第13話
子どもたちの元を離れた私は、頃合いを見計らって店に戻る。
私は2人に、王都から離れることと必要事項を伝え2人とお別れをした。まあいつでも転送箱でやりとりできるので困ることは少ないだろう。
あ、もちろん店に押しかけて来た人たちの名前はガラントさんに聞いておいて、店の前に貼っときましたよ。
最後に、ギルドへ行く。
私がギルドの扉の前まで来ると、中で、外からでも聞こえるくらいの大声が飛び交っているのに気づいた。
「チリリン」
私がドアを開けると、多くの目が一斉にこっちを向く。見ると、さっきの商人たちがギルドの商人たちに取り囲まれているようだった。
「ユイさん!アヤはあなたというのは本当ですか?」
「ここを離れちゃうんですか?」
「フェルカナ商店はどうするんですか!」
ちょちょ、一気に喋らないで。聞き取れないから。
「皆様落ち着いてください。ユイさん、申し訳ないですが、今回の件についての説明をお願いしたいです。」
ギルドの職員の一人が言ってきた。まあそうなるよね。
「えーっと、まず、アヤは私です。もちろん、商品を提供していたのも私です。」
私が話し始めると、それまで騒がしかった場が静まる。
「質問いいですか?」
ギルド側の一人が手を挙げる。
「そもそも、なんでユイさんとアヤで分けていたんですか?」
「特別な物を作れることがバレると、そこにいる人たちみたいのに目をつけられると思ったからです。まあ、結局絡まれたから意味ないんですけどね。」
私は説明を続ける。
「で、昨日朝から出かけいて、帰ってくると店の前にいたこの人たちに急に「アヤ」独占するなとか意味わからんこと言われてまして。それなら、「アヤ」の販売をやめれば解決じゃないかと思いこうなりました。それと、今回は大丈夫でしたけどまたこういうことがあった時次はどうなるかわからないじゃないですか。そんな場所怖くて居れませんので、王都も離れようかなと。」
「そ、それは、あなたがアヤ様だとは知らず…」
「私が「アヤ」じゃなければしても良いということにはならないですよ?まあ多分こんな子供少し脅せば商品を提供してくれると思ったんでしょうけど。」
「…」
「ってことで、私王都を出るんですけど、このギルド証どうすればいいですか?」
私は空いていた受付に向かいいつかの先輩職員に聞く。彼女は様子を見守っているとき少し緊張した様子だったが、私が受付に行くとしっかりと対応してくれた。
「ギルドを抜けられるおつもりはないんですよね?」
「そうですね、特にやめたいとかはないです。」
「では、そのままお持ちで大丈夫ですよ。もし他の街に拠点を移そうと決められましたら、そこでその街のギルド証と交換してもらってください。」
なるほど、それは助かる。
「それと、他の街へ向かうなら、商隊と一緒に行かれるのが良いと思いますよ。1人で向かうのは危険ですし、商隊はすぐそこの冒険者ギルドで募集してますから。」
「分かりました。いろいろとありがとうございます。」
「いえ、こちらこそギルドのメンバーがご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした。」
私は、最後にギルドの入口で頭を下げた後、商業ギルドを出てすぐ近くの冒険者ギルドに入った。
「チリリン」
商業ギルドと同じ音がする。
「あ、ユイさん!昨日は大丈夫でしたか?」
ギルドの中にいた、1人の冒険者が声を掛けてきた。
昨日うちに来てくれてたのかな。それとももう噂になってるのかな?
「ああ、ご心配ありがとうございます、今回は大丈夫でした。でも、次からどうなるか分からないので「アヤ」をやめお店もしばらく社員に任せたいと思います。」
「そうですか…まあご無事で何よりです。」
冒険者ギルドの中は正面に受付が数個、左側には机と椅子が並んでいて数組の冒険者であろう人たちがおり、右にはたくさんの紙が貼ってある。
「行先:ドラグナード領
出発日:春-81日朝
申込み期限:出発日の5日前
集合場所:ルベル商店前
料金:Cランク以上の冒険者は銀貨1枚、それ以外は銀貨3枚
予定日数:10日
備考:毎食食事提供あり
ルベル商店」
「行先:セリシア領
出発日:夏-3日昼
申込み期限:出発日前日
集合場所:マイヤー商店前
料金:Dランク以上の冒険者は無料、それ以外は銀貨1枚
予定日数:2日
備考:食事提供が必要な場合、1食銅貨10枚
マイヤー商店」
あー、先輩が言っていた商隊はこれのことかな。
ちなみにこの世界では1年が360日で、春夏秋冬90日ずつ分けている。今日は春-68日だ。
「すいません、ここ来るの初めてなんですけど、これって商隊と一緒に移動できるってことですか?」
「はい。商人は移動するために専属の護衛を雇っていることが多く、ならば移動したい人からお金を取り一緒に移動するのがどちらにとっても良いということです。」
「なるほど。あと、私なるべく大きくて安全な街に行きたいんですけど、どこかおすすめってありますか?」
「そうですね…それでしたら条件的にここが良いと思いますよ。」
と言い受付の人は1枚の紙を指差す。
「行先:バルザーク領
出発日:春-76日朝
申込み期限:出発日の5日前
集合場所:王都広場
料金:cランク以上の冒険者は無料、それ以外は銀貨5枚
予定日数:14日
備考:食事提供が必要な場合、1食銅貨7枚
ハイエン商店」
「領は第二の王都と呼ばれるほど大きく、治安も良いです。ただ少し遠くて、この商隊ですと書いてある通り14日ほどかかります。」
2週間かぁ。確かに遠いけど近すぎると離れる意味が薄れるし、転送箱もあるから大丈夫だと思う。ダメそうだったら移動出来るしね。だけど、それよりも道中が気になる。安全性とか大丈夫なのかな。
私が考えていると、
「何か気になる点がお有りですか?」
と受付の人が聞いてくる。
「えっと、移動環境って大丈夫なんですか?衛生面とか、女性1人だと襲われたりとか。」
「ああ、それは大丈夫ですよ。商隊があるのは大商会だけですし、たまにギルド職員が抜き打ちでチェックしていますから。」
なるほど。それでも危険がありそうだけど、1人で行っても自分で冒険者雇ったとしてもが危ないのに変わりないからなぁ。
「分かりました。じゃあそこにしようと思います。」
ちなみに、フェルカナの村に帰ることも考えたけど出たばっかりですぐに戻るのは恥ずかしかったのでやめた。
「承知いたしました。では、ここにサインをお願いしますします。」
と言いながら、数人の名前が入った紙を渡される。これが現時点で申し込んでいる人かな。あんまり人数居ないね、まあ領は遠いらしいし当たり前か。
私はサインをし紙を返す。
「ありがとうございます。では、ここに書かれている通り月日の朝にに集まってください。遅れると置いていかれる可能性があるので、余裕を持って行かれるのをお勧めします。」
朝ね、まあ日が出る時についていればいいのだろう。
「分かりました。ありがとうございます。」
「お気をつけていってらしゃいませ。」




