18話 中間試験とジュエルクラス
中間試験。
学園というものは定期的に試験があると入学時のオリエンテーションで学んでいた。最も近い中間試験が来月末にあるとも。
歴史や魔法陣術をはじめとする座学と、魔力感知、属性魔法放出、召喚術などの実技の双方が行われる。
「そこで出た成績によって来年のクラス分けや特待生の選出がされるわけだね」
「…………はあ」
放課後の空き教室の一室。
キリトが黒板に図解や文字を書き連ねるのを見ながら私は呆れ返っていた。
「聞きたいのは中間試験は何かじゃなくて、何で私がそこでの対決に巻き込まれなきゃいけないのかなんだけど?」
「す、すまない。クリス……」
「ゼータが謝ることじゃないわ。言い出したのはそこの男よ」
びし、と勢いよく指を突きつけてやるが、当然魔法も何も込めてないそんな仕草が堪える男でもない。
「ごめんごめん。だって彼女があんなゼータのことを悪くいうから黙ってられなくて。クリス嬢だって同じ気持ちだったんじゃない?」
「んぐ……」
実際あそこで余計な口出しをしてしまった自覚もあるので、それには閉口せざるを得ない。行動はともかく、内容はもうちょっと穏便にすませる方法もあっただろうし。
「代わりにクリス嬢が試験で自信がないところは俺たちも教えるからさ。座学の範囲なら一通り網羅してるぜ?」
「……といっても、ねえ。成績が優秀だから何がいいってわけでもないし」
「ええ!?クリス嬢ならジュエルクラスも狙えるだろうに?」
「ジュエルクラス?」
何だろうかそれは。
目を瞬かせる私を見てか、隣で話を見守っていたゼータが学園手帳を鞄から取り出しながら説明をする。
「オリエンテショーンで話していたな。年間を四期に分けて、それぞれの期ごとに各クラスごとに一人が選出される特待生、ジュエルクラスだ」
「そうそう。それに選ばれると所属している課外活動の予算がアップしたり、来期で月に一度リクエストメニューが出来るようになったり、五学年以上だと就職活動にプラスがついたりするな」
「しょぼくない?」
特待生だけあからさますぎる特別扱いは出来ないとはいえ、しょぼい。
それを狙って勉強を頑張りたいかと言われたら──人によってはやる気を出す人もいるのかもしれないが、少なくとも私は否だった。
「……いや、クリスにはむしろこっちの方が魅力的だろう」
取り出した学園手帳をめくっていたゼータは、そのうちのとあるページを私に見せてきた。
「──ジュエルクラスに選ばれた生徒は、その翌月のどこかの休日に実家への帰省が認められる」
「…………っ!!」
実家への、帰省。
「ああ、そういえばそうだったね。クリス嬢は家が恋しいのかい?そういえば入学の時にもずいぶんと嫌そうな反応だったけど」
恋しいかと言われれば恋しい。
学園でもゼータみたいに気安く話せる人も出てきたとはいえ、ティターンと過ごした日々は宝物のように輝いていたから。
でも。
「今帰っても、っ、家には誰もいないから……」
ティターンと、その名前を出そうとしたら喉がつまる。
仮面なんて外して事情を話せれば簡単だが、校舎では特定の場所、緊急時を除いて仮面を外すことはできない。
私の言葉にゼータは顔を曇らせるが、キリトは冷静に「それだとどっちだか分からないなあ」と肩をすくめた。
「仮面があると事情も何も聞けないってのは厄介だね。クリス嬢、もし首を振って答えられそうなら教えてくれ。いないっていうのは亡くなっている?」
「キリト!!!」
ゼータが声を荒げるが私は首を横に振る。
ティターンは死んでない。
「病気とか大怪我とか、家族自身の意思とは別の理由で家を空けてる?」
「…………いいえ」
ただ仕事で家を空けているだけだ。
そこまで聞いたところでキリトは「なら大丈夫さ」と笑った。
「ジュエルクラスの帰省については親族にも伝えられる。学園での誉れだから余程のことがなければ家族もその間は帰省の都合がつくように調整されるし、家で泊まるまではできずとも最大限の調整がつくはずさ」
「……本当?」
それなら、いいかもしれない。
ティターンにはまだ何の文句も言えていなかった。どうして学園に入れたのか、仕事って何か、一年経って仕事が終わったら迎えにきてくれるのか。
「それなら私……ジュエルクラスを目指したい」
「……クリス。ああ、もし僕たちにできることがあれば言ってくれ」
「そうだね。苦手分野があるなら座学は俺やゼータも教えられるし、そこはお互い持ちつ持たれつといこうじゃないか」
と、いうことでとキリトが黒板の文字を消していく。
残ったのは試験で行なう内容の項目だった。
「早速、作戦会議と行こう」




