第1話
初投稿です。至らぬ点もあると思いますがよろしくお願いします。
「んん~…ん?」
目が覚めると、そこは平原のど真ん中だった。
「あれ?、私どうなって…」
さっきの出来事を思い出す。朝いつも通り起き、朝食の前に散歩をしようと玄関から一歩踏み出した途端、落ちた。比喩でもなんでもなく、地面が消えたのだ。
「いやいやいや、おかしいでしょ。」
といっても状況が分からない以上何もできないので、まず記憶を確かめる。私の名前は中村唯。就職活動中の大学3年生。住んでた場所は東京。よし、大丈夫そうだ。次に周りを見渡してみる。
…どうやら、ここは私が知る地球ではないらしい。知らない小動物がたくさんいるし、なぜか空に太陽が二個ある。うん、異世界に転生したのかな、私。私も転生系の小説は好きだよ?
「ピロリン」
ふと、スマホの通知音のような音が鳴る。いつもの癖でポケットを確認するがそこにスマホはなく、代わりに目の前にスマホの画面が浮き出てくる。混乱しつつその画面を見ると、スマホの更新通知が来ていた。
「バージョン####更新完了」
「スマホを再起動します」
更新したらしいスマホを開くと、私がいつも使っていたアプリがすべて消え、代わりに「マルカリ」と「アイテムボックス」というアプリがインストールされていた。まずは「アイテムボックス」を開いてみる。最初は開き方が分からなかったが、どうやら脳内の想像通りに操作できるらしい。「アイテムボックス」は、その名の通りアイテムボックスのようだった。枠が300個ほど並んでおり、上の方には
「重量:0kg/1000kg」
「時間:停止中」
と書いてあった。おそらく収納できる重量であろう。もちろん中身は空だ。次にマルカリを開いてみる。見たところマルカリはどうやら通販アプリのようで、私がいつも使っていたものとそっくりだった。でも、お客様情報を見たとき、
「あなたの現在地:ヴァルセリオン王国」
「資産:15000G」
となっていたのには驚いた。わたしは地理が得意な方だったがヴァルセリオン王国なんて国は知らない。どうやら本当に異世界に来てしまったようだ。でも、自分でも驚くほど焦ってない。私って適応力高かったのかな。
「さて、これからどうするか。」
焦ってはいないものの、どうすればいいかわからず途方に暮れていると、周りの小動物たちが一斉に騒ぎながら同じ方向に逃げていった。思わず反対側に振り向くと…なんかいた。
「ギャオオオオオオッ!」
地球でいう熊のような怪物ががこちらに向かってきているのが見え走り出すが、当然そんなのから逃げられるわけもなくすぐに追いつかれ鋭い爪が振るわれる。
「うわっ。」
何とか1発目は回避するが、すぐに目の前に2発目が迫り、私は思わず目をつぶる。
「ズシャッ」
鋭いものが刺さる音。しかし痛みがいつまでたっても来ない。
「…?」
ゆっくりと目を開けると、腹を刺され死んでいる熊と、血の付いた剣を持ったひとりの少年がいた。
「あぶないでしょ、女の子が一人でこんなとこにいたら。」
少年が話しかけてくる。異世界であろう場所に来て初めての人間だ。しかも明らかに日本語ではないのに言葉が通じる。
「あなたが助けてくれたの?ありがとう。」
私が言うと、少年は少し顔を赤くしながら
「たまたま通りがかっただけだから。」
とぶっきらぼうにいう。
「でも助けてくれたことには変わりないでしょ?」
「…それにしても、なんでこんなところに1人でいたの?」
少年は話を変えた。
「あー…えっと、実はさっき頭を打ってしまったみたいで、気づいたらここにいたのよね。」
本当はばっちり覚えているが、異世界から転生してきたなんて言ったら頭のおかしいやつだと思われてしまう。
「そうなんだ…、よかったらぼくの村に来る?」
「いいの?実はこれからどうしようと困ってたところなの。」
「いいよ。」
といいながら、少年は熊を短剣で切っていた。
「なにしてるの?」
「村に持って帰って食べるんだよ。ほんとは全部持って帰りたいけど重くて無理だからね。」
「ふーん…」
とここで私はアイテムボックスの存在を思い出す。すぐに私は脳内でアプリを開く。使い方は分からないが、物は試しだ。
「ちょっとさ、これ触ってみていい?」
「いいけど、どうして?」
「ちょっとね、」
と言いつつ収納アプリを開いたまま熊を触ると、それを吸い込んだような感覚があり、目の前にあったものが消えた。アプリを確認してみると、枠の一つが熊の死体で埋まり、総重量は351kgとなっていた。
「なんで!?何が起こったの!」
少年が言う。
「えーっとぉ…」
私が返答に困っていると、
「まさかお姉ちゃん収納魔法が使えるの?」
と少年は目を輝かせる。え?この世界魔法があるんですか?でもこれはいい言い訳になるぜ!
「実はそうなんだよね、でも私記憶がなくなってて魔法の使い方は覚えてるけどどのくらいすごいのか覚えてなくって、」
「収納魔法自体はそんな珍しくなくて100人に1人くらいが持ってるんだけど、そのほとんどがちょっとした小物を数個入れられる程度で、こんな大きいものを入れられる収納魔法持ちなんて一つの国に5人もいないんだよ!」
少年が興奮しながら言ってくる。
「へー、結構珍しいんだ。そういえばこの世界ってどんな国があるの?」
「ほんとに全部忘れてるんだね…」
そんなあきれたような顔しないで…
「えっと、まずここは島国のヴァルセリオン王国で、どの国とも接してない。で、船で30分くらいのすぐ西に同盟国のアーグレム王国と中立国のノクティア連邦があって、そこから船で7日くらいのところに大陸があるんだ。そこはここより文明が進んでるんだけど、多くの国が派覇権をめぐって争ってる危ない場所だよ。」
なるほど、ひとまず平和そうな国に来れてよかったってことで。
「そういえば、自己紹介がまだだったね、僕の名前はフェルカナ、お姉ちゃんは…名前覚えてる?」
「あー…」
名前どうしよう。唯だとおかしいかな。でも本名じゃないと呼ばれた時反応遅れそうだしなー。本名でいっか。
「うん、私の名前はユイだよ。」
「ユイ?珍しい名前だね。これからよろしく。」
「こちらこそよろしくね」
「じゃあ、そろそろ僕の村に行く?」
「うん、案内お願い!」
「ただいまー。母さん」
「おかえりフェルカナ。あら、隣の方はお客さん?」
「ユイです。動物に襲われていたところをフェルカナさんに助けていただきました。」
「ユイは記憶喪失になっちゃってて、しばらくうちに泊めたいんだけどいい?」
「もちろんいいわよ。ユイさん、何もない村だけど良かったらゆっくりしていってね。」
「お気遣いいただきありがとうございます。」
フェルカナの村は、一言でいうと木造平屋が並んだ田舎だった。でも、自然と豊かな作物があり平和そうな村だった。
「おうフェルカナ、帰ってたのか。」
「あ、父さん。今帰ったとこだよ。」
「そちらの方は?」
「この人はユイって言ってね、熊が入るほどの収納魔法が使えるんだよ!」
「何!」
「あ、今出しますね。」
脳内でアイテムボックスを開き、熊の死体を選択する。すると予想通りそれが目の前に現れた。
「なっ…」
「じゃあ早速料理してくるわね。」
とフェルカナのお母さんが熊を引きずって持って行った。…お母さん強いね。
「君はどこから来たんだ?どうしてここに?」
私の収納魔法に驚いたらしいお父さんが質問してくる。収納魔法じゃなくてアイテムボックスだけど。
「実は私記憶喪失になっているらしく気づいたらこの近くの草原にいて、動物に襲われているところをフェルカナさんに助けてもらいました。」
「そうか、記憶がない…今夜はこの村に泊まるのか?」
「はい、お世話になりたいと思っています。」
「それは構わん。フェルカナが連れてきた子だしな。だが、かわりといってはなんだが狩りを手伝ってもらいたいんだが。」
「もちろんできることは何でもするつもりです。でも、私が狩りでお役に立てるでしょうか。」
「いや、直接狩ってもらうわけではなく、その収納魔法に狩った獲物を入れてほしいのだ。普段は狩る役と荷物を持つ役で役割を分担して狩りに出ているのだが、それが全員で狩りに参加できるのならもっとたくさんの獲物が取れる。」
「確かにそれならばお役に立てるかもしれません。」
「では早速狩りに行きたいと思うが…フェルカナも行くか?」
「いいの?」
「ああ、今日は許してやろう。」
「ありがとう父さん!」
その日の夜
「君のおかげで今日はたくさん獲物が取れたよ。とても感謝している。」
「いえ、村に泊めさせてもらっている以上これくらい当然です。それにフェルカナに命を助けてもらってますし。」
「そうか。ならフェルカナにも感謝しないとな。」
「ええ、私もとても感謝しています。」
…返答がない
「どうかされましたか?」
「いや、大丈夫だ。じゃあ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
用意してもらった空き部屋で、唯は1人考えていた。まず、今日の狩りについて。結論から言うと、狩りは余裕だった。私が見たところ獲物は明らかにさっきの熊よりも大きく強そうだったが、フェルカナやほかの人たち、なによりフェルカナのお父さんが強すぎて一方的な戦いになっていた。道中フェルカナが私の前でだけ少し挙動不審だったが、まあ狩りで緊張していたんだと思う。
次に、アプリについて。アイテムボックスは、今日何回か試したことで大体理解できた。収納するときは収納したいと思いながら対象に触れる。出したいときは脳内で出したいものを選択し出したいと思うとその場に現れる。また、質量と枠も想像通り1つにつき1つ枠を消費し、物を入れるたびにその重量が加算されていった。「時間」については検証する必要があるが、時間停止と再開を選べるあたりアイテムボックス内の時間を停止・再開できるんだと思う。まあ要検証だ。そして、問題のマルカリだ。「資産:15000G」になっていたのは、履歴から入会特典だとわかった。商品のラインナップは、地球にあるものならほとんど買えそうだった。ジュース1本「110G」とか、おにぎり1個「150G」とか、戦闘機「120億G」とか。…戦闘機?値段はまあ1G=1円と思っておけばいいっぽい。
試しにジュース1本買ってみる。値段は150Gだ。
脳内スマホに購入通知が来る。どうやら買った商品はアイテムボックスに追加されるらしい。まあ大きいもの買ったときに目の前に出されても困るので助かった。早速取り出して飲んでみる。
うーん。普通においしい。これは地球のものと思ってよさそう。
「っていうか、これ使えるんじゃね?」
今日一日過ごした感じ、この世界の文明は地球でいう中世に似ていて、当然電気、家電はないし食べ物もまずいとは言わないけど調味料や香辛料がある地球の料理とは全然違うし、何より甘いものがない。この村はいい場所だが、ずっと世話になるわけにはいかないしなによりせっかく異世界来たのに平穏な一生を過ごすのは味気ない
私は村を出る決意をした。




