第12話
誤字報告ありがとうございます。助かります!
私は数日間、リュミエラと一緒に買い物に行ったり、劇を見たりして遊んだ。性格は違うけど気が合っていた。
そして、ある日の帰り道。
「今日、ここを離れることにしたわ。」
「…そうなんだ。さみしくなるわね。」
「そうね。でもきっと、ユイとはまた会えるわよ。」
「なんで分かるの?」
「何百年も生きていたら感覚でわ分かるものなのよ。」
「…どういうこと。」
「あら、口が滑ったわ。」
リュミエラは笑いながら言う。
「じゃあまたね、ユイ!」
「あ、うん。また会おうね、リュミエラ。」
続きは、また会った時に教えるということなんだろう。その時は、私の秘密も言おう。
私は店に戻る。
3日後
いつものごとく朝に出かけ夕方店に戻ると、何やら騒がしい。
「どうしたの?」
私は、そこにいたカップルの女性の方に話しかける。
「あ、ユイさん。この方達が…」
「ようやく来たか、この守銭奴が。」
は?
あ、この人あれじゃん。ギルドで絡んできたなんちゃら商会の人。他は…知っている人はいないね。商人っぽいけど、知らないってことはギルドには入っていないんだろう。
「何の話ですか?」
私は言葉を返す。
「なぜ、「アヤ」を独占する。」
「別に独占する気はないですが、私は仕入れることができて、あなたたちは仕入れることができなかった。それだけです。」
「だから、それを我々にも提供するべきではないかと言う話だ。」
「なぜ?」
「それが、王都のためになるからだ。今の2商店がのみが「アヤ」を取り仕切っている現状は健全とは言えない。それに、アヤ様もそれを望んでいるはずだ。」
「いろいろ理屈こねていますが結局あなたがたが利益を得たいだけでしょう?それにアヤが望んでいるというのも意味がわかりません。」
「あのような素晴らしい物を生み出す方が、商品を独占すること良しとするはずがない。」
はあ、もういいや。
私は仮面をつける。
「アヤは私ですよ。」
「「「なっ。」」」
アヤの仮面の話は知っていたのだろう。一気に商人たちの顔が青ざめる。
「嘘をつけ!」
「しょ、証拠はあるのか?」
「証拠ねえ…今度発売予定の手鏡があるんですけど、それ見ますか?」
「それじゃあ証拠になってないだろう。作ってるところを見せてもらわんと。」
「さっきから思ってたんですけど、なんでそんな偉そうなんですか?私は別に証明する必要ないんですけど。」
「「「…」」」
一斉に商人たちが黙り込む。
「じゃあ、こうしましょう。お客様とガラントさんには申し訳ないですが、「アヤ」の発売は取りやめます。」
私は商人、そして周りのお客さんたちを見渡す。
「それで、あなたたちの抗議により「アヤ」は発売取りやめますと店の前に書いておきます。それなら独占状態ではないので文句はないでしょう?」
「ふ、ふざけるな。それでは王都から「アヤ」がなくなるではないか。」
「あなたたちが独占するなと言ってきたのでしょう?それにそもそも私が来るまで「アヤ」はなかったじゃないですか。」
「「「…」」」
君ら、困ったら黙るのやめたほうがいいよ。
「じゃ、そういうことで。」
私はガラントさん話をするために歩き出した。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、それでは私たちの立場が、」
「触らないでもらえますか?」
商人の1人が出してきた手を払いのける。
お前たちの立場なんて知ったことか。
「こんにちは。」
私は、もう顔見知りになったガラント商会の受付さんに声をかけ、ガラントさんとの面会をお願いする。
「ユイさん、やはり来られましたか。」
「やはりってどういうことですか?」
「ユイさんのところにも、商人たちが来たのでしょう?」
「ということは、ガラントさんのところにも?」
「はい、来ましたよ。独占がどうたらこうたらってね。」
「それで、どうしたんですか?」
「普通に追い返しましたよ、これ以上居座るなら訴えると言って。
そ、それでいいんか。
「それでおとなしく帰ったんですか?」
「そうですね。多くのお客様が見ていて、証拠と信用力が十分でしたからね。」
たしかに。私の状況でも裁判になれば私の方が有利だったのかもな。
「それで、どんな話になったんですか?」
「ああ、突然で申し訳ないのですが「アヤ」の取り扱いをやめることになりました。」
「そうですか、私は構いませんよ。でも、理由を教えていただけますか?」
私はさっきあったことを話した。
「それは…大変でしたね。」
「ええ。それと、しばらくここを離れようかと。」
「王都を、ということですか。」
「はい、王都にいると厄介なことが起こりそうですので。」
「お店はどうされるのですか?」
「商品は、私が買った転送箱で送れるので、社員たちに任せようと思います。あ、ガラントさんのところにも転送箱置いて商品送りますよ。」
「お気遣いいただきありがとうございます。ですが、私の方は結構です。もう十分にお世話になりましたので。」
「そうですか?」
「ええ、ほかに必要なところに使ってください
。」
「わかりました。ガラントさん、いろいろありがとうございました。」
「ええ、ではまた会う日まで。」
次に、私は仮面をつけ子供たちのレストランへ向かった。すでに、店は閉まっている。
「どう?調子は。」
「あ、おねえちゃん!あのね、最近お客さんがたくさん来てくれて、すごい楽しいよ!」
「そう、それはよかったわ。」
「そういえば、今日はどうしたの?」
子どもたちに見つめられ、私は深呼吸をし言う。
「実はみんなに伝えたいことがあって、私しばらく王都を離れることにしたんだ。」
「「「え…。」」」
沈黙が続く。
「…事情があるんだよね、僕らがそれを止めるわけには行かないよ。」
1人の少年が口を開く。
「そうよ。それに、帰ってきてくれるんでしょ?」
それに、少女も続く。
「うん、絶対帰ってくる。」
「なら、しょうがないわね。」
「いってらっしゃい。」
「絶対帰ってきてね!」
子どもたちの言葉が心にしみる。
あ、転送箱渡さなきゃ。もしものとき知らせてくれれば、向かうことはできなくても物を送ったりフェルカナ商店に伝えたりできる。
「もし、何かあったら手紙を書いてここに入れてね。すぐに私に届くから。」
「え!毎日お手紙書きたい!」
「それはだめ。もし毎日手紙が来ると、緊急のとき直ぐに気づけないでしょ。」
「…分かったわ。もしもの時だけ使うようにする。」
この子たち、偉すぎる。
私は子供たちに手を振り、レストランを後にした。




