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19話 作戦会議と始祖たち

 座学……歴史、魔法陣術、天文学

 実技……魔力感知、属性魔法、召喚術



 いくつかの項目が並べられた黒板のうち、歴史と属性魔法に丸がつけられている。


 キリトがチョークで黒板を叩きながらもっともらしくうなった。


「ふむふむ。聞いた感じクリス嬢は魔法陣と天文学についてはある程度知識はあるようだな」


「そうなるのかしら?学園のやり方とは違うかもしれないけど」


「それでも聞いている限り、基本的な魔法陣の描き方と星の読み方は分かっているみたいだしね。次の中間試験くらいなら対して問題はないだろうさ」



 ティターンから教えてもらった方法はそこまでおかしなことではなかったようだ。

 ……光と闇属性を知らないなら月の満ち欠けとの連動までは知られてないかもしれないけど。次の試験で問題ないくらいならいいかしら。


「歴史は逆にさっぱりなのよね。……始祖魔導師ってずっと長生きし続けてた魔法使いのことじゃなかったの?」


 ユウェール王国を興したとされる始祖魔導師はそれぞれの属性を司っていて、国の中枢を担っている。

 私が知っているのなんてそれくらいだし、それ以上のことは何も知らない。


 ……知るのが怖かったとも言える。

 だって彼らがどんな存在かを知ればしるほど、そのうちの一人を殺したという母の罪が深くなる気がして。


「長生きなのは確かだ。一番長く着任している始祖魔導師は八百年を越えている」

「ええと……ごめんなさい。ユウェール王国って建国から何年だったっけ」

「後二十年で千年だな。だから建国当時からずっと生き続けているのは魔導師長である学長だけだ」


「学長!?あの人そんなに長生きだったの!!?」


 学園に来てすぐ、治癒室で出会った美しい男を思い出す。



「本当に何も知らないんだねえ。入学式の最初の挨拶で紹介とかあったじゃない」


「知らないわよそんなの。私、ここには気がついたら叩き込まれて治癒室にいたんだから」


「うわあ……」


 哀れんだ表情をキリトが浮かべるのをよそに質問する。


「始祖魔導師が代替わりするのはどうして、どうやってよ。前任が亡くなったから?」


 ──だとするならば、十年。

 母が水の始祖魔導師ハイドラ=アクアマリンを殺して十年以上経っているのに代替わりがまだ行われていないのは何故か。


「基本は生前の引き継ぎだ。分かりやすいのが……地の始祖魔導師。地は国王も兼任していて、代々その子孫の中で特に地魔法に優れている者が継ぐことになる」


「逆に子孫の中で相応しい者がいなければずっとその座についてるのもシトロンだからね。一番長くて百四十年だっけ?」


 ゼータが答え、キリトが補足する。


「前任が死んだら、その後は?……まさにいるじゃない。そんな例が」


「水の始祖魔導師か。……正直なところ分からない、が正しいところだ」


「だねえ。長い歴史を紐解いても継承前に亡くなった例は多くない。数例ある例だと百年以内に後継を見つけてるみたいだけど……そもそもなんで後継をわざわざ探すのかって話だからね」


 首を傾げたキリトがちらりと窓へ目を向ける。それからぱん、と手を鳴らした。


「話してたらもういい時間だね。ひとまず今日はお互い寮に戻ろうじゃないか。クリス嬢、そしたら明日から交互に勉強と特訓をするってことで、異論はないかな?」


「……まあ、いいわ。持ちつ持たれつってことね」


 キリトの思惑通りに動かされている気がするが……目的もできたし乗るとしよう。


「すまないな、クリス」


「あなたが謝ることじゃないでしょ、ゼータ。それよりも明日からは遠慮なくいかせてもらうわよ」


「……ああ!」


 ゼータも思うところはわからないが、自分が魔法の鍛錬をすることになったこと自体に不満はないようだし。

 ……友だちの力になれるなら、悪くはないわよね。



 ***



 陽もすっかり落ちた頃合いに寮へと戻る。

 夕食をすませたあとは消灯まで自由時間だ。


(……はあ。うっとおしいわね)


 周囲からの視線とヒソヒソ声がいつもにも増して多い。

 昼間、あれだけ目立つ形でやり取りをしていたのだから、寮どころか同学年中に広がっててもおかしくないけど。


 これはさっさと部屋に戻った方が良さそうだ。

 夕食を普段よりも早いペースで食べ終えたところで、寮の食堂に寮母が入ってくる。


「クリスはいるかしら。……ああ、そこにいたのね?」


 名を呼ばれると共に一斉に視線が私へと向く。

 眼鏡をかけたおっとりとした調子の寮母、サザンカはその空気に物おじすることもなくこちらへと歩み寄ってきた。


「何でしょうか?サザンカさん」


「あなたに会いたいって子が来ているの。アクアクラスのヤーラカーナって、覚えがあるかしら?」

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