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24話 苦手科目の対処法

「ヤ……ヤーラカーナ?これは一体……」


 確かに多少目を離していたのは事実だけれど、ここまで水浸しになるとは、いったい何があったのか。


 恐々と声をかけたのに応えたのはキリトだった。


「ヤーラカーナ嬢ってば魔力じゃなくて水魔法を出してたからさ、その結果。いや、詠唱なしで水を出せるって時点ですごい話なんだけどね?」


「そ、れは確かにすごいけど……」


「すごくなどありませんわ!!」

「ひっ、」

 崩れ落ちていた状態から、首から上だけがぐるんとこちらを向く。正直すごい怖い。勢いがこわい。


「そもそも、自分の外側にある魔力とか感じられるわけがないでしょう!だから見えるようにしたらこうなっただけで!」

「そりゃあ水は見えるけれど……、っておい!」


 戸惑うゼータの声にがんがんと床をヤーラカーナが叩く。貸し教室でこんな暴れて大丈夫かしら……。


「目で見えるものでもないというのに!他人の体温が目で見て分かりますか?分かりませんでしょう!それと同じです!」


「いやいや、魔力は感知できるでしょ。魔力感知の授業あるじゃない?」


「私の魔力感知科目の採点用紙を叩きつけて差し上げましょうか?!キリト!」


 その言葉を聞いてはっと思い出す光景があった。

 ヤーラカーナに声をかけられた、あの渡り廊下でのこと。


 ── そう。魔族と人の区別もつかないなんて大変ね。魔力感応度の授業は地曜日だったかしら?


 何の気もない言葉だったし、後からキリトにあれは嫌味だったと教わった。……教わったけど、もしかしてものすごーく手痛いところをついてしまっていたのではないかしら。


「……………ご、ごめんなさい、ヤーラカーナ」

「謝罪は不要ですが!?!?」


 頭を下げればそれ以上の剣幕で返ってくる。……うう。

 仰け反った私を庇うように、キリトが一歩前に出て両手を広げた。



「まあまあ、落ち着いてよヤーラカーナ嬢。きっと今の嬢に最適な方法をクリス嬢が教えてくれるはずだからさ!」


 いや、慰めるふりをして私に押し付けただけだなこれ。



 着実にキリトへの『何だこいつ』ゲージを貯めながらも私は思案する。


「……どうにかできる当てがあるんですの?クリス」

 聞こえてきた声を見れば、ヤーラカーナの瞳と目が合う。

 仮面に覆われているが、私はもうその瞳が紫色をしているとわかっている。


「可能性はあるんじゃないかな。なにせクリスはうちのゼータの魔力を改善させた魔法のプロなんだから」


 言葉に詰まった私の代弁をするようにキリトが根拠のない話を続けるものだから、頭が痛くなってきた。後で責任持ってジュースの一杯でも奢ってもらわないと気が済まないわね、これは。


 だがキリトの言葉を脇においても、ヤーラカーナの縋る目を無視はできなかった。


「うーん……魔力を感じられない原因が感知機能にあるのか、他にあるのか分からないから何とも言えないけど……いくつか質問をしてもいいかしら?」

「……はい……」


 顔を上げたヤーラカーナの目と鼻の周りは真っ赤になっていた。……うん、出来るかは分からないけど最善は尽くそう。



Q.魔力を練る時はどんなイメージでやってる?

「手のひらから水や癒しの光が出るイメージですわね。一般的ではなくて?」


Q.想像と違った結果の魔法が放たれたりしたことはある?

「いいえ。発動のイメージと変わった結果になることはございません」


Q.人が魔法を放とうとしている感覚はわかる?

「……動作や仕草、唱えている呪文で分かりますわ。魔力の変化は……」



Q.(いきなり無詠唱で水鉄砲を放つ)

「っ、きゃ!何するんですの!?私が避けられたから良かったものの制服が濡れるところでしたわよ!」



Q.……魔力感知の授業で一番魔力を集めてるのは目?

「?ええ。授業では瞳に魔力を満たしてみると仰ってたでしょう」


Q. 天気が変わったりする前、雨が降ったり止んだりする予感はする?どんな感覚?

「……??ええ、そうですわね。それくらいでしたら分かります。匂いがこう、湿ったり乾いたりするでしょう?」



「……うん、質問はこれで終わりで平気よ。で、ヤーラカーナの魔法感知のタイプと対処方法が分かったわ」


「「えっ!?」」

 その言葉に男性陣二人の言葉が重なった。

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