第10話
「これ、どこで手に入れたんですか!」
私はアレスト様に詰め寄る。
「ある人のところから買い取らせていただきました。」
「ある人ってだれですか!」
「申し訳ないですが、それは本人の了承を得ないと教えられないです。」
「じゃあ本人の了承を取って…」
「セラフィナ様!」
後ろを振り向くと、付き人であるノアリスが私の名を叫んでいた。そこで我に返り、顔が熱くなる。
「ご、ごめんなさい。我を忘れてしまって…」
「お気になさらず、気持ちはよく分かりますので。もしよろしければ、お会いできるか本人に聞いてみましょうか?」
「えっいいんですか?ぜひお願いしたいです。」
「わかりました。ザイラン、行ってきてくれるか?」
「承知いたしました。」
ザイランは王宮を出て、フェルカナ商店へ向かう。
side:ユイ
「それで、いい人だと思って雇ったら金盗まれちゃいまして。」
「うわ、それ最悪ですね!でも、私のとこにもいましたよそういう人。外面は良くて信用してたら、バイトの娘に無理やり酒飲まして襲ってました〜みたいな。」
「やっば。やっぱり人は外面じゃ判断できないですよね。」
「わかりますー。しかもそれやった次の日に平気で店来て仕事してたんですよ。」
「その度胸だけは見習いたいですねー。」
「あはは、たしかに。」
私は、平日の昼間から居酒屋にいた。というのも、今夜王都の広場でアーグレム王国の女王様主催のオークションがあるらしく、私も参加してみることにした。けれど夜までは時間があったので、近くの居酒屋に立ち寄ったところ、同じく商人をしているらしい女性と出会い意気投合した。そして、気づけばこうして一緒に飲んでいた。
「っていうか、こんな昼から飲んでて仕事は大丈夫なんですか?」
「あなたもですよ?というツッコミは置いておいて、私今店を部下に任せて世界を旅しているんですよ。」
「へえー、楽しそうですね。」
この年でそれができるということは、商売で成功しているのだろう。私も旅行はしてみたいが、私の場合在庫補充は自分でしかできないので旅行への道のりは遠そうだ。
「楽しいですよ。それに各地の珍しいものを見れて商売の参考にもなるんですよね。」
もう何杯目かも分からない酒を飲みながら彼女は言う。
「そういえば、王都には画期的な商品が増えましたね。前来たときも他の地域よりは進んでいましたけど、ここまでではなかったはずです。何かあったんですか?」
「…それって「アヤ」の話ですか?」
「そうそうそれです、その「アヤ」ってブランド。確か誰が売っているか分かってないんでしたっけ。」
「あー、確かに公開はされてないですね。」
「そういうのってなんかロマンありますね。そういや、ユイさんはどこで商店を経営されてるんですか?」
「私は、ここから少し奥に行ったところにあるフェルカナ商店って言う雑貨屋をやってます。」
「えっ私知ってますよフェルカナ商店!「アヤ」が置いてあるところですよね。」
「ああー、そうですね。ありがたいことに置かせてもらってます。」
「ってことは、アヤさんのこととか知ってるんじゃないですか?教えて下さい!」
うーん。見た目を知ってもらわないとアヤとして人前に出ても分からないかもだし、見た目は広めてもいいか。
「じゃあ、見た目だけなら。」
「ぜひお願いします。」
「えーっと、若い女の子で、身長とか髪型とかは私と似てます。あと、いつも仮面をつけてますね。」
「ちょっと待ってください。アヤさんって女性だったんですか?」
「そうですよ?」
「……」
「私、アヤさんのファンになります。」
沈黙の後、突然彼女そうが言った
「急にどうしましたか?」
「私、そういうのに憧れてるんです!まだ会ったことはないけれど、私には分かります。アヤさんは絶対美しくてかっこいい女性です!」
なんか変なことをいい出した。
その後、しばらく彼女と話をした後彼女は用があると言いどこかへ行ってしまったので、私は1人で広場に向かう。
オークションが始まるのはまだ先だが、すでに屋台が立ち並び多くの人で賑わっている。私は屋台に立ち寄りつつその雰囲気を楽しんでいた。
「ユイさん!」
誰かに呼ばれ、後ろを見るとさっき一緒に飲んでいた女性がいた。そういや名前聞いてなかったな。
「あれ、さっきぶりですね。あなたもオークションに?」
「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!ユイさん、アヤってあなたのことじゃないですか!」
ちょちょ声大きいって。
私は広場の外に女性を引っ張り聞いた。
「…なんでわかったんですか?」
あれ?前も同じセリフ言った気がするなぁ。私の正体バレすぎじゃね?
「ユイさん怪しいなと思って、王宮で聞いたんですよ。」
「怪しいって?」
「私、フェルカナ商店行ったことあるんですけど、「アヤ」以外にも珍しいもの売ってるじゃないですか。それに、ユイさんとアヤの髪型も身長も似てるって言われて疑わないほうがおかしいくらいですよ。」
…確かに。っていうか王宮で聞いたって何?
「で、なんで隠してたんですか?」
「その前に、王宮で聞いたってなんですか?」
「私、王様にちょっとした貸しがあるんですよ。それで王宮に乗り込んで聞きました。」
なんじゃそりゃ
「そんなどうでもいいことより、なんでこんなことしてるのか聞いてるんですよ。」
「えーっとですね…」
まあ、王宮が話したくらいだし無闇に広めたりはしないだろう。
私は「アヤ」を有名にし、私と親友である設定にしてそのネームバリューで自分の身と店を守ろうとしていることを話した。
「なるほど。でもそれなんでわざわざアヤとユイさんで分けたんですか?普通に自分が特別な力を持ってるって言えばいいんじゃないですか。」
「いやーそれだと悪い人に狙われやすくなるんじゃないかって。私戦闘能力ほぼ0ですし。」
「あー。確かに…」
side:ザイラン
「すいません。ユイ様って今ここにいらっしゃいますか?」
「今いらっしゃらないですね。」
「いつ帰ってくるか分かりますかね?」
「いやー、いつも帰りの時間はバラバラで、ちょっとわからないですね。」
「そうですか…わかりました。ありがとうございます。」
うーん、いなかったか。他に任されてる仕事もないし、しばらく待ってみるか。
1時間後
…帰ってこないな、今日はオークションがあるし、もしかしたら王宮の近くにいるかも。どっちにしても一度王宮に戻るか。
王宮に戻ると、受付で何やら揉めていた。
「…ですから、許可なく王宮に立ち入ることはできません。」
「私は、ここの王様知り合いだっての。なんで許可証がいるのよ!」
「規則ですので。陛下への謁見をご希望でしたらこの紙にその旨をお書きください。早ければ数日のうちに許可が出ますので。」
「私は、今会いたいって言ってんのよ。」
「まあまあ。リサさん、どうされたんですか?」
「あ!ザイラン様。この方が許可証をお持ちでないのに陛下にお会いしたいと言っていまして。」
「失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「リュミエラ・ヴェルティナよ。」
「リュミエラ様ですね。陛下にお伺いして参りますので少々お待ち下さい。」
「わかったわ。」
私は陛下のもとに戻り、リュミエラという人物を知っているか聞きに行った。
総合100ポイントありがとうございます!皆様のおかげです。
引き続きユイをよろしくお願いしますm(_ _)m




