しますか。…ん?なんでこっち見てるんだろう。私の顔になんかついてる?
「二人とも、どうしてこっちを見つめてるんですか?」
「あ、いや、その…」
「…リュミエラさんのご飯が食べたいなって。」
ああ、そういうことね。…食べ物のために起こされたってこと?
まあいっか。
「いやー今日のご飯も美味しかったです。」
「喜んでもらえて嬉しいです。ま私が作ったわけじゃないんですけどね。」
「そうなんですか!…どこで仕入れてるかとか教えてくれたりします?」
「いやー、さすがにそれは、」
「デスヨネー。」
「いえいえ、無理なお願いなのは分かって…」
さっきまでのんびりしていた二人が殺気立つ。
「リュミエラさん、魔物です。」
二人が剣を抜いた、と思った瞬間黒い影がこちらに飛びかかってくるのが見えた。
「ギンッ」
レオンハルトの剣と鋭い爪がぶつかる。と、音が聞こえた次の瞬間には魔物らしいものは地面に倒れていた。腹には剣が刺さっている。どうやらレオンハルトが受け止めた隙にエリシアが刺したようだ。隙というには短すぎるが。




