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39話 愚痴と測定

 中間試験は二日間に分けて行われる。

 一日目は歴史、魔法陣術、天文学といった座学科目。二日目は魔力感知、属性魔法、召喚術、総合模擬戦といった実技科目だ。

 座学のテストは百点満点。半分ほどは選択式で入学してすぐでも分かるような優しい内容。もう半分は記述式で、家庭教師に専門的な知識を教えられた生徒が頭をひねって回答するようなものだった。


「座学が先なのはなんでよ……勉強できる日が一日減るじゃない」


 試験期間のランチタイム。天文学と歴史を終えた私は食堂のテーブルに突っ伏しながら呻いていた。

 後一日あれば暗記できる範囲が増えたのに……。


「仕方がありませんわ。暗記科目のために寝不足のまま実技に参加して大怪我を負う話などよくありますもの」

「テストの点数が下がろうと命には変えられないからな」

「うぐ……」


 ヤーラカーナとゼータの言葉に閉口する。まさしく先日シャムから試験にまつわる愚痴を聞いていたのもあって、そう言われてしまえば強く出られない。


「筆記の進捗はどうだい?クリス」

「この状態で聞く?」


 キリトの言葉にしぶしぶ顔を挙げれば、普段の笑顔はなりを潜めていた。


「そりゃね。元々君はジュエルクラスが目標だったろ。君は俺たちに授業で学んでない裏技をしてくれてるけど、俺たちはヤマをはるくらいしかできなかったし」

「試験の想定問題を考えてくれただけで十分よ」


 本当は彼らも記述式で出そうな問いと想定回答まで考えようとしてくれていたのだ。どうやら貴族としてそれなりにいい立場にいるようで、想定される問題は作ってくれた。今日の試験でも似た問題はあった。

 でも、この十年間森の中でまともに学んでいない私では理解しきれないものも多い。選択肢問題がどのあたりから出てくるかを考えてくれただけで助かった。


「それでもだ。……まあクリス嬢なら実技だけで一気に巻き返しを図れそうな気もするけどね」

「ええ。総合的な配点としては実技の方が倍ですものね。むしろ問題はあなたじゃありませんこと?ゼータ」


 会話に入ってきたヤーラカーナがゼータへと話題を振る。それまでスープを飲みながら話を見守っていたゼータは自身を指さした。


「僕?」

「ええ。クリスが考えてくれた『とっておき』の方法、ちゃんと成果はあがりそうなのかしら」

「とっておきってほどじゃないけど……」


 また過大評価されている気がする。

 エーテルバランスの偏りによって自己魔力を感知する機能が低下するらしい。ティターンの論文に記されていた内容をもとに私が考えた案は「元々のゼータの中の魔力濃度を測れないか」だった。

 とは言っても、そんな方法私一人で出来るわけがない。魔力とは自ら放出したものを測るのが一般的な考えだからだ。ゼータたちにそのアイデアを話して、測りたいけれども何かいい方法がないかと尋ねた時に意見を出してくれたのはヤーラカーナだった。



 ***



「先生方にご相談すればよろしいのではなくて?」

「先生に……何を相談するのよ」


 彼らだってティターンの論文に目を通している人たちは多い。今更私たちが「こんな論文があるんです」と口にする意味があるのだろうか。訝しむ私にヤーラカーナは「論文があるのは分かっているでしょうが」と首を横に振った。


「あなたがゼータのために、こうすればゼータの症状をよく出来ると考えたのだと言えば借りれる道具もあるでしょう。ユウェール魔法学園は魔法の専門研究機関でもあります。体内の魔力濃度を測れる道具もあるのでは?」

「……そうだな、物質内のエーテルバランスを調べる道具はあると思う」


 その言葉に同意を示したのはゼータ本人だった。

「魔力を秘めた鉱石が発掘された時に何の属性なのかを調べる方法はあるんだ。それが人の体に適したものかは……分からないけど」

「人の体に適してないなら使えないぞ。まさかゼータの身体を石にして調べるなんてわけにもいかないし」

「……なるほどね。そんな方法があるの」


 キリトの言葉に一つの案が浮かぶ。が、それを聞いたキリトとヤーラカーナがギョッとした顔でゼータを庇うように身体をずらした。


「おいおいおい!まさかゼータを石化してそこから調べようなんて言わないよな?」

「クリス!さすがにそれは人道を外れていらっしゃいますわよ!」

「え、別にちょっとくらいいいじゃない。再生も出来るし」

「「出来るの!?!?」」


 石にして砕いて、砕いた箇所は再生させた上でその石を固定して検査に回す。考えていた案を二人は正確に読み取っていたらしい。らしいが思った以上に抵抗感が激しい様子だ。私の戸惑いに応えるようにゼータが顔をのぞかせる。


「……クリス。石化は一般的に魔力の暴走で発生した結果起きるもので、異常の解除も、ましてや再生も出来ないんだ」

「そ………そうなの!?」


 それが常識なら確かに一大事だ。石化させるなんてとんでもない。


「えぇ……でもほら、大怪我しちゃった時に周囲ごと石にして一度怪我の周辺をくり抜いて再生させたりとか、治癒院ではしないの?」

「しませんわよ!?!?まさか体験談じゃございませんわよね!」


 ヤーラカーナの悲鳴には目をそらした。ティターンが怪我した時に当たり前のようにやっていたなぁ、私には石化は高難易度だからやめなさいって言われたけど。



 その後、髪の毛を一部束として切り取って、そこに石化をかけることで石と同じように調べられないかというキリトの提言でようやくひと心地がついた。

 次の課題はエーテル測定の機会を借りれるかだったけれど、それも事情を話せば快諾してくれたから驚きだ。キリトは当然、と言いたげに珍しく鼻を鳴らしていたけれど。


 そんな形でゼータの肉体に備えられたエーテル量を調べることはできた。その結果を見て私たちは目を見張ることになる。

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