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異世界転移したけど、地球の通販アプリが使えるので商売します  作者: すぱーく


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第14話

春-76日


「あー、ねむ。」


私は早朝に起き、王都広場前に向かった。カモフラージュで荷物を持っていこうか迷ったが、ずっと持っているのは面倒だし収納魔法のことはどうせみんな知っているだろうってことで、持っていくのはやめた。




集合場所には、もうすでに数人が集まっていて、私の姿を見ると声をかけて来た。


「やっぱり!ユイさんじゃないですか!」

「こんにちは。どうかしたんですか?」

「ああ、すいません。実は参加者のリストにユイという名前があって、あなたのことじゃないかと話していた所だったんですよ。」

「そうなんですね、私のことご存知なんですか。」

「もちろんです。今の王都の商人でユイさんを知らない人なんていませんよ。」

「それはありがたいことですね。」

「ユイさんとご一緒出来るなんて、光栄です。」


結構嬉しい。




そこから十数分かけて人が集まっていき、全員集まったところで自己紹介をした。


まず、バルザーク領の支店に向かう商人が5人。そして、そのお抱えの護衛が3人、全員が冒険者ギルドのBランクだ。

ちなみに、Bランクとは熟練冒険者のことで、その下のCランクからが一人前、D 、E、Fランクが駆け出し。Aランクは一流でSランクは伝説らしい。


旅行者は、わたしを含めて5人。2人組の旅行者、行商人1人、私と同じ移住希望者が1人だ。


自己紹介を聞いた限り限りおかしな人はいなそうだし、女性もいたので安心できる。




道中は思ったよりも快適だった。護衛の人が交代で御者をやり、私たちは馬車の中を、話をしたり寝たりして過ごした。




そうこうしているうちに日が暮れる。ちなみに、この世界太陽は2つあるが月はない。




「じゃあ、今日はここで寝ましょうか。」

私たちは、旅行者用にあるキャンプ地の一つ泊まることになった。テントのようなものを組み立て、自分たちの寝床を作る。というか、キャンプ地なんてものがあるということはこの国は結構進んでいるのかな?




「本当に夕食は必要ないんですか?」


夕食の時間になり、商人の1人が聞いてくる。私以外は1食銅貨7枚の食事を頼んだようだ。


「ええ、私は自分用のを持っていますので。」

「自分用?ああ、そういや収納魔法をお持ちでしたね。」


はいやっぱり知ってた。


「そういうのって、どこから情報が回ってるんですか?」


私はガスコンロと鍋を出し、水を沸かしながら言った。


明らかに持っていないと説明がつかない状況はあったが、一応ほとんど言ってないと思うんだけど。


「…まあユイさんはギルドに入られていますしね。えっと、商業ギルドには、メンバー専用の酒場があることはご存知ですか?」

「あー、確かにそんなこと言っていた気がします。そこで情報交換がされているってことですか?」


「そういうことです。ちなみに、最近はユイさんの話題しか出ていませんでしたね。」


そうなんだ、なんか複雑な気持ち。




私は鍋で水を沸かして、カップラーメンを作り食べ始めた。そのまま食べれる物を出してもいいんだけど、やっぱりこの雰囲気に合うのはカップラーメンだね。


「…皆さんも食べますか?」

「「「食べたいです!」」」


みんながカップラーメンの方を見ているので、私がそう提案するとみんな食いついてきた。


「1つ銅貨10枚です。」


もちろんちゃんとお金は取るよ?




結局全員がカップラーメンを買った。護衛の人たちは最初は遠慮していたけど、そのうち我慢できなくなったのか結局お金を出してきた。




「おいしっ。」

「今までこんなもの食べたことないです!」

「こういうのって、どこから仕入れているんですか?」


カップラーメンを食べながらみんなが聞いてくる。が、もちろんそれは言えない。


「それは言えないですね。」

「そうですよねー、冗談ですよ。」


いや、目が結構ガチだったよ?まあ商人だからね。




夜は、護衛の人が交代で見張っててくれるらしい。ありがとうございます。




side:ドラヴァ


ドラヴァは、客がほとんど居ない店の中で独り言を呟いていた。


「くそっ、どうしてこうなった。」


フェルカナ商店に押しかけ、アヤの販売権を奪う計画を立てたところまでは良かった。他のギルドの商人からは賛同を得られなかったが、同じくフェルカナ商店に不満を持つ仲間も集まった。


フェルカナ商店を経営しているのは少女一人だ。強力な後ろ盾がいる様子もない。これからずっと王都でやっていくことを考えれば、アヤの販売権の一部くらい簡単に渡すと思っていた。


「なんで、わざわざ名前変えてんだよ!」


ユイ=アヤ、というのが想定外すぎた。ユイが「アヤ」を作っている上、どこでも生み出せるとなれば、俺たちの脅しなど意味がない。いくら妨害されようが、販売場所を移せばいいだけだからだ。結果としてユイは王都を出ていき、俺たちの名前を書いた張り紙をされ王都民の怒りを買った。こうなると、拠点を他の場所に移すか、店を畳むしかない。


それにしても、ユイが出ていったあと、いくつかの商会がフェルカナ商店の周りに人を置いているのは笑った。ユイに気に入られるためだろうが、今さら手を出す奴なんているわけないのに。




side:ユイ


2週間後…


はい、何事もなくバルザーク領につきました。まあそりゃそんなに頻繁に盗賊とか出てきたら行商人なんて商売成立するはずないし、そもそもこの国治安いいらしいしね。


ちなみに、初日の夜からずっと食事は私が用意していた。カップラーメンのほかにもカロリーメイトや菓子パン、飲み物も全部好評だった。この世界の食事もおいしいが、やはり保存食の分野では地球の圧勝だった。


…まあ私は別に保存食である必要ないんだけどね。やっぱり雰囲気は大事だよ。




「じゃあ、ありがとうございましたー。」

私たちはバルザーク領の中心にある広場で別れた。


商人も旅行者もいい人たちだったな、また会えるかなあ。




バルザーク領に着いたあと、私はまず宿屋を選んだ。ここでは店を開いたり家を持ったりせず、どこか信用出来る大商会に提供し「アヤ」として売ってもらうつもりだ。そうすれば自分が目をつけられることなく影響力とお金が手に入る。




私が目をつけた場所は広場の直ぐ側にある大きい宿屋だ。私は大きな扉を開け中に入る。


「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」

「そうです、部屋は空いていますか?」

「はい、空いております。クラスと滞在日数はどういたしましょうか。」

「クラスってなんですか?」

「当ホテルには、上から順にラグジュアリー、ハイエンド、ミドル、エコノミーの4つのタイプの部屋がございます。」


と言いながら、それぞれのサービスと値段が書かれた表を渡される。


なるほど、サービス的には地球のホテルとあんまり変わないか。お金の心配はないし、せっかくだからラグジュアリーにしてみようかな。値段は1泊銀貨7枚だ。


「じゃあラグジュアリー、とりあえず1週間でお願いします。」

「ラグジュアリーですか?失礼ですが、ご予算の方は問題ございませんでしょうか。1週間となると、銀貨50枚ほど掛かりますが。」


そりゃ若い女性1人だと気になるよね。


「これで。」


と言いつつ、私は銀貨の入った袋を渡す。


「え、あ、失礼いたしました。それではごゆっくりおくつろぎください。」


私は鍵を受け取り、部屋に向かった。

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