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29話 先例と正体

「光と闇の属性?」「循環と集約?」「確かにそのような分類をするなら理論上は理解できるが……」「いや、だが実際に試してみねば分からないぞ」


 説明をするに従って、若い先生たちの顔に驚きが浮かんでいる。でもありえないとまでは言われなくて、内心私は胸を撫で下ろしていた。


 安心できないのは学長だ。

 光と闇の二属性の話、身体の内側と外側の循環の話を終えてもなお、その顔は変わらない。まばたきもしてないんじゃないかしら、もしかして。


 その間にもざわめき続けていた他の先生たちの声は、モーリス先生の一際低い声に次第に消えていく。


「……理論上は理解できる。実際そのようにやれば魔力の増幅につながるかもしれない。だが実際に循環をさせる場合は魔力の通り道を意識する必要があるだろう。クリスがやっていたそれが、最適解という保証はない」


「う……」


 それは、そうだ。私だってティターンに教わっていた内容が本当に正しいかは分からない。教わって実際によかったと思ったものを、学んだ通りに伝えているだけだ。


「故に、だ。私から提案をさせてもらいたい。生徒同士の未熟な教授行為は危険性が高いため終了すべきだ」


 危ないから止めるという流れはわかるし、そのこと自体に異論はなかった。


「そして、だ。君はその魔法理論を教えた相手についての話をもう少し教えなさい、クリス。場合によっては魔法論文として報告を怠った罰則もあるかもしれないが……」


「っ、それを聞いて、素直に教えると思うの……!?」


 ティターンが罰を受けるかもしれないという言葉に思わず背中の毛が逆立つ錯覚を覚える。一歩足を後ろにすれば、モーリスも一歩前に踏み出す。


「そこまで大層な罰ではない。だがその知識を世に広めなかった事情は聞き取るべきだ。ティターンとは、君の親代わりの人間なのだな?一体どのような人物だ?普段は何をしている」


 私に聞かれても困る。……だって私はティターンについて何も知らないのだから。


「普段は……私を拾ってから十年間はずっと一緒に暮らしてたわ。その間どこかにいくこともなかった。ずっと二人で森の奥の小屋で暮らしてたの」


「むう……にわかに信じがたいな。それだけの魔法の知識を持ちながら十年……十年?他の人間と関わらず世捨て人のような生活をしていたと?」


 私は頷いた。


「ええ。でも仕事が入ったから家を数年空けるって。だから私を家に残さないようにと学園に入れたのよ」


「……その仕事については?」


 首を横に振る。知っていたなら学園を抜け出して会いにいくくらいのことをしていたかもしれない。

 そういえばモーリス先生は厳しい顔で腕組みをした。


「ならば尚更、このまま生徒同士の教授行為を認めるわけにはいかない。クリスに悪意がなくともティターンという男がその方法を教えた意図が理解できない。最悪の可能性を考えるなら、その男が悪意ある方法で伝授をしている可能性もある」


 ……そこではじめて、学長の瞳のふちがぴくりと揺れる。だがそれに気がつけるものは今この場にいなかった。

 それに気がつくよりも先に、ゼータがクリスの前に踏み出したからだ。


「……ゼータ?」


「モーリス教諭!そのような心ない物言いをクリスの前でするのはやめてください。大体教諭の言葉はどれも推論の域を出ていません。害があるかも分からないなら、実際にやっているところを見れば、あるいは自分たちで試してみれば良いでしょう」



「ゼータ。試験もしないで人の身体で試すなどとそのような……!」

「試験とはどのような?少なくともクリスは十年以上その形で魔法を身につけている。それに僕もそうだ」


 そういうとゼータは自身の顔へと手を伸ばす。

 仮面の中央を指でつまみ、ゼータの顔があらわになる。太陽のように輝く金色の髪と翠の瞳が印象的だった。


「……ッ!あれは……、」

「あーらら、ゼータのやつ……」


 後ろから二人の戸惑いや呆れの声が聞こえてくる。先生方も驚いたように、あるいは戸惑ったように幾人かが顔を見合わせた。


()()()()()()()()()()()()()()()()()、僕は先天的に魔力不感能症として生まれてきました。この学園をでた家庭教師たちでも治せなかった症状から、少しでも魔力を使えるようにしてくれたのが彼女なんです。……その方法を、検証なしに取りやめにするなど……!」


「まあまあ、落ち着くんじゃ。二人とも」

「ツートピア教諭……」


 熱が入りそうだった声に割り入ったのは、この中で最も老齢に見える先生だった。先ほどまでの説明でも彼だけは口を挟まず、楽しげな笑みを消していなかった。隣に立っているシャムがはぁ、とため息を吐く。

 ツートピアと呼ばれた彼は、シワだらけの顔をいたずらめかして微笑ませながら「いつ口を挟むべきかと悩んでおったんじゃが……」と髭を撫でる。



「そもそもじゃよ、その理論はすでに一度この世に存在をしていたものなんじゃ。……学長ならご存知でしょう?かの偉大なる始祖の一人、ティターン=オニキスが組み上げたものとして」

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